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第89話 ーー優しい嘘 後編ーー

「もう知らないです!知らないですもん!」


 僕は涙しながら月が輝く夜の砂浜を飛ぶ。ザザーという波の音はこんな時でも綺麗に聞こえるものだ。




「スー…はぁー。タバコなんて久々に吸ったな。イリウス君、多分傷付いたよな。俺が手加減してイリウス君のこと持ち上げてたなんて。まぁケルトさんならどうにか…あれ?」


 フワフワ飛んでる人影は月の光ではっきり見える。あんなんじゃ他の能力者に目をつけられる。俺はコンクリートの床から砂浜へと出向く。


「おーいイリウスくーん!」


「うぅぅ…ん?あれってシャーガさん?何でここに…」


 僕は特に行くところも無かったし話を聞くことに。


「ってわけで泊まり込みのバイトだから近くのホテルに泊まってるってこと。海で見る月が1番綺麗だからついつい見たくなっちゃうんだ」


「そうなんですか…」


「ケルトさんと喧嘩?俺とピルスのことだよね」


「……」


 図星だ。やっぱり察する事が得意なんだろうなこの人。


「ケルトさんも悪気があったわけじゃないと思うよ?」


「そんなこと分かってるんです。でも…ちょっとは信じて欲しかったんです…」


「ははは。あの人過保護だからね〜。昔はすごい冷たい人だったのに」


「昔…?」


 僕はシャーガさんの顔を見る。そういえばローディアでの昔のケルトさんの話を聞いたことがない。


「あ、聞く?ケルトさんの昔。つっても、たった90年前くらいだけど」


「知りたいです」


 90年前じゃだいぶだけど…と思ったが、この人の寿命も長いんだろう。


「元々俺らってさ、組織の元に成り立ってたんだよね。今と同じだよ。前のボスは自分勝手で、強くて、誰にも止められなかった。そんなボスだったけどさ、ケルトさんには瞬殺されちゃったんだよね」


「何でケルトさんはわざわざ殺したんですか?」


「あの時は確か…力試しがしたいって理由だったかな。ローディアに来たばっかでどんな奴が居るのか気になるって」


「相変わらずひどい理由です…」


「そんでうちのボスが殺されてさ、ほとんどの組員は逃げたの。その中でも、ピルスを抜いた俺ら4人はケルトさんに着いてくって決めた。あの人は最初、『そんなの募集してねー』とか言って拒んでたけど、何回も凸ってるうちに慣れたみたいで俺らにも相応に接してくれるようになったんだ」


「なるほど…それが煌牙組の起源って事ですね」


「そ。でもあの時はほんと大変だったよ。ケルトさんって冗談も洒落も通じない人でさー。俺らには嘘も無しにバンバン『雑魚』とか『死ね』とか言ってくるから傷付くのなんのって」


 そう語ってるシャーガさんの顔は、楽しい思い出話をしているように見える。この時の笑いは、いつものビジネスの苦笑いとは全然違う。


「でもね、それも段々と無くなってきたんだ。あの人も軽い冗談くらいは俺らに言えるくらいになっなし、はっきり言うところは変わらなかったけど、それも俺らにはありがたかったし、ケルトさんなりの気遣いだったと思う。あの変化は、全部ケルトさんが周りの影響を受けた結果の変化だったんだよ。結局ケルトさんが内側から変わる事はなかった」


「?」


 突然何を言い出したのか分からなかった。影響による変化?自主的じゃないってことかな?


「イリウス君が来るまでは…。君が来てから、あの人は大きく変わった。いや、変わったって感じられた」


「今までは感じられなかったんですか?」


「そうだね。どちらかと言えば慣れに近かったかな。イリウス君、君は本当に愛されてる。ケルトさんが誰かを想って嘘をつく、笑わせたくて冗談を言う、守りたくて強く叱る。全部ケルトさんが自分から変わったことなんだ。周りの影響なんて関係なく、自分で考えて変わったんだ。君のために」


「…!」


「あの人はさ、まだ不器用だし、子育ても慣れてないし、人間の扱い方とかも全然分かんないと思う。だからちょっとだけ待っててあげてよ。あの人が君の正解に辿り着くまで」


「…はい!」


 僕はやっと知れた。心のモヤモヤが晴れた。ケルトさんは信じてなかったんじゃない。優しかったんだ。確かに過保護すぎるけど、そこは変えてけば良い。僕がケルトさんに勝てるほど強くなれば良い。


「あ、そういえば、あっち行こうよ。良いもの見れるよ」


「え?」


 僕はシャーガさんと一緒に砂浜を歩く。ビーチの先の先、岩が壁を作ってる所まで。


「ここがどうかしたんですか?」


「まぁまぁ。ほら、こっちこっち」


 シャーガさんが高くジャンプして奥に行った後、小さい隙間を通って奥に行く。隙間の後には、


「わあーー!綺麗…」


 青く光る生物が海いっぱいに広がっている。岩が大きかったからあっちからじゃ見えないんだろう。


「この時期のこの時間。ホタルイカが産卵のために陸に近付くんだ」


「ホタルイカ?」


「そう。どこかの世界から来た外来種らしいけど、特に害もないよ。綺麗でしょ」


「…はい!」


 確かに綺麗だ。こんな綺麗な景色、初めて…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「わー!すっごい綺麗!」


「この時期はホタルイカが出るんだ!食べても美味いんだぞ!」


「そうなの?でも食べない方が綺麗だよ?」


「そうだな。綺麗だな」


「いつかまた一緒に来ようよ!約束!」


「………あぁ、約束だ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「初めてじゃない…」


「え?」


「あ、何でも無いです。それにしても、本当に綺麗ですね。みんなも連れて来たかったですよ」


「あ、それなんだけどね…早かったですね」


「おう…」


 振り向くと岩の上にケルトさん達がいる。


「おー!これはこれは随分と綺麗なうぶっ!」


「主!ケルト達には話があるんですからお静かに!」


 ケルトさんもすぐ降りてきて膝をつく。僕と視線を合わせるためだ。少し息が切れている。探し回ってたのかな。


「イリウス…俺…お前のことなんも分かってなかった…本当にすまん…」


「…うーん。許さないです」


「な、なに!?」


「えへへ、冗談ですよ。僕ももっと知ってもらえるよう頑張ります」


 2人で笑い合って嘘の話は許した。この綺麗な海、あの記憶はなんなのか分からないけど、またあの人と見にこれるかな。


「シャーガ。本当ありがとうな。今回色々助けられちまった。礼は弾むぞ」


「そ、そんな。お礼なんて結構ですよ。私も好きでやっただけですし…ケルトさんにとんだ無礼を…」


「あれは俺が悪いだけだ。ボーナス入れといてやる」


「え?マジですか!?おっしゃ!ケルトさん最高です!」


「シャーガさんとて現金な人ですね…」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「どわぁぁぁ!!!」


 僕らの2泊3日の海旅行。2日目にはまさかの心霊スポットへ!?海辺に伝わる幽霊船や自殺者の怨霊とはいかに。霧の出る夜、消えてしまうのは一体誰だ?

 幽霊は俺らを触れるのに、俺らは幽霊を触らないなんて不公平だな。札で対抗しかなさそうだ。


           次回「ーー海辺の霊ーー」

ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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