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第81話 ーー過去の記憶ーー

第77、78話を見ればこの作品の設定とかを見れるのでおすすめしておきます!

 いつも通りの日。お風呂も入った後でソファーに座っている。僕はあの記憶が頭から離れない。


「どうした?浮かない顔して」


 ケルトさんはそんな僕を心配してくれてる。あえて少し遠い所から聞くのも僕が話しやすいようにしてくれているんだ。でも、僕は迷っている。結局は僕の問題なのだから。


「……」


「話したくなきゃ話さなくても良い。だが、すっきりしないんだったら話とけ。楽になるぞ」


「そう…ですかね」


「そうだとも」


「ケルトさん…最近の物騒な事件って、目玉を取る人の事ですよね?」


 僕がそれを聞くと黙ってしまう。考えていたのか、しばらく経ってため息をついた。


「どこで聞いたのかは知らんが、結構グロい事件だからな。出来れば言いたくなかった。それが関係してんのか?」


「はい…僕のお父さんとお母さんの話です…」


 ドスンと僕が少し浮いた。隣には座ったケルトさんが居る。いつにも増して真剣な眼差しだ。


「聞かせろ」


「お父さんとお母さんは、交通事故で死んじゃいました。犯人は…居ないとの事でした。車に轢かれたはずだけど、その車には誰も乗ってなかった」


「そうだな。人間界で見た記事の通りだな」


「でも、覚えてるんです。僕が見た時、人は乗っていた。そして、お父さんとお母さんの目が無かった」


「それって…」


「もし犯人が能力者なら、異世界への扉(ホール)を開いて証拠も無く逃げれます。そして、目を取るって言うのは…」


 ケルトさんは目を見開いている。一見衝撃を受けてるように見えるが多分違う。怖いんだ。僕が恨みでいっぱいになるのが。怖いんだ。僕が恨みに支配されるのが。


「イリウス…大丈夫だ。俺がきっと何とかして…」


「何とかってなんですか?」


「…え?」


「大丈夫って何がですか?僕のお父さんとお母さんは帰ってこないんですよ?犯人を殺した所で何も変わらないんですよ?」


「す…すまん…」


 もう手遅れだ。僕はもう、おかしくなってる。


「ケルトさんに出来ることだって限られてるんです。何でも出来るわけじゃないんです。それに…

      これは僕だけの問題です」


 僕はそう強く言い放った。ケルトさんは酷く落ち込んでいた。この時の僕は、今まで見せたことも無いような目をしていたのかもしれない。胸が高鳴って眠りにもつけなかった。そんな僕は、早く決着を着けようと外に出た。


「事件があったのがあの辺。なら今度はこっちかもな。時間は深夜。少し早いけど問題な…」


「イリウス!」


 マンションの屋上から様子を確認していた所、僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。3人で屋根を飛び越えながらこっちへ向かってきている。


「3人揃って、何のようですか?いつからですか?」


「お前が出てった時からだ。何のようって…決まってんだろ!連れ戻しに来たんだよ!」


「…」


「イリウス…帰ろうぞ…そなたが請け負うには少し重すぎる。それに別世界への行き来が自由という事は…」


「相当なやり手、ですね」


 バクもトラさんも冷静に分析する。相変わらずだな。


「ほら、帰るぞ。大丈夫だ。俺らがついて…」


「何が…何が連れ戻すだ!」


 みんな唖然とした。僕の怒った叫び声なんて聞いたことなかったはずだし。


「何が重すぎるんだよ…僕は…死にたいから行くわけじゃ無い!殺したいから行くわけじゃ無い!責任を取りたいんですよ…」


「…お主のせいじゃないだろう?全部その犯人が…」


「もういいです、3人とも帰っててください。話は、それからです」


 僕はテレポートでそそくさと逃げた。ケルトさん達はずっと驚いている。


「なぁ、あんなイリウス…初めてだよな?」


「あぁ。見たことないし、想像もしなかった。あんなにおかしくなるとは…」


「無理もない。両親を殺されておるんだ。今回だけは、我々も手を貸せないかもな」


 僕は飛びながら地上を観察する。湧き上がる怒りを抑えて。しばらく飛んでいると動くものを発見した。すかさず降りて確かめる。


「誰かいるんですか?」


 ガサガサと物音が立っていたが、僕の声で音が止む。僕が足音を鳴らして近づくとすぐに姿を現した。


「だ、誰じゃ!」


「あなたこそ、ここで何をしてるんですか?」


「わ、わしは大事なものを探してるんじゃ!さっさとどこかに行け!」


(ゴミ箱を漁ってるようにしか見えないんだけど…)


 おじいさんの迫力に負けそうだったがこの人が犯人の可能性もある。でも神力が見えないから薄いだろう。


「何を探してるんですか?大事なものって?」


「ガキには関係ないわい」


「ム…」


 素っ気ない態度にムッとした。いつまでも放置しておくのも気が進まないので手伝うことにした。見た所ホームレスには見えないし本当に何かを落としたのかもしれないし。


「おぉー。明るいのぅ。何じゃこれは?」


「能力です。おじいさんも知ってるでしょう?」


 僕はビームを使って灯りを確保する。ゴミ箱を漁るなんてしたくなかったが仕方なくすることに。


「どうしてゴミ箱なんですか?大切なものを捨てちゃったんですか?」


「娘が間違えて捨てちまったみたいでな。こうやって探してるんじゃ」


「そんな大切なものならもっと大事に保管するものじゃないですか?」


「……そうじゃな」


 苦い表情に首を傾げながら探し続ける。ゴミ箱の中身を一つ一つ確認して行ったが、大切な物になりそうなものは見つからなかった。


「はぁー…どこにも無いですよ?大切なものって何なんですか?」


「…絵じゃよ」


「絵?」


「そうじゃ。わしの娘が描いてくれた絵じゃ」


「娘さんが捨てたって事は自分の絵を捨てたってことですか?」


「いいや、わしには2人娘が居たんじゃ」


「居…た…?」


「昔はな、2人とも元気に育ってくれると思っておったんだがな。妹の方が病気にかかっちまって、手術をしたんだが医療ミスで死んじまったのさ。あの子が残した最後の絵だったから探したかったが無いなら仕方ない。手伝ってくれてありがとさん」


「…もう少し探します」


 ガサガサと作業を開始する。絵なら、気付かなかっただけであるかもしれない。


「もう良いんじゃよ。仕方がなかったんじゃ。運命だったんじゃよ」


「…憎くないんですか?」


「何を憎む?」


「お医者さんです。医療ミスのせいで死んじゃったんでしょう?それなら、多少恨んでてもおかしくないんじゃ…」


「いいや、ちっとも憎くないよ。もし憎むとしても、それは医者にじゃない。もし医者に報復をしたとしても、残るのは曇った解放感だけじゃ。それに、ほら。恨んだり憎んだりするより、楽しんだ方が良い。お前さんは分かってそうだがのぅ」


 僕は何とも言えない気持ちを噛み締めながら一枚の紙を見つける。くしゃくしゃだけど、何か描いてある。


「……これ、違いますか?」


「おー!これじゃこれじゃ!」


「こんなぐしゃぐしゃなら、ゴミと間違えちゃいますよ」


「そうじゃな。見つけてくれてありがとう。本当にありがとう」


「お礼は要らないです。あの、おじいさん」


「なんじゃ?」


「もし、自分の大切な人を誰かに殺されたら、どうしますか?」


 おじいさんは真剣に考えて答えた。


「どうにも出来ん。例え犯人が分かっていたとしても、こんな老ぼれには警察に教える事しか出来んよ」


「そんな…復讐とか、もっとこう…」


「出来ん。わしは人を殺した事がない。でも犯人は人を殺した事があるんじゃ。その時点で一般人が挑むのには限度がある。お前さんは頼れる人が居る」


「え?」


「そんな顔をしとるよ。良いか?恨みで自分を見失っちゃおしまいだ。死ぬことなんかよりずっと恐れた方がいい。お前さんが何を失っちまったのかは知らねーが、いつまでも過去を向いてちゃいけねーよ。死んじまったやつも大切にしなきゃダメだが、今大切なやつも、しっかりと向き合わなきゃあな」


 僕は涙がこぼれ落ちた。ケルトさん達に酷い事言っちゃった。謝らなきゃって。


「さっきも言ったろう?復讐をしたって残るのは…」


「曇った解放感…ですよね」


 にっと笑って見せた。おじいさんもすかさず笑顔になった。


「お元気でー!!」


 僕は大きく手を振って見送った。後ろで音が聞こえたが何の音かは気付いている。


「イリウス…俺な、色々考えたんだけどな…」


 すかさず飛びつく。ケルトさんも僕が落ちないよう抱き抱えてくれている。


「ごめんなさい…もう…大丈夫です…みんなの…おかげで…」


 3人は目を合わせて微笑む。安堵の微笑みだ。僕も自分を取り戻せた。これからも、この家族を大切にしたい。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「全部…僕のせいだったんです…」


 新たに明らかになる真実。疑惑はどこまで膨らむのだろうか。困ってる人を見ないようにまた深夜に犯人を探すが見つかるものは何か。犯人について手掛かりになりそうなものがあれば…

 俺はイリウスを苦しめてる犯人を絶対に許しはしない。捕まえ次第ぐちゃぐちゃに叩き潰してやる!


             次回「ーー復讐ーー」

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