第94話 ーー竜の子 前編ーー
「牛肉♪豚肉♪とーりにく♪牛乳♪紅茶♪にジュース♪」
僕は買い物内容を歌いながらルンルン気分で歩く。ケルトさんが風邪を引いてしまって治ったみたいだが心配だからということで今日は僕が買い物だ。他は全部トラさんに任せっきりだが…
「キュー!」
「ふんふふんふふーん♪ん?」
路地裏の前を通った時、何かの声が聞こえた。ケルトさんの血のせいか聴覚まで鋭くなってるようだ。僕は何の声なのかと路地裏に近づく。
「うん?何の声だ?ワンチャン?ニャンちゃん?」
「キュー!」
僕は音の発信源を捉えてこっそり近付く。蓋のしてある段ボールだ。近付き手を蓋にやって、
「ここか!」
蓋を開けた。中に居たのは小さいトカゲ?
「…ワンチャンじゃない?トカゲ?尻尾ながーい。ツノ?羽?何この生物!」
「シャー!」
謎の生物は僕を見るなり威嚇している。赤い鱗が綺麗だ。この大きさ的に子供だろう。
「ほらほら大丈夫だよ〜。こっちおいで〜」
僕はゆっくり手を近付けた。その子は僕の手を避けるように動いていて、それでもしつこく追いかけていたら
「つめた!何この子…息が冷たい?」
冷凍庫のように冷たい息を吐いてきた。手を引っ込めたがそのまま食らっていたら凍傷になっていたかも。
「うーん…でもなんか困ってそうだしな〜。もしかして予期しない転移?こんな子が?うーん」
ダンボールの前で悩んでいるが結果的に
「ま、いっか!僕の家ペット禁止だし。この子も良い人に拾ってもらえるでしょ!」
僕はじゃあね〜と手を振ってそっと蓋を閉じた。移動したくなったら自分で移動するよね。そんなことを思いながら元の道に戻る。しかしその途中で悪そうな3人組に話しかけられる。
「よぉ坊や」
「あ、こんにちは!」
「元気良いね〜。そういう子は好きだぜ〜」
「タバコ臭い人は嫌いです…」
ケルトさんの血のせいで嗅覚まで鋭くなったのかタバコとかお酒の臭いがきつい。
「まぁそれは良いんだけどさ。この変に…羽の生えたトカゲを見なかったかい?こんくらい小さいやつなんだけどね」
「あーそのトカゲなら…」
(なんか悪そうな人…あの子を捨てた人かな?うーん…でも見つかるんだったらそれも運命的な出会いかもだし。無駄に手をかけちゃダメかな)
「知りませんよ。そんなトカゲ」
「そうかい。変なことを聞いたね」
僕はそう言って立ち去ろうとした。買い物も終わって帰る所だったし。あの人達能力者だったから関わりたくなかったし。でも声が聞こえた。助けてって。
「キュー!キュー!」
「お、そこに居んのか?やっと見つけたぜ。大事な売り物が…あ?どういうつもりだ坊や」
僕は咄嗟にダンボールを庇った。中が見られないように。手を出さないように。
「…いや、このダンボール工作に使えそうだなって」
「悪いけどそれは俺らの方が先に見つけたんだ。ほら、返して」
「お断りしますって言ったら?」
「はぁー…子供に乱暴すんのは慣れてんぞ?お前も能力者だろ?右手のひらなんて分かりやすい。死にたくなければ…」
「兄貴!あいつ走って逃げましたよ!」
「チッ、最後まで言わせろよ。追いかけるぞ!」
長々と喋ってる所失礼してダンボールを持って逃げた。もちろん追ってくるし僕の足が遅いせいで今にも追いつかれそうだ。こんな大勢の前でビームなんて使えない。でもそれは相手も同じ。
「こんのガキ!」
「やめろ!こんな人だかりで撃ったらこっちがただじゃ置かれなくなる」
本当は人が多い所の方が良いが足の速さは相手の方が上。僕は路地裏に入った。
「自分から行くなんてな。撃っていいぞ!」
「あい!ってうわぁ!何だこいつ、銃弾が帰ってきやがった」
歪ませる事で相手の銃弾の軌道を変えた。銃弾はまっすぐ相手の拳銃に向かって飛んでいき、拳銃は地面に転がった。そのまま出口に出る所で
「簡易『囲』!」
出口をビームで塞いだ。正直ちょっとの時間稼ぎにしかならないだろう。神器があれば突破されてしまう。案の定追いついてきた。真っ直ぐ家には帰れない。
「箱が邪魔…お願い、僕の肩に乗って。大丈夫、僕は君を守れるから」
「シャー…」
謎の生物は未だに僕を警戒している。でもこの気持ちが伝わったのかゆっくりと僕の肩に乗る。
「ありがと!」
ダンボールを後ろに投げてビームを撃つ。相手の顔にかすったが止まる気配はない。そのまま僕は行き止まりに…。
「はぁはぁ…やっと追い詰めた。もうそいつだけじゃあ足りねーな。レベルを渡すか死ぬか選んで良いぞ」
「ったくこんな坂道走らせやがって。最後の景色、よく見えるだろうよ」
「えぇ本当。よく見えますよ」
僕はテレポートを使って家までの本当の道に戻る。遠くまで見えたおかげで家のすぐ近くまでテレポート出来た。この子もびっくりしてるみたいだ。
「は?あいつ消えやがった」
「いいや、恐らくテレポートの類だ。銃弾を返してビームを打ってテレポート…ボスにとっても厄介な存在になりそうだな。でも安心しろ。ちゃーんと、あいつの居場所は分かるようになってる」
「さっすが兄貴!」
僕は何度も後ろを確認するが追ってきてる様子は無かった。そのまま無事に家に着いた。
「ふぅふぅ…はぁー……良かったー!何であんなに追いかけられたんだろ…君何かしたの?」
「キュー?」
この子も僕を信用してくれてるみたいだ。さっきと違って尻尾が逆立ってない。
「あ、とりあえず僕の後ろに隠れててね?ケルトさんに見つかると捨てられちゃうからね」
僕は注意喚起をして家に入る。
「ただいまでーす!」
「おーおかえり。ちゃんと買ってこれたか?」
「はい!完璧です!」
「君が噂のイリウス君かな?」
奥から変なおじいさんが出てきた。おじいさんの割にゴツいしツノが生えてる。獣人みたいだけど毛がない。
「えっと…誰ですか?」
「こいつはリュウガって言ってな。お前にはまだ言ってなかったが竜人って言う種族なんだ。俺と肩並べるくらい強いやつなんだぞ」
「リュウガさん!こんにちはです!」
「こんにちは…ん?君、どこかで見たような…」
「ん?僕知らないですよ?」
「あ!君はあの…」
「キュー!キュー!」
何か話してる間にこの子が鳴き出してしまった。ずっと静かにしてくれてたのに。僕は慌てて誤魔化そうとするが誤魔化しきれない。
「あーえっとこれはその…ち、違うんです!困った様子だったからつい…」
「我が子を取ったのはお前か?」
急に来る圧にひれ伏す。何が起きたか分からない。
「おいリュウガ!勝手にイリウスのせいに…」
「だが、こいつが持っていたのは事実だろう?この罪、死罪とする」
圧がどんどん強くなっている。このままじゃ床に潰れちゃう。そんな時、
「キャウ!」
謎の生物が僕を庇おうとする。僕の前に二足歩行で立って庇ってるような姿勢を取る。これにリュウガさんも違和感を感じたのかその圧力を止める。
「何が言いたいんだ。どうしたんだ?お前は連れ去られていたんだろう?」
「ドラ!ドォラ、ラドラ…」
2人は何かを話してる様子だ。一体この子は何者なんだ?
ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m




