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第84話 ーー知られざる過去 後編ーー

第77、78話を見ればこの作品の設定とかを見れるのでおすすめしておきます!

 あの日、俺はいつも通りに過ごしていた。ご主人もいつも通りに仕事に行って、俺も家事を済ませていた。だが一つ違う所があった。


「あれ?ごしゅんじんさまかえってきた?」


 ガチャっと扉を開ける音が聞こえた。鍵がかかってたから開けれるのはご主人だけだ。


「ごしゅじんさま!おかえりなさい!…?」


 酷く落ち込んだ様子でな。ただいまも言ってもらえずに部屋に入って行った。その日から、ご主人は部屋から出なくなった。仕事は?買い物は?色々聞いたが返事は返ってこない。ご飯も作ってもらえなくなってカップ麺ばっか食ってた。俺もご主人もな。でも俺は落ち込んでる暇なんて無いと思ったんだ。自分で家事について調べたり、聞いたり。幼いながら買い物に行ったりもした。買ってくるもんはカップ麺だけだったがな。ゴミ屋敷状態な家も綺麗にしたし、皿だらけのキッチンも片付けた。俺はこんなに頑張ったんだ。褒めて欲しい。そう思ってたさ。

 現実は、酷いもんだぜ。


「ごしゅじんさま…かじ全部出来るようになったよ!出てきてよ!遊ぼうよ!」


「うるせー…うるせーうるせーうるせー!!何なんだよお前は!!」


「…え…?」


「いつもいつも俺の邪魔ばっかしやがって!お前を買った俺が間違ってた!」


「で、でも…」


「口答えするな!」


 俺は殴られた。初めてだ。痛い、痛い、悲しい。そんな気持ちだっな。ご主人はちょっと心配した様子だったがすぐ部屋の扉を閉めちまった。俺は床に倒れながら色々考えてた。何とか恩返し出来ないか、てな。

 その晩、俺がカップ麺を食ってると部屋からご主人が出てくる音が聞こえた。トイレかと思ってたがリビングまで入ってきた。


「ごしゅじんさま…?」


 ご主人は俺の目の前で突っ立って腕を振り上げた。


「ふんっ!」


「!!!」


 その手は、まっすぐ俺の顔面に振り下ろされた。突然のことに驚いたが考えてる暇はなかった。


「クソがクソがクソがクソが!お前も!この社会もみんなクソだ!ふざけやがってふざけやがって!」


「やめて!ごしゅじんさま!いたい!」


 蹴られて殴られて、もう酷いな。ボコボコにも程がある。しばらくボコされた後、ご主人は部屋に戻って行った。痛みはもちろんだが、それ以上に悲しかった。そんな日がほぼ毎日続いた。顔にあざが出来ても、心配なんてされない。当たり前だ。この世界じゃ、獣人は奴隷と同じようなものだ。家事をして、買い物行って殴られて。それが俺のいつも通りの日常になっていった。そんな中、あることを知るんだ。


「ストレス…?すごい怒ってる…ぼうりょく?」


 ストレスが溜まると暴力で発散するってやつだ。こん時の俺は馬鹿だったからな。自分に暴力を振ってるってことは、ご主人のストレス解消に役立ってる!とか思ってたんだ。そん時から少しだけこの世界を見る目が変わった。でも俺は満足してなかった。その夜、ご主人に殴られた後だ。俺はこう思った。


(ごしゅじんさまはいつも怒ってる…もしかして僕が弱いから強くなぐれないのかな。僕が弱いからストレス全部出せないかな…僕が弱いから…)


 こう思った俺は、身体を強くすることに決めた。まぁ簡単に言えば筋トレだな。家で出来る筋トレを暇さえあればひたすらにやってた。それと同時に体に良い食事も覚えた。毎回ちゃんと作って食ってた。ご主人は食ってなかったけどな。そんな生活をずっと続けてたんだ。

 5年くらいかな?そんくらいが経った時、俺の身体も言葉もだいぶ成長してな。俺の事殴ったご主人の方が怪我しちまうくらいになったんだ。


「いっっ!」


「ご、ご主人様平気ですか?」


「…ちっ!」


 俺の身体の成長と共に身長も伸びてな。こん時で既に170くらいはあったんじゃないか?威圧感と相まってご主人も殴りづらくなってたんだろうな。殴られる頻度はだいぶ減ったぜ。俺もずっとご主人の役に立ってきたと思って気分は良かった。何かの闇は持ってたけどな。


(こんなんで本当に良いのかな…僕…ちゃんとご主人様の役にたってるよね…)


 そんな事を思ってた。でも時が経つにつれてやっぱり楽しくなくなる。ご主人もどんどん痩せ細っていって俺を殴る気力もないんじゃないかってくらいだ。だが結構前から部屋の中でパソコンのゲームをやってたみたいでな。ダチか誰かとの通話してる声が聞こえてたんだ。ご主人が幸せならそれで良い。俺はずっとそう思ってた。そう思ってたはずだった。だが、あの日、


(そろそろご主人にも僕のご飯食べてもらいたいな…持っていけば食べてくれるかな?いっぱい作って練習したし…もしかしたら褒めてもらえるかも!)


 そう思って俺は部屋の前に行った。ノックをしようとした時、話し声が聞こえたんだ。


[そういやお前の家で狼飼ってなかったか?]


「あぁ、飼ってるよ。ま、最近世話してねーし関係ないけど」


[お前そいつ殴ってストレス発散してんだろ?やばすぎだろw]


「へっ!まぁな。そんくらいしか使えねーし。奴隷なんてそんなもんで良いだろ」


[まぁ置いといてやるだけ偉いよな]


「それなんだけどな。そろそろ追い出そうと思ってんだ」




「…え?」


 俺は頭が真っ白になった。今まで頑張って尽くしてきたのに、想ってきたのに、大切にしてきたのに。それなのに、捨てられるんだって。何かが、切れちまったんだろうな。


[マジ?家事とかどうすんだよ]


「別にいらねーよ。それにあいつ料理とかしやがってよ。金も無くなりそうなんだ。だから追い出しちまおうってわけだ」


 俺はドアを開けた。そんでまっすぐご主人の元に向かった。


「は?おい何勝手に開けて…おい聞いてんのか!おい!お…」


 気が付いたら、俺はご主人を食い殺してた。時間は夜だったな。雨が強かった。窓から赤色の光がチカチカしてるのが見えた。とりあえず外に出たかったから出たら、


「…!!そこの獣人!まさか…」


 そう、通話してたご主人の友人が警察に通報したみたいだ。血まみれになって出てきた俺を警官たちは囲む。容易に手は出してこなかったぜ。裏口から家の中に入った警官が出てきて言ったんだ。


「死体がありました!誰かが入った形跡もない!そこの獣人の仕業です!」


「総員!撃て!!!」


 俺は容赦なく撃たれる。この世界の獣人なんて犯罪犯せば何であれ死刑だ。だがな、俺も易々とやられるわけねー。唸り声上げて警官たちに噛み付いてやった。バンバンと銃声が響く雨の中、俺に付いていた血は更に上書きされていた。応援も来ちまって流石にまずいと思った俺は森の中に避難した。


「っち!出血もひでー…はは…こりゃ、終わりだな」


 雨が俺を打ちつける中、空高く腕を伸ばした。


「なぁご主人様。僕…いや、俺…良い子だったよな…」


 その時だった。俺の伸ばした手は異世界への扉(ホール)を作り出した。何が起こったのか分からなかった俺だが、とにかくそこに逃げ込むしかないと思って逃げ込んだわけだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「これが俺の過去の話だ」


「……す、すごい悲惨な話でした…ホールの中に入った後はどうしたんですか?」


「よく分かんねージャングルみたいなとこに出てな。果物とか虫とか食って回復してた」


「その話も聞きたいですが…」


「それはまた別の話だ」


 ケルトさんの過去話に僕は心を奪われた。そんな事があったのに今じゃこんな優しい人……少し優しい人になったんだと。


「言っとくけど、別に元ご主人を殺したこと、後悔してねーぞ」


「そう…ですか…。辛かったんじゃないですか?大切なものを自分の手で失って」


「………別に。あん時の俺が馬鹿だっただけだ。俺はあんな馬鹿みたいな主人にはならない。お前のことも、大事に育てる」


 少しだけ辛そうな顔をする。ケルトさんはいつも強がってばかりだ。僕の前では特に。


「なんっっっという悲しい話ぞ!お主もそんなに辛かったのか…!ぐぬぅぅぅ!我らそんな事も知らないで主をやっていたとは……!!」


「あの、なんかくっそムカつくんで泣かないでもらって良いですか?」


「な…!人がこんなにも心配しておるのにそなたはなんと!・・・」


 今日も平和だ。ケルトさんも楽しそう。辛い思いはしてほしくないな。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「わぁ…これはひどいですね…」


 夏らしいことと言えば何を思い浮かべる?スイカ割り、流しそうめんそして……肝試し。夏らしいことをするために心霊スポットに訪れたイリウス達は幽霊に出会うことが出来るのか。

 ローディアには神も仏も居るからの。幽霊も居てもおかしくない。というか居る。


             次回「ーー幽霊ーー」

ちょっとでも、先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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