第92話 ーー夏の終わりにーー
僕らのビーチ旅行は終わりを迎えた。結局朝日が昇ってしまい一睡も出来なかった。あんまり覚えてないけど、帰りはケルトさんにおぶってもらって寝てた気がする。
目が覚めると僕の部屋に居た。ベッドの上に丁寧に寝かせてあった。
「もう13時ですか。ふぁ〜、よく寝ました」
軽く身体を伸ばしてお昼ご飯を食べに行く。
「お、起きたかイリウス。昨日は大変だったからな。昨日っつーか今日か」
「本当ですよ。色々ありましたからね〜」
まだお昼時は暑い。太陽も冷めることを知らずに輝いている。まだ少し波の音が聞こえる。
「イリウス…その、」
「ん?どうかしました?」
何かを言うのに渋っている。目も合わせてくれない。照れ隠し?
「楽しかったか?」
「…ぷふふ。もちろんです!」
「な、何で笑うんだよ!」
「えへへ〜、何ででしょうね〜」
ケルトさん、最初の方に行きたがってなかったの気にしてたんだな〜。結果的にこの旅行も、楽しくて過ぎ去っちゃうと楽しくてたまらなかったな〜。
時はすぐに過ぎて夕方。僕は庭への窓辺に座り夕陽を眺める。もうだいぶ涼しくなってきた。ツクツクボウシの声が聞こえてきて本格的に夏の終りを感じる。
「もう夏も終わっちゃいますね〜」
「そうだな〜」
ケルトさんは麦茶の入ったお盆を置いて僕の隣に座った。風が吹いてどこから鳴っているか分からない風鈴の音が響く。
「この夏、色々なことがありましたね。あの子供達の師匠になったり、アイドルさん達のお手伝いをしたり」
「お前が他の能力者と入れ替わっちまったりもしたよな」
あの時の情景が簡単に思い浮かぶ。本当に楽しかった。
「俺、結構初めてかもしれないな。こんなに時間が長く感じたの」
「ん?どういう意味ですか?」
「俺はかれこれ400年近く生きてんだ。1年なんてすぐ過ぎ去ってくもんだった。夏も同じだ、あちーなんて思って筋トレしてればすぐに過ぎていく。今年は違ったけどな。お前と過ごしてる時間が楽しすぎて、何て言うか毎日やりたいことが出来てたんだ。そうやって楽しみが出来てくるとな、時間が長く感じるもんになる」
「普通逆じゃないですか?楽しいと短く感じるものじゃ…」
「何もしないで過ごすより、何かしまくって過ごした方が長く感じる。当たり前だぜ。結局過ぎちまったら短く感じるけどな。あぁーもっとお前と色々やりたかったな〜」
「また来年もあるんですから」
本当この人と話してると色々学べて楽しい。そのまま色々話していると夜になった。いつも通りご飯も食べて、お風呂も入って、寝ると朝がくる。ベッドの上に座って窓を開けると、鈴虫の声が聞こえる。こんな街中なのに虫ってたくさん居るんだな〜と思い風を感じる。窓から月を眺めていたけど、気がつくと僕は眠ってしまった。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「ゴホッゴホッ!うぅ…」
夏も終わって気温が変わる。猛暑だった時とは打って変わって風に当たるだけで寒さを感じてしまう。そんな中窓を開けっぱなしにして布団も被らず寝たイリウスは…
全く、早々に風邪を引くとは世話が焼けるな。まぁ世話は好きだし好きなだけ引いてもらって良いが
次回「ーー秋風邪ーー」
ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m




