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第79話 ーーこの時期が来てしまったーー

第77、78話を見ればこの作品の設定とかを見れるのでおすすめしておきます!

「はぁー…」


「?」


「はぁぁぁ…………」


「どうしたんですか?ため息なんて珍しいです」


 相変わらずミンミンとうるさい蝉。僕の能力のおかげで暑さは平気だが夏になってから時間が経っている。まだ何もしてない…


「いやーよぉ?今何月何日か知ってるか?」


「7月の26日です。何かあったんですか?」


「この時期はな…ちょっとな…飯を考えんのに苦労する時期なんだよな…」


 ケルトさんはとても憂鬱そう。宿題でもあるのかな?と思うほどだ。


「飯って?何で苦労するんですか?買い物もちゃんと行ってるみたいですけど」


 そういえば最近冷蔵庫の中身が前より充実してない。空っぽではないが隙間が空いている。


「んま、待ってりゃ分かる」


「?」


 そのまま3日ほど経った時…


「ふんふふんふふーん♪」


 僕はリビングで読書をしていた。みんなそれぞれの好きな事をやっている時、チャイムが鳴った。


「お、来たか」


「ついにこの時が来てしまったかのぉ…」


「はぁー…大変だ…」


「3人とも何でそんな憂鬱そうなんですか!?」


「良いから手伝ってくれよ。ほらおいで」


 訳も分からないまま玄関へ行った。どうやら宅急便らしい。荷物が届いたんだろうか?箱自体は重かったが何よりも量がすごい。20箱ぐらいあるんじゃないだろうか。


「ケルト…前より増えてないか?」


「気のせいだと思ってたが…やっぱ増えてるよな…?」


「何なんですかこれ?大量にありますけど…」


 僕は箱の中身を知らない。ただ広かった廊下の半分が箱で埋まっている。


「そろそろ来るだろ」


 ケルトさんは携帯を持って身構える。ケルトさんの言った通り電話がかかってきた。


[もしもし!?ケルトさんっすか!?]


[あぁ俺だ]


 ケルトさんはスピーカーモードで話し始める。相手はピルス君だ。


[ちゃんと届きました!?]


[あぁ…丁度な]


[良かったっす!今年も豊作だったらしくていっぱい送られてきたんすよ!]


[あ、あぁ…そうらしいな…ところで何か多くねーか?]


[あ!それなんすけどね!イリウス君が新しく来たので多くしときました!育ち盛りですもんね!栄養あるものしっかり食べさせてあげないと!]


[そ、そうか…でも今度からはもうちょっと少な…]


[あ!俺用事あるんで切るっすね!じゃ!]


         ツーツー……


 沈黙の時間が流れる…ピルス君早口だった…。


「はぁ…これだよ…今年も…」


「豊作?食べ盛り?食べ物が入ってるんですか?」


「そうだよ…これ全部野菜だよ…」


「ほえーなるほどー。………!?!?全部!?」


 まさかこの20箱くらいの大きな段ボール全部に野菜が!?腐るのが先な気がするけど…


「腐っちゃわないんですか?」


「腐るぞ。普通に」


「どうするんですか?」


「食うしかねーだろ」


 まさか今日から野菜祭り…お肉好きなケルトさんが憂鬱だった理由が分かった。


「この箱は…きゅうり入ってます!こっちは?…レタス?何でピルス君はこんなに野菜を持ってるんですか?」


「持ってるっつーか…あいつの両親が農家やってんだ。人とかたくさん雇ってる大規模農家でな。そんで、大量の野菜をピルスに送って、ピルスが俺らにも送ってくるってわけだ」


「なるほど…この量は多すぎですね…あ、こっちにスイカとかも入ってます」


「あーフルーツもあるのが唯一の救いだな。まぁ冷やしておかねーと痛むけど」


 話によると毎年こんな感じらしい。最初は丁度良い量で満足してたらしいけど年を重ねるごとに増えていき…


「いただきます…」


 野菜まみれの食卓。美味しいけど物足りない。強制ヴィーガンってやつだ。


「やっぱ物足りねーよ…肉食いてーよ…」


「我慢しろ。全部食べ終わらんとどうにも出来ん」


「後5台くらい冷蔵庫買えれば丁度良いのか。買うか」


「置き場ないっすよそんなん。はぁー…夏がこんなに暑くなけりゃあ良いのにな」


「本当ですね〜。暑いから腐っちゃうんですもんね〜」


「一部屋空いてるからそこで冷房でも付けてればどうにかなるんだろうがな〜…ん?」


 ケルトさんの言葉でみんなが僕を見つめ始める。


「?」


 何で見てるか分からず首を傾げておくが嫌な予感がした。


「なぁイリウス?肉食いてーよな?」


「ま、まぁそうですね…」


「もうちょっと野菜が長く持てば肉も食えんだよ」


「そ、そうですか…冷蔵庫買えば良いんじゃ…」


「んなのスペースねーんだよ。そんでよぉ?お前今も能力でこの部屋涼しくしてんだろ?今まで一回も神力切れでぶっ倒れた事ねーよな?」


「ま、まさか僕に冷蔵庫の役割もしろとか言いませんよね!?!?」


 3人とも期待の眼差しで僕を見てくる。眼差しの奥には悪巧みをしてる時と同じ眼も見える。


「まぁまぁ。お前がどうしても嫌だって言うんだったら1ヶ月は野菜オンリーで我慢するしかねーよなー?ちょっと頑張ってくれれば肉も食えんだけどなー?」


「…分かりました!」


「「「いえーい!」」」


「ただ条件があります!これまで以上に神力がカツカツになっちゃうのでこの部屋の冷却も最低限でやらせてもらいます!」


「えー。良いじゃねーか神力切れしたら寝れば。俺らが守ってやるって言ってんだろ?」


「1日の活動時間が短くなっちゃうでしょう!夜も寝れなくなると困るんです!てかこの前守れてなかったじゃないですか!!!」


「あー分かった分かった。それで良いよ」


「全くもう…」


 仕事が増えるのは嫌じゃないが軽く見られたくは無い。実際調節がすごく面倒で…グチグチ


「ありがとな!」


 僕を撫でてる手は大きくて、優しくて、落ち着く。ケルトさんの満面の笑みを見てると自然と落ち着くものだ。ペットを見てる気分。


「我も感謝しておるぞ!今度美味いもん作ってやろう」


「ありがとう、イリウス。明日にでも本の読み聞かせでもしてやる」


 いつも通りでも、それが僕にとって何よりも大事なものだ。笑い合って、ふざけ合って、時には喧嘩もして。僕が…少ししか出来なかったことを、今ここで出来ている。


「全く…しょうがない人達ですね」


 幸せを噛み締めながら、僕はそう言う。この瞬間を失くしたくない。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「この記憶…」


 イリウスは自分の能力を冷房替わりに使われることへの不満を覚える。それと打って変わって起こる事件。犯人の特徴から思い出す記憶が?

 記憶障害なんて厄介なもんだな。記憶喪失を治せる能力者なんて聞いたことねーし。


        次回「ーー能力の無駄遣いーー」

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