第93話 ーー秋風邪ーー
「う〜ん?」
朝目が覚めると異様な気だるさに気付く。外から入ってくる風にすら嫌気がさす。そうか、昨日は夜空を眺めてそのまま寝てたんだ。そう思って立ち上がる。クラクラしてるのか机やベッドの角によく当たる。とりあえず顔を洗いに…と洗面台に向かおうとするが、色んなところに当たってる僕を不審がったのかケルトさんが様子を見に来た。
「大丈夫かイリウス。すっげークラクラしてるけど…」
「はいほぶでふ(大丈夫です)〜」
僕はベッドに寝かされて体温を測られた。頭も痛いし大変だ。
「あちゃー、熱出てんな。粥作って来るから、出来れば起きてろよ。水と氷と薬と…他に必要なもんあるか?」
「ないれふ(無いです)…」
僕がそう言うと早足でリビングに戻っていく。バク達にも説明してるのかな。しばらくしたらトラさんが様子を見に来た。起きてるの暇だったし丁度いい。
「まだ少し時間がかかりそうだ。寝たいなら寝て良いが…」
「ご飯…おなかすいた…」
「そうか、なら少しだけここに居てやろう」
「………」
「………」
「あの…」
「ん?どうした?何か悪化したか!?」
「い、いえ…お話したいなって…」
「なるほど。んーなら、昔のトランプとの戦いとかどうだ?」
「気になるです…」
トランプ…四大勢力の一つで魔法を使う集団。リーダーは4人居て、ハート スペード ダイヤ クローバーだ。スペードとクローバーは昔に殺したと聞いた。昨年の冬に僕らとたまたま出会ってトランプは崩壊した。ハートさんの魔法のおかげで僕は少しだけ成長出来た。
「あの時は森じゃなくて、荒廃した街のような場所だった。壊れたビルとかが大量にあってな。障害物もあってあいつらに有利だったんだ」
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「くそっ!どこに行きよった!ぐっ…」
どこからともなくスペードの攻撃が飛んでくる。攻撃が飛んで来た方向へ向かってもそこには居ない。
「あいつらの力…クローバーの幸運が厄介です」
「殴っても意味がないダイヤもだ。ったくこういう時にお前の能力って役に立たねーよな」
「貴様…そんなに言うなら自分でどうにかしてみろ!」
「こんな時に喧嘩はよしてくれ!」
俺達は相変わらずの感じだった。俺とケルトは喧嘩ばっかだったし、主もまだまだ未熟だった。
「とりあえずダイヤと他のやつを引き剥がす必要がある。せっかくの攻撃がダイヤに当たっちゃ意味がない」
この時のダイヤは物理攻撃無効の魔法を自分にしか付与出来なかった。だから俺らの攻撃から味方を庇うような立ち回りだったな。
「見つけたぞ!」
「なるほど、見つかったか」
「どうする?ハート、使える?」
「使える。スリープか?」
「守りはする、安心して行け」
「うるっっせ!!!」
ケルトの攻撃はハートに向かったが案の定ダイヤが庇う。
「知ってるだろう?効かない」
「まぁ俺は囮だからな」
「何?クローバー!スペード!」
ケルトに注意が向いた内にこの2人をどうにかしようと思った。俺らは軽く2人を吹っ飛ばした。簡単には行かなかったけどな。もう身体に4つぐらい穴が空いてた。吹っ飛ばした後もあの2人は抵抗を続けていた。俺らはそん中でも戦った。ケルトがハートの攻撃を避けながらダイヤの気を引いてる内に。
「はぁはぁ……ダイヤ、ハートを連れて逃げろ」
「何言ってる!今そっちに向かって…ぐ!」
「隙ありだぜ?話してる暇なんぞねーっつーんだ!」
「良いから逃げろ…もう俺らは無理だ」
「諦めるなよクローバー!ぼく…俺がこいつの精神に触れれば…」
「もうよせ。チャンスはきっとくる。ここで全滅はさせられない」
それでダイヤとハートは逃した。逃すつもりは無かったが、運良く瓦礫が落ちてきたり、運良く雷が落ちてきたりして逃してしまった。
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「そんな事があって、あいつらトランプは俺らを標的にしてたんだ」
「…僕らで言うところの、バクと僕を失うような物ですね…怒られても仕方ないです…」
「話終わったか?入るぞ」
待っていたと主張する態度で部屋に入ってきた。手に持ってるお盆には良い匂いのするお粥と水がある。僕はお盆を置かれた瞬間食べた。貪った。
「トランプか。懐かしいな」
「そこまで前の話ではないぞ。精々40年かそこら」
「うっせ。懐かしく感じんだよ。多少は悪いことしたと思ってるしな」
「…?ケルトさんが何かしたんですか?」
僕は食べる手を止めて聞いた。なんか嫌な予感がした。
「あ、あぁ。まぁな。別にそこまで悪いことだとは…」
「こいつトランプの仮面剥ぎ取ろうとしたんだぞ。嫌がってんのに」
「………え」
「い、いやいやしょうがねーだろ!あんな仮面してる4人組いたら誰でも気になるって!」
「だとしてもだ。あんなチャライ感じで取り行くなんて常識が欠けてる」
「なんて言うか…本当にケルトさんって悪人だったんですね…」
「な、な、…俺だって反省してるっつーの!!!」
そんなこんなでご飯を食べて寝た。起きた時には夕日が沈み始めていてカラスが鳴いていた。僕の頭には氷の入った袋が乗っかっていた。気分もだいぶマシになっていたので水を飲みにリビングへ向かった。
「おいおい、なんかあったら呼べよ…」
「だいぶ気分が良くなったので大丈夫です。ありがとうございます」
「そんなら良いけど。夜にまた再発する可能性あるからゆっくりしとけよ」
「はーい」
相変わらず心配性な人だ。そんな事を思ってると奧にいたバクが話し出す。
「ケルトの血を飲んでいるのに風邪にかかるとはな〜」
確かに…ケルトさんの血って傷もすぐ治せるし身体能力も上がるしですごいのに病気はダメなのか…
「俺の病気への強靭さは血じゃなくてこの肉体ですからね!ふんっ!」
「そんなドヤ顔しなくても…」
「俺のヒールで病気も治してやれれば良いんだけどな〜。あいにく傷しか治せねーんだ」
「仕方ないですよ。傷が治せるだけで充分です」
ある程度会話して暇を潰したら部屋に戻って休む。ベッドの上にいる時間がひらすら退屈だな〜。
深夜
「はぁはぁ…」(辛い…頭痛い…だるい…喉…乾いちゃった…寒い…)
ケルトさんの言った通り再発した。寝たいのに寝れない。楽にならない。そんな時、急に喉が潤っていく。目をゆっくりと開けてボヤける視界の中頑張って何が起こってるのか確認する。
「イリウス。平気なのか?」
「俺が見とくから平気だっつーの。随分うなされてるな」
ケルトさんが来てくれた。それだけで安心感がすごい。でも喋れない。口が思うように動かない。
「ったく。目開けてねーで寝ろ」
「ケ…ト…さ」
「喋んないで良いから寝ろって…」
「さ…む…い」
「ん?寒いのか。仕方ねーな」
そう言うとケルトさんは布団にくるまった僕の事を抱える。その状態のまま寝っ転がって僕を寝かせようとしてくる。
「無駄に暑い毛皮がこんなとこで役に立つなんてな」
あったかい。モフモフしてて心地良い。僕はそのまま寝てしまった。
次の日。
「ふぁ〜。よく寝ました…随分と気分が絶好調です!ん?」
僕の布団でモゾモゾと動いている。そうだ、ケルトさんも寝てたんだ。
「あ、ケルトさん。昨日はありがとうござ…?」
「おーイリウス。ゲホッゲホッ!調子良くなってそうで良かった!」
いつもと違って鼻詰まりの声…まさか
「ところで今何時だ?」
「今8時ですけど」
「????まじか!やべ!」
急いで布団から出てリビングに向かおうとしてるが壁にぶつかりまくっている。流石に心配になって声をかけようとしたがその前にトラさんが来た。
「熱だな。休んでろ」
「ざっけんな!この俺がゲホッ!風邪なんてゲホッ!引くわけねーだろ!」
「どこからどう見ても引いてるの…素直に休んでてくれ…」
「ケルトさん。お部屋行きましょ?」
「ぐぅ…何でこんな目に合うんだよ!」
風邪が移ったみたいだ。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「この子…トカゲ?羽生えてる…」
ケルトさんが風邪を引いて後日。治ったは良いものの少し心配だからとバクがイリウスに買い物を任せた。イリウスが買い物を終えて帰る途中、鳴き声が聞こえたからそこに行くが居たのは…
あれほど寄り道はするなと言っているのに…イリウスの好奇心を抑える方法は無いのかの…
次回「ーー竜の子ーー」
ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m




