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第91話 ーー海辺の霊 後編ーー

「で、で、出たぁぁぁー!」


 僕らの目の前に現れたのは紛れもない幽霊船だ。中々にボロくて色合いもはっきりしない。微かに透けていて懐中電灯を当てても明るくならない。僕達は困惑しつつも広めの陸地へと移動する。ちなみに水死体は見えないように目を塞いでくれた。


「本当に幽霊船があったなんて…ただの嘘だと思ってたのに…」


「だから言ったんです!こんな所行きたくないって!」


「まぁ落ち着けよ。あの船が何かしてくるとは限らねーだろ?」


 ケルトさんがそう余裕ぶってる真横を矢が通る。ズシャっと地面に突き刺さった物を見て味方ではないことを悟った。そして1番気になるのは誰がこれを打ったかだ。僕は恐る恐る顔を上げて船を見ると…


「ほ、ほ、骨が動いてます!あのおばあさんの言った通りだったです!」


 僕はあの怖いおばあさんの言葉通りのことが起こり困惑。洞窟の入り口は狭かったから船なんて通れるわけないしありえないことが起こりすぎてパニックだ。僕以外は違ったけど。


「よっと。何だこの矢。ボロボロすぎて刺さっても痛くなさそうだな」


「この船…風が無いのに何故帆が張っているんだ?」


「うーん。実体は無いみたいですね。乗り込むことも出来なさそうです」


 みんながあまりに冷静だから僕も次第に落ち着いてくる。攻撃は弓矢を打ってくる以外無さそうだし弓矢すらケルトさん達にパッパと取られてしまう。


「な、何でみんなこんなに冷静なんですか…幽霊船ですよ幽霊船!」


「いやー幽霊船っつってもなぁ…」


「船の幽霊なんて聞いたことないしの〜」


「というか生きてもない物に魂はないから幽霊にならない気がするけど…」


「そこにある水死体の方が100倍怖いぞ」


 確かにそうかもしれないけど…そう思いながら辺りを確認する。この幽霊船はそこまで脅威にならない。でも攻撃自体はしてくるから敵だ。船は動いてないしこのまま行けば満月の夜は終わって消える。問題は何故ここに居るかだ。神力は見えないし能力ではない、と言うことは確実に幽霊だ。ここに来た意味も目的も不明。


「うーん…」


「おいおいそんな考えることあるか?ってか実体無いんならそのまま出てっていい気がするんだが…」


「待ってください………霧?」


 考えていたから気付かなかったが、足元が霧に満ちている。そうこうしないうちにその霧は上部まで。


「おいイリウス!大丈夫か!」


「僕は平気そうです…あっ」


「よし捕まえた。とりあえずお前が俺んとこ居れば安心だ。全員無事か!」


「ああ!」 「問題ない!」


 ケルトさんに捕まえられて安心する。他の人の返事も聞こえたし多分平気だろう。




「あれ?シャーガさんは?」


急に霧が晴れてきた。濃かった霧が無くなりみんなの姿が見える。やっぱり居ない、シャーガさんが。それにあんな大きかった幽霊船も無くなってる。


「あれ?シャーガの野郎どこ行きやがった?」


「連れ去られたんじゃないですか!大変です大変です!」


 またまたパニックに陥る。幽霊船は消えてるしシャーガさんも消えてるしでどうすれば良いか分からなくてグルグル回ってた。僕がそんな状態の中、バクはあることに気付く。


「ん?水死体が消えてる…」


 一方シャーガさんは、、、


「そんで、俺だけ連れて来て何の用だ?骸骨ども」


 よく分からんがここは幽霊船の上らしい。洞窟から出てすぐの所だろう。そのまま地平線へと向かってるようだ。


「おい聞いてんのか。てめーら何で俺を…!お前、その紋章」


 ある物に目が行った。骨にまで刻み込んであるタトゥー。その骨は生きてるみたいに沈みゆく月を見る。


「なるほどな。分かんのか、俺が親父の息子ってこと」


 あのタトゥーは親父の船の乗組員が入れてたものだ。親父が色んな島や秘密暴きに連れまわされた連中。でかい船だったが何人も死んだって聞いたな。俺はふと周りを見渡した。あの洞窟にあった水死体が置いてあり船の中に飲み込まれていってる。


「ああやって死体が船の一部になってくのか。そんで魂を乗せて動くと。俺を乗せた理由は何だ?検討も付かないんだが」


 タトゥーの入った骸骨に話をするが答えは返ってこない。こっちを見てもくれないから察そうに察せない。


「口で説明してくんなきゃ分かんねーな…ここはイリウス君の知恵を借りるか」


[もしもしシャーガさんですか!?無事なんですか!!]


「あ、うん。無事だよ。今幽霊船に乗っててさ」


[何でシャーガさんが…というか実体が無いんじゃ?]


「そうだったんだけどね〜。何か触れるんだよね。骨達も攻撃してくる様子無いし」


[あ、バク僕の携帯取らな……シャーガとやら、水死体はそこにあるのか?]


「はい。さっきまであったんですが、船の一部になったみたいです。この船、魂を乗せて彷徨ってるみたいです」


[魂を乗せて…か。お主に何の用があって…あ、こら携帯を取るでな………とにかく無事で良かったです]


「あはは…」


 仲が良さそうで微笑ましい。少しだけ落ち着いた。


[その幽霊さん達ってどれだけ彷徨ってるんですかね?成仏したくないんですかね?]


「成仏……そういうことか!イリウス君ありがとう!」


[え、ちょ…]


 俺は思い出した。この海について。


「お前ら、成仏したくて俺を呼んだんだな。親父からよく言われてたんだ。『海に自分を捧げるなんて馬鹿な事はよせ。俺達は海を使う者だ。捧げるんじゃなくて捧げさせろ』ってな。自殺者も、お前みたいな船乗りも、捧げちまったんだよな。海は広くて自由で心地良い。だからこそ、一度掴んだものは中々離しちゃくれねー」


 この時だけだ。骸骨が俺の事を見たのは。目玉は無いがこっちを向いてるから分かりやすい。俺は船の先をつまみ力を入れる。パキッと簡単に折れてしまう。


「成仏するには海よりも深い、広いやつの力が必要なんだろ?だから俺を選んだ。海と生きる俺を。本当は親父が良かったんだろうけど、まぁ我慢しろや。これに懲りたら2度と海に捧げたりすんじゃねーぞ」


 神器であるイカリを取り出し、力一杯叩きつけ船を真っ二つにした。ボロボロと追撃をしなくても勝手に崩れていく。俺は海水を操って船から脱出してケルトさん達の方へと戻る。振り返ると朝日に焼けながら崩れ去っていく幽霊船が見えた。


「親父が世話になったな」


 帰ったら親父に話してやろう。また長話になるのはごめんだがな。


「シャーガさーん!」


 小さい手を大きく振っているのが見える。心配かけたし急いで戻らなきゃな。



ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「もう夏も終わっちゃいますね〜」


 今年の夏、僕にとっては初めての夏。それももう終わりを迎える。大変な事もあったけど、結局それも良い思い出になるんだろう。

 春になるあのワクワク感は分かるんですけど、夏が終わる時の哀愁漂う感じ…説明出来ない切なさがありますね〜


         次回「ーー夏の終わりにーー」

ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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