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第73話 ーー入れ替わり 前編ーー

「もう!何で毎回毎回こうなるんですかー!!」


 僕は今日も今日とて大量の能力者に追いかけられる。1人で散歩してると何でこうなるんだろうな…そんなことを考えていると先回りしていた能力者に攻撃される。


「うわぁぁぁぁ!」


 炎が舞い上がると共に僕は吹き飛ばされる。


「むふっ!」


 たまたま捨てられていたマットレスに不時着する。僕のことを見失ったようで集団は別の方向へと走っていった。


「もう嫌です!こんな狙われる日常なんて非日常にも程がありますよ!何で僕ばっかり狙われるんですか!」


「おやおやおや?こんな所に子供が1人。ゲヘヘヘ、ご両親はどこに居るのかな?」


 薄暗い路地裏にて謎の人物が話しかけてくる。見た目は…一般的にはブサイクと言う所だろうか…


「豚の獣人さん?」


「おいクソガキ!俺は人間だ!」


「急に怒鳴ってくるタイプです…」


 何か怪しいタイプだし近づきたくはなかったがあっちから近寄ってくる。


「君の顔…不幸を呼ぶ顔してるね…可哀想に可哀想に」


(不幸を呼ぶ顔してるのあっちな気が…)


「その不幸、どうにかしたくない?」


「え?どうにか出来るんですか?」


「うん!俺ならどうにか出来るよ。どうする?」


「お願いしたいです!」


 僕は今の状態から脱却したくてたまらなかった。とにかく追いかけ回される事がなくなってほしかった。


「じゃあ…いくよ?」


「はい!お願いします!」


(ん?待て?どうにかって能力者って事なんじゃ…もしかしてまずい?)


「え?あ、やっぱりちょっと…えちょっとまっ!」


 辺りが光で包まれ目を閉じてしまった。再び目を開けると…


「あ、あれ?僕が目の前に…?しかも声が何か低いと言うか…」


「えへへへ。やーっと変われたよ」


「え?何で僕が喋って…」


 自分の手を見てみると見慣れないゴツゴツした手だ。毛が生えてるしなんて言うか…汚らしい。


「じゃあこれから頑張って、『俺』」


 僕が外へと走り行く姿を眺めた後、自分の状況を把握した。


「えぇぇぇぇ!?ま、待って!僕姿変わったって事!?それとも魂が入れ替わった!?どういう事よー!…は!待て…今この姿で街なんて出歩いたらどうなる…あの人が僕以外に敵を作ってないとは限らない…」


 2時間後、僕は未だに路地裏にいる。泣きながらうずくまっているが解決策が思い浮かばない。携帯も何もない。家に帰ったら殺される…


「そんでこんな事があってっすね〜。あの後ケルトさんに靴奢ってもらったんすよ!」


「そうなのか。ピルスも大変だな」


「シャーガさんこそ、・・・」


(この声、その名前!ピルス君とシャーガさん!丁度良い所に!助けてもら…)


 2人の声が聞こえて助けを求めようと思った矢先、不安が漂う。


(でも…偽物だって思われたら挽回出来るのかな…こんな姿じゃ信じてもらえないだろうし…やっぱりこの姿のまま…)


 余計に悲しくなり涙が溢れる。


(でも…僕は僕で居たい!ピルス君ならきっと!)


「ピルス君!シャーガさん!」


 路地裏から出て2人の名前を呼ぶ。太くて低い声だけど、2人は振り返ってくれた。


「「あぁ?」」


「僕です!イリウスです!」


 2人が顔を合わせる。どったからどう見ても不審者だ。


「えーっと?大丈夫っすか?おっさん」


「身体が入れ替わる能力で姿が変わっちゃったの!信じてピルス君!」


 怪しい顔で見てきているが困惑している様子でもある。


「シャーガさん…あれって…」


「なりすましかバカか本当かだな」


「どっちでしょう…無視して逃げた方が良いんすかね…」


「だが本当にイリウス君だったら可哀想だぞ。俺なら一生後悔する」


「それもそうっすよね〜」


 コソコソ話している所を見て余計に悲しくなった。


「うぇーん!助けて下さいよ〜。僕…僕…」


「あー分かった分かった。なら信じられる情報を言ってみろ。イリウス君や俺らしか知らないような情報でな」


「情報…?神様が見えます!」


「うーん微妙っすね。もっとこう、情報屋も知らないような事とかが良いっすね」


「そうだな。相手の記憶を除く能力とかかもしれないし、そんな特徴的な物じゃない方が良いかもな」


「えぇ!?えーっとうーんっと…」


 特徴的じゃなくてピルス君とシャーガさんに分かる僕の知ってる事!?どんな答えをすれば良いのか何も思い浮かばず時間が経つと、


「言えないんでしたら帰るっすからね」


「ま、待ってよ!」


「待てって言われてもな〜?今んとこ偽物だが」


「うぅ…」


 2人とも歩き出して行ってしまう…このまま何も言えなかったら…一生この姿のまま…そんなの絶対嫌だ!僕の情報じゃなくても良いなら…


「け…!」


「「け?」」


「ケルトさんの○○○は○○○○○です!!!!」


  ⚠︎何を言ったかはあなたの想像に任せます

 街中に僕の声が響く。正確には僕の声じゃないがそれはまぁ良い。その言葉を聞いた途端…


「「本物だ!」」


 2人とも信じてくれるようになった。


「え、じゃあ今頃イリウス君の身体は…」


「多分お家に帰ってます…」


「早くケルトさんに知らせないとな。でも信じて貰えるか?イリウス君がケルトさんに信じてもらえるようにならなきゃ解決しないだろ」


「それもそうっすね…考えはあるの?」


「何も…でも2人が居るならきっと平気!何とか説得してみせるから着いてきて!後もし殺されかけたら守って!」


「分かった。守れるかは保証出来ないけど」


 そんなことで家に向かう。


「うんめー!こんなうめーもん初めて食ったぜ!」


「……毎日作ってるんだが?なんかいつもと違くねーか?イリウス」


「あ、……えっと…今日は特別美味しいって意味です!ケルトさん!」


(ぐへへへ。情報はしっかりと掴んでるぞ。親なのにさん付けで呼んでる事とか色々な。バレる要素は0!このケルトとか言うやつはすぐ人を殺すから俺の本体が来ても問題ねー!)


        ピーンポーン


「ん?こんな時間に何だ?客人か?」


「ケルト、出てきてくれ」


「はーい」


 中からドスドスと足音が聞こえる。僕は緊張で震えが止まらないがシャーガさんが手を握ってくれる。


「ほーい。ってピルスじゃねーか。シャーガも居るし…何だそいつ?」


「ケルトさん。落ち着いて聞いて欲しいっす。このおっさんがイリウス君で、そっちのイリウス君がこのおっさんなんすよ」


「何言ってんだおめー」


(ピルス君の馬鹿ー!そんなんで分かるわけないでしょー!)


 心の中で絶望しつつも涙目の僕をケルトさんは見つめる。


「ふーん。まぁ可能性は0じゃねーな。でもそれ信用しろはだいぶ無理あるんじゃねーか?」


「それはそうっすけど…」


「何よりもお前らはこいつが本物だってどうやって分かったんだ?」


 一部始終を説明。


「なるほどな。そりゃあ信憑性高いな」


(そんなに高い情報だったんですか????)


「まぁでもなぁ。でもイリウスの様子も変なんだよな…おし分かった。比べてみよう。とりあえず上がれよ」


「は、はい…あの!ケルトさん!」


「その声で俺を呼ぶんじゃねー。殺すぞ」


 いつも以上の本気の目で見られた。こんなに怖いと感じたことがないほどだ。僕を叱ってる時の殺気は全然弱い方なんだなと思った。

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