第98話 ーーヒロインーー
チュンチュンとスズメが鳴いている。空は快晴、太陽は薄明るく気温は肌寒いくらいだ。僕はそんな中ベッドでぬくぬくと寝ている。
「起きて…」
「んー。むにゃむにゃ…」
「起きて、イリウス…」
「むにゃむにゃ。んー…」
「…起きなさーい!」
「んが!?」
謎の声に強制的に現実に引き戻された。僕はその声を探して辺りを見回すが何も見えない。
「はぁ…やっと起きたのね」
「誰ですか?どこにいるんですか?」
「ここよここ」
「ここって言われても分かんないです…」
「仕方ないわね。机の上に移動するわ」
僕は寝起きだからか何の警戒も無しに机に向かう。布団から出ると寒い。
「ほら、ここよ」
「………?」
机の上を見ると浮いている光の玉が1つ。光と言ってもすごい弱い光で暗い所もろくに照らせなさそう。
「…?何ですかこの光の玉?」
「それよ!それが私!そういえば誰かって聞いてたわね。私の名前は…そうね、『ナビ』とでも呼んでちょうだい」
「ナビさん?」
「ナビで良いわ」
「分かったナビ!僕に何か用?」
「単刀直入に言うわ。あなたに、目取りの殺人鬼を捕まえてもらいたい」
「…メトリ?」
僕は光の玉が出てきたこと、目取りとやらが何なのか、何で僕なのかと色々考えすぎて困惑する。寝起きなのもあってIQも著しく下がっている。
「あなたもまた、目取りの殺人鬼の被害者なんでしょう?もちろん無条件なんて言わないわ。私もそれなりの情報を…」
「ま、待って、待ってよ!何の話してるのか分かんないしメトリって何?僕そんな人知らない!って言うか他の人でよくない?何で僕なのさ…」
「…全部話した方が良さそうね。まず私があなたについて知ってる情報から話すわ。あなたのご両親、目取りの殺人鬼に殺されたんですってね」
目が覚める。まだ半分眠っている状態から完全に目が覚めた。その話をされるとは思ってなかった。
「何でそれを知ってるの?」
「それは後々説明するわ。目取りについては分かったみたいね。次に他の人で良いって話だけど…私が見える人は限られてる。何より言う事を聞いてくれるとは思えないの」
「ふーん。つまり僕は騙しやすそうなカモってこと?」
「そんな事言ってないでしょう!」
それを言ったっきり何かを考えだした。言葉を選んでるようだ。
「私ね、あいつだけは絶対に許せないの。でもこんな私じゃあいつをどうにかすることは出来ない。だから、あいつを恨んでる強い人が必要なの。分かり合える強い人が。それがあなただった。私が初めてあなたを見たのはあなたが目取りを探していて、困っているおじいさんを助けた時よ(第82話)」
「あんな時に…そこからずっと僕に話しかけるタイミングを見計らっていたの?」
「いいえ、話しかけるのはいつでも良かった。少しあなたについて知りたかったの。本当に目取りを捕まえる程の力があるのか、追う気はあるのか。
それでどうする?私と組めば知ってる情報は全て話すし普段から力を貸してあげる。浮けるし見られないから索敵とかは得意よ。その代わりあなたには目取りを捕まえてもらう。どう?」
(特に悪い条件じゃない…犯人の情報があればどっちにしろ捕まえる気だったし+の方が大きい。悪い人じゃなさそうだし)
「分かった。僕もその犯人は捕まえたいし、組むよ」
「ありがとう!早速だけど目取りについての情報を…」
「イリウス?」
ガチャっと扉が開くとそこにはケルトさんがこっちを覗いていた。そっか、僕が1人で喋ってるのが不自然だったのか。
「な、何ですか?ケルトさん」
「いや、声が聞こえたから誰かいんのかと」
「…あ、あ〜すいません、寝ぼけちゃってたみたいで。ピルス君がここに居たはずなんだけどなーはは」
「ったく、早く顔洗って飯食いこいよ」
何とか誤魔化せた…そういえば言っちゃダメなのかな?
「ダメよダメ。あの人、絶対に『そんなことするなー』って言ってくるわよ。しばらく観察してたんだから分かるの!」
「そっか…そういえばずっと気になってたんだけど、何で光の玉なの?種族って何になるの?幽霊?」
「私は………妖精よ」
「妖精?」
「そう、妖精。だから心が純粋な人しか見れないの。一応人の姿にもなれるけど変身時間があるし疲れるからやりたくないわ」
妖精…妖精って羽とか生えてて特徴的なんじゃ…でもたくさんの世界があるから光の玉が妖精じゃないなんて言えない。もしかしたらそんな世界があるのかもしれない。
「なるほどね〜。とにかく僕ご飯食べてくる」
僕は自室から出て顔を洗う。何故かずっと着いてくるから不思議に思った。
「いっただっきまーす!」
「あら、意外と美味しそうなご飯を食べるのね。口があったら頂いてたのに」
「………」
何で普通に喋ってるんだ?バレないのかな…僕が反応するわけにはいかないから黙ってる。
「イリウス」
「は、はい?」
トラさんが光の玉を見つめながら僕を呼ぶ。多分バレてるやつだよな。
「消しとくか?」
「え、えっと…大丈夫です」
「そうか」
消しとく…多分祓うかって意味だろうな。やっぱり幽霊なんじゃ?バク達が不思議がった顔をしていたがトラさんが濁してくれた。分からない事が多いからそれも聞かないとな。そう思いながら僕は朝食を平らげ自室に戻る。
「もう!バレちゃダメなんだから話かけないでよ!」
「何よ、良いじゃない。結構暇なのよ?それにしてもあの『トラ』だっけ?私のこと見えてるのね」
「やっぱり幽霊なんじゃない?トラさんが見えるって事はそれ以外無いと思うんだけど…」
「妖精よ!あのトラが純粋だっただけでしょ。それより目取りについての情報よ」
ひとまず犯人についての情報収集だ。僕は椅子に座って話を聞く姿勢を整える。
「目取りは、あらゆる世界を横断してるの。だから探すのは結構大変よ。何より、あいつは捕まらないよう1つの世界に短い期間しかいないの。大体2日〜3日よ」
「つまり…その犯人は僕が追いかけた時、人を殺して2回目の時にすぐ別世界に逃げたってことか…」
「そう。それにあいつには協力者がいる。何人かは特定出来てないわ。でも少しなら知ってる」
「協力者…」
僕の予想が正しければゾンビを作り出すやつがいるはず。操るわけでもなくコントロールも出来ないゾンビを生み出すだけの能力者。
「絵画の住人『ピカソ』、永遠の0『ニヒル』、空気使い『エアス』。ここまでしか知らないわ」
「空気使い…もしかして眠らせるガスみたいなの出す人とか?」
「そう!そいつよ!どうして知ってるの?」
「その人、1度戦った。逃げられちゃったけど。電車の中の人全員眠らせて事故でみんな殺そうとした人(第70話)」
「そう…やっぱり全員普通じゃないわね。そいつらをどうにかしないときっと辿り着かないわ」
僕は目が泳いだ。あのレベルの人が何人も居る。きっとゾンビを生み出すやつも相当な使い手。エアスに関しては傷一つ付けられなかった。
「大丈夫?顔色が悪いわよ」
「…やっぱりケルトさんに相談した方が良いと思う…僕1人じゃ勝てない…」
「…ダメよ。それに1人じゃない。私が着いてるわ」
「それはそうだけど…」
「もう一度だけ考えてちょうだい。もし、本気であの人を納得させれると思うならそうしても良いわ。それで出来なかったら…」
「………」
目取りの殺人鬼探し…明らかに危ない案件だ。こんなのどう説得してもケルトさんがOKする確率は0に等しい。どうすれば良いんだろう…
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「人数多すぎじゃない!?」
ナビの力を見せてもらうために適当に散歩していたイリウス。とりあえず能力者に絡まれるだろうなと予想していたがまさかの量。イリウスとナビだけで切り抜けることは出来るのか?
私が着いてれば余裕よ!何てったって妖精なんですから!
次回「ーー目ーー」
ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m




