第67話 ーー能力者アイドル!? 前編ーー
[みんな見てくれてありがとー!!今日もライブに来てくれたみんなに特別な歌を送るねー!!]
僕はたまたま付いていたテレビを眺めていた。歌っているのはアイドルグループだ。最近どの番組もこのグループに熱中している。
「ん?アイドルに興味あんのか?」
「いや別に…この人達、能力者なのにみんなの目に付くことやるの凄いなって思いまして」
そう、普通のアイドルで僕の気が引ける訳がない。このアイドル達は能力者アイドルとして名を馳せているのだ。能力を使ったド派手な演出に加え、不思議な景色を見せるという豪快っぷり。人気の理由がわかる。
「名前が知れ渡ってる分、襲われる頻度も少なくなさそうです」
「そうだな〜。まぁ今まで居なかったしな。だが逆に良いかもな。ファンが居る分相手側にもリスクがある。俺だったらそんな危ない橋渡らねーな」
「確かに…神の後継ぎ争いって深いんですね〜」
能力者だということが世間に知れ渡ったからといって不利になるわけじゃない。基本的にはバレちゃダメだけど、ここまで知れ渡ると逆に安全なのかも。プライベートが怖いけど…
「そんで、お前はどいつがタイプだ?」
「え!?何のことですか…?」
「そのままだが…ずっと見てただろ?タイプの女でも居んのかな〜ってよ。俺はこのミナミっつー元気なやつが…」
「10歳の子供に聞くことじゃありません!!」
「いてっ」
軽く頭を叩きその場を後にした。アイドル以外にも活動してる能力者っているのかなと思った。調べてみた所いる様子はない。居たとしても名前なんて聞いたことも無い人だ。本当に珍しいんだな〜。
1週間後
「イリウス〜良いもん貰ってきたぞ〜」
急に呼ばれてリビングへと向かってみれば…
「じゃーん。ライブのチケットだ。2人分な」
「これって….この前テレビで見たあの能力者アイドルの人ですか?」
「そうだ!シャーガのやつが持ってたみたいでよ〜。あいつ用事出来たから行けないって言っててな。貰ってきた」
「乞食みたいなことやめて下さいよ…」
「仕方ねーだろ!マジでチケット買うとなると大変なんだからな!」
そんなこんなで僕達はライブに行くこととなった。
当日、トラさんに軽く会釈をして出発した。この時はまだ思いもしなかった。あんなことに巻き込まれるなんて。
「はぁはぁ…誰よ!着いてこないでちょうだい!」(プライベート姿がバレるなんて最悪…!)
ライブ会場に着いた時、僕はあまりの人の多さに驚愕した。そこら中が人でいっぱい。ケルトさんくらい大きい人も居るし、僕くらい小さい人もいる。世界の広さを感じた。
「イリウス、ほらおいで」
ケルトさんに腕を引っ張られて気付いたら腕の中だ。半分抱っこみたいな状態のまま並んでいた。ここからなら周りがよく見える。そんな時、あるものを発見する。
「ケルトさん、あの人すごい急いでるみたいです」
「ん?どの人だ?」
「ほら、あの木陰から出てきた長髪で帽子被ってサングラスしてる人。裏の方行ってます」
「ほんとだな。スタッフか何かなんじゃねーか?遅刻なんて中々だな〜」
僕は見逃さなかった。さっきの人に線が付いてることを。人の事情に首を突っ込むのは怒られるからしたくないが今回はやばい気がした。
「ケルトさん、僕ちょっと行ってきます」
「は?え?おい!まっ、邪魔だどきやがれ!おい!イリウス!」
僕はケルトさんの腕から降りて小さい身体を生かし細い人道をスラスラと進む。さっきの人が行った場所に真っ直ぐ向かうがその間、木陰に人影が見えた。線がその人にも繋がってるのを見て、話しかけてみる。
「そこの人!何やってるんですか!」
人影はビクッと動くが答えようとしない。
「そこの人です!聞いてるんです!あの逃げてた人と関係あるんですか?」
「…?警備員かと思ったが、ただの子供か。何の用だ」
声的に男の人。木が邪魔して姿は見えないが尻尾がある。獣人だ。
「そんなところに居る理由が知りたいんです。立ち入り禁止なのです」
「あぁ?あぁ、そうだね。すぐ出るよ」
「……」
神力が見えるから能力者なのは確か。でも悪い事をしてる決定的なところを見てないからどうにも出来ない。ひとまず後にしてさっきの人の所へ。裏に周ると1つの扉があって、さっき見えた人と警備員さんが言い合ってる様子。
「だから!何度言えばわかるの!?私は特別なの!早く入れてってば!」
声的に女の人だな…すごい荒げてる…でもどこかで聞いたことあるような?
「申し訳ありませんが、あなたの言ってることが本当ならば会員証を見せてもらわなくてはいけないんです…」
「だ!か!ら!落としたって言ってるでしょ!?」
「あ、あのぉ…」
「ん?誰よこの子」
「入れないんだったらこれ使って下さい」
僕はライブのチケットを女の人に差し出した。女の人は少し落ち着いた様子で口を開く。
「はぁ…良い?坊や。それはあなたの物なの。簡単に人に差し出しちゃ駄目よ」
「でも困ってるみたいです…入らなきゃダメな人なんでしょう?」
「そうだけど…分かった。すぐ戻ってくるから、ここで待ってて」
「?はい」
僕はチケットを渡して女の人は表から入って行った。その間に…
「はぁ!?チケット渡した!?」
「しょ、しょうがなかったんです!困ってたんです…」
「ったくお前はほんとに…まぁ良い。帰るぞ」
「え?いや、でも待ってろって…」
「んな言葉信じてんじゃねー。帰るぞ」
「いーやーでーすー!信じたいんですー!」
「んなこと言うな!」
僕があまりにもしつこい物だから少しだけ裏口で待ってくれることになった。しばらく経って…
「時間だ、帰るぞ」
「うぅ…」
そう帰ろうとした時、鉄のドアがギイっと開く。
「あら?人が増えてるじゃない。保護者さん?」
「ん?あぁそうだって…はぁ!?ミナミ!?」
「あら?私の事知ってるの?ってそりゃあそうよね。このライブに来てるんだもの。入って入って。会員証はこれよ」
「は、はい。確認致しました」
警備員さんは確認した後すぐに道を開けた。
「良いんですか?」
「ええもちろん。元々はあなたのチケットでしょ。VIP席が丁度空いてたのよ。案内してあげる」
「ま、マジか…アイドルと直接対面なんて初めてだな…」
「緊張…してるわけではないわね。あなたがた能力者でしょ?」
「分かってたんですか?」
「右手、厚めの手袋すれば何とかなるわよ。暑いけどね」
「俺に関しちゃ何で能力者って分かったんだ?」
「あなた、トライアングルのケルトでしょう?知ってるわよ。そのくらい」
「なるほどな。アイドルと言えど能力者か」
ここで初めて気付いた。僕らは今能力者として話していると。
「えっと…警戒しないんですか?」
「あははは。面白いわね。私の為に自分のチケットをあげるような子供とその親に警戒が居るかしら?良い子だと思ってるから警戒しないのよ。もちろん演技の可能性もあるけど、私は信じたいわ」
ミナミさんは笑いながらそう言った。プライベートのアイドルさんは舞台の上とはまるで別人だった。
「はい。私が案内出来るのはここまで。本当に助かったわ。名前を聞いても良いかしら?」
「僕イリウスです!10歳!」
「そう、イリウスね。絶対忘れないわ。今日のライブは是非とも楽しんで♡」
ちゅっと投げキッスをされたがいまいちよく分からない。ケルトさんはすごいワクワクしてたけど。




