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ミーシャと父

「学校でのいじめはまだ続いているのか?」

「うん。でも、大丈夫。明日はお母さんも帰ってくるし、なにより弟と会える。弟とならきっと友達になれる。」

「そうか…その、やはり、私がそのいじめっこ達に注意してはいけないのか?」

「駄目。そしたらきっとさらにいじめられる。それに、あの子たちももしかしたらいつかは友達になってくれるかもしれないから。」

「そんなやつらでもお前は友達になりたいのか?」

「わからない。でも、一人は嫌だよ…」

「…」

「でも、弟と友達になれればそれが一番だよ。早く会いたい。明日が待てないよ。」

「そうだな。」

最後の「父親と二人きりの晩餐」を終え、ミーシャはベッドに入った。人形を抱きしめ、目を閉じ、母親と弟のことを考える。

「早く明日が来て欲しい…」

そう思いながらミーシャは眠りについた。


朝、ミーシャは清々しい気分で目を覚ました。いつも見ていた悪夢を今日は見なかった。今日は、母親が生まれたばかりの弟を連れて馬車で帰ってくる日だった。朝には着くとのことだったので、父親と協力して作った朝食を用意し、帰ってくるのを待った。だが、しばらくしても母親たちは帰ってこなかった。昼になり、さすがにおかしいと思った父親は、探しに行ってくると言い家を出て行った。

かなり時間がたった。もう日が沈み始めているが朝食はそのままで、すでに冷めきっている。

ミーシャは「どうしたんだろう。何かあったのかな…」と呟き、自分しかいない部屋で響く、その声に不安になった。

夜になり、父親と母親たちはまだ帰ってこなかったので、ミーシャは一人でもう寝てしまうことにした。きっと明日になれば、皆帰ってきて元気に食卓を囲んでいる。その様子を妄想して自分の中の不安をごまかそうとした。今日も人形を抱きしめ、目を閉じた。

朝になった…わけではないようだった。ミーシャは外のザーザーという大きな音で目覚め、あたりを見回した。窓を見ると、まだ暗く、外では雨が降っていた。まだ…帰ってこない。ミーシャは心配するように扉を見つめた。父親が母親たちを連れて「ただいま」と扉を開けてきてほしかった。

ため息をつき、その扉から視線を外そうとした瞬間、その扉が開いた。ミーシャは驚き、ベッドから急いで出た。扉を開けたのは…父親のようだった。今まで見たことないほどに顔を歪ませて、雨と混ざった涙を流している。そして、「ミーシャ…」とほとんど聞こえないような声で呼びかけた。ミーシャは何事かと、驚きながら父親の元へ駆け寄った。父親は何かを両手で抱えていた。その何かは布に包まれているようで、包んでいる布は若干赤く染まっている箇所がある。嫌な予感がした。ミーシャは父親に

「お父さん…?何があったの?お母さんは?ねえ…!」

と言ったが、父親は、動かず黙ったまま涙を流し続けていた。

「おい!答えろ!これは何だ!」

ミーシャは半ギレで聞いた。

父親はその様子に驚き、

「えっ…いや、あの、ミーシャ?え?」

と言った。

ミーシャは質問に答えない父親に腹を立て、腹に蹴りをいれることにした。

「オルァァ!」

グシャァッ!

父親は声にならない叫び声をあげ、口から血を吐き出した。

「ミ、ミーシャ…!ハァッ…!何で蹴った…!何で蹴ったし…!」

「うるせえ!これは何か聞いてんだろうがっ!さっさと答えろ!もう一発くらいてえか!」

「ご、ごめん!すまなかった…!答える!答えるから!蹴らないで…!ハァッ…!蹴りはやめて!」

「じゃあ何だ!言え!」

「探しに行くって出てったあと、病院までの道のりを辿ってみたんだ!それで…ッ!ハァッ…!ちょっと待って、まだ痛い…!」

「さっさと言え!蹴るぞ!」

「ごめんって…!で、母さんたちが道の途中で盗人に襲われたらしくて…!弟と一緒に殺されてたの!」

「え…じゃあその布の中ってもしかして…?」

「そうだよ。母さんと弟だよ。」

「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「え、急にそんな…!えぇっ…?」

「何でお父さんそんな平然としてるの!?お母さんが死んじゃったんだよ!?」

「いや、悲しかったけどお前が急に腹蹴り食らわしてくるから悲しみどっかいっちゃったんだよ!」

「お父さん最低!」

ミーシャは父親にもう一度腹蹴りを食らわせた後、家を出て行ってしまった。

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