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第90話 ーー海辺の霊 前編ーー

 今日は旅行の2日目。相変わらず雲一つない天気で絶好の遊び日和。僕は歪みで空気穴を作り潜って魚を見ている。


(青い魚…黄色い魚…えら呼吸ってどうなってるんだろう…)


 僕の技の一つ僕が歪み(トウメイ)を使って魚に気付かれないよう観察している。触るとバレてしまうのであくまで観察だけだ。


(あ!クラゲだ!こんな浅いのに居るんだな〜。………触ったらプニプニするのかな…)





「うぅ…痛いです…」


「クラゲに触り行くとか馬鹿なのか?好奇心旺盛なのは良いが、ちゃんと調べてから行け。俺の血があるから毒の心配はねーが」


「…でもでも!先人達は毒があることを触って調べてたんじゃないんですか?未知の生き物を人体を使わずに研究する技術は無かったはずです」


「お前相変わらず難しいこと言うな…本当に10歳か?今度IQテスト受けさせるか」


 ケルトさんにクラゲに刺された指を見てもらい痛みが和らぐよう薬を塗ってもらった。腫れてはないし毒は無効になってるようだ。


「ちょっとだけ休んでろよ。俺はトラと競争してくる」


「競争?早食いですか?」


「泳ぎの競争だ!何で早食いなんてすんだよ…」


 僕は少し考えた。泳ぎの競争…化け物の身体で全力で泳ぐ…


「絶対ダメです!みんな津波に飲み込まれちゃいます!」


「大丈夫大丈夫。今回はシャーガが居るしな。波なんてヘッチャラだぜ!」


 心配になりながらもどこかへと行ってしまう。ビーチパラソルの下で体育座りをして緊張していると案の定見て分かるくらいの水飛沫が津波の如く迫ってくる。


「…シャーガさん間に合うんだよね?」


 明らかに間に合わなさそうな雰囲気。もしかしてやばい?と思いながらバクの神器を構える。


「「逆光斬り!」」


 僕の方に来た波を打ち返した時、丁度バクも打ち返していた。


「あ、バク。あれやばいんじゃ?」


「おーイリウスか。あっちには既にシャーガとやらが行ってる。こっちは我に任されたんだ。だがそろそろ…」


 海の方で音がすると思い見てみるとケルトさん達が戻ってきている。そしてまた波が…


「ぷはー!今回も俺の勝ちだな!」


「くそ…次は負けん…」


「そんなことより僕達を労って欲しいんですが?」


 この人達は自分勝手に動くとろくな事が起こらない。いつも僕がブレーキ役になる。そう実感したまでだ。


「もう…遠くの船にも影響が出たらどうするんですか!」


「ん?船?」


 僕の言葉にいち早く反応したのがシャーガさんだった。ケルトさんは「すまんって〜」と謝る気のない謝罪をしていたが


「おかしいな。今日はここら辺で船は出ないよ」


「ん?出てましたよ。あっちの方で。おっきくて帆が貼ってあったんです!3つくらい!」


「んー!?……海賊船か?だとしたら潰しとかないと後々厄介なことに…」


 おっと、説明をしてなかったね。ケルトさん達がレースをしてる時に見えたんだ。ケルトさん達は気付いてなかったみたいだけど。


「海賊船がこんなビーチに何の用だよ。普通貿易とかの船を…」


「それは幽霊船じゃ!」


「うお、びっくりした」


 だいぶ年季の入ったおばあさんが会話に入ってくる。白髪まみれでボサボサ。ビーチに全く合ってない。


「ここらのビーチには幽霊船が出没しておるんじゃ…乗組員は全員骨になって彷徨ってる。生身の人間を求めて!」


「ひー!怖いです!僕は骨になりたくないです!」


「大丈夫だよイリウス君。幽霊船なんて無いから」


「何を言っておる…幽霊船は海に囚われた霊が集まって…」


「もしあるとしたら、船乗りである俺や親父が見てるはずだ。この数百年、俺も親父も幽霊船なんて見た事ない。特に親父なんて呪われた島とか言うのに行って生きて帰ってきてんだから…」


「シャーガさんの親父さん…怖そうです…」


「信じたくなければ信じなければ良い…今夜は満月…幽霊船がここに降りて魂を喰らう時じゃ…」


「んじゃ今夜砂浜散歩しようぜ」


「僕骨になりたくない…」


 そんなことで僕らは今夜海を散策することに。おばあさんは気付いたら消えてた。それが1番怖い。


「う〜…昨日はあんなに楽しかったのに…あの話のせいで怖いですよ」


 夜の砂浜。満月の月が海に反射して綺麗に映る。昨日はホタルイカの大群を見て癒されたが今回は幽霊船を見ることになるのか…。


「お、あれジャーガだろ。おーい」


 手を振る影。特徴的なヒレで影だけでもすぐ分かる。


「んじゃ、行きましょうか。多分ですけど、幽霊船が出るってのはあっちの岬の方だと思うんですよね。実際自殺者が多いらしいですし、幽霊船なんて無いので期待外れは免れますよ」


「んならそこ行くか。迷子になんじゃねーぞ」


 僕らは進む。何があるのかドキドキしながら。しばらく歩いていると岬が見えてくる。


「あれが岬…景色が良さそうです」


「上行くか。飛ぶからちゃんと捕まってろよ」


「うぇ?」


 もう上に行けない所まで来てしまっていたので仕方なく飛んで行くことに。ケルトさんに掴まれてジャンプされる。岬に着いたは良いもののこれと言って特徴的な物はない。


「ここで自殺…確かにトゲトゲしてる岩が危ないですね」


「カップルで自殺したりするらしいぞ。後は年寄りの夫婦とか」


「大変なんですね…」


 僕は大きく下を覗く。これじゃあ落ちたら即死だろう。身体の半分くらいが出たぐらいであるものを見つける。


「あ、あそこ波の流れが変です」


「ん?どれどれ…本当だ。洞窟でもあるのかな?」


「お、良いじゃねーか行ってみようぜ!」


「言わなきゃ良かった…」


「トラも居るし平気平気」


 僕は言ったことを後悔しながら浮いて降りる。こういう時に神力は大きく役に立つ。他のどことも繋がってなさそうな洞窟だ。暗くて何も見えない。


「この波の流れ的に…もし自殺者の死体が回収されてなければこの洞窟内に留まってますよ」


「………帰ります」


「おっと、行かせねーぞ?」


 僕は震えながら帰ろうとするがケルトさんにガッチリ腕を掴まれる。こうなったら逃げられない。


「水死体なんて見たくないです………」


「見とくのも人生経験だ。能力者なんだからある程度慣れないとな」


「それもそうですが流石に10歳に水死体はちょっと…時間が経ったものだと俺でもキツイものが…」


「うーむ…この程度の洞窟なら回収されていてもおかしくない。何より誰も気付かないことあるのか?」


「丁度死角でしたからね。イリウス君みたいな浮くのに慣れてる能力者じゃないとあんなギリギリで見ませんよ」


 僕は涙目で目を隠しながら進む。ケルトさんが引っ張ってくれてるから障害物に当たる事はなさそうだ。恐らく見るのもきついのがあったら目は閉じたままで許してくれるだろう。


「霊の気配がすごい…呪われても対処は出来るが驚ろかされても文句は言えんぞ」


「分かってる分かってる。今更幽霊なんかにビビんねーっつーの」


 ぽちょんぽちょんと水が垂れる音だけ聞こえる。今どんなものが見えてるんだろう…


「お、何かあっ…oh…」


「…やっぱり…まぁあのくらいならまだ…俺は…」


「イリウスは目を閉じていた方が良いな。肌が溶けてすんごいことになっとるの〜」


「説明しないでよ!!!!!!」


 何があるかは察した。というか説明された。目を閉じといて良かったと思う。


「ま、あるのはこんくらいか。一応洞窟内に陸があんだな。ドーム状になってるだけで奥には何もなさそうだ。空気が悪いし帰るか」


「早く帰りたいです…」


 流石に帰りは目を開けて平気かと思いケルトさんが振り返った時目を開ける。みんなは、それが見えた時足を止める。


「へ。まさか本当にあるとはな。幽霊船…」

ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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