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第66話 ーー猛暑の日ーー

「うえ〜ん暑いよー。何で僕が買い物なんかに…」


 時は少し遡り30分前。


「あちー…いきなり暑くなりすぎだろうがよー」


 扇風機の音が聞こえる中、机に突っ伏したケルトさんが喚いている。バクも暑そうにしているが、トラさんにうちわを仰がせている。


「それにしても本当に暑いのぅ。勘弁してほしいぞ」


「あちー。マジであちー…」


「そんなに言うなら滝行でもしてくれば良いだろ」


「朝にしたから昼間にはしたくねーんだよ。何より誰か来てもおかしくねーし」


 3人とも少しイライラしながら話している。


「うにゅ〜。お水飲みたいのです」


 そんな中僕はリビングに行ってしまったのだ。


「お、イリウス。お前暇だろ?買い物行ってくんね?」


「えー嫌ですよ。暑いですもん」


「お前子供だろ?子供は元気なもんだろーがよー。俺らは見ての通り?忙しいし?」


「忙しそうには見えないんですが…暑いなら冷房付ければ良いじゃないですか。あの機械は飾りかなんかなんですか!」


 無理矢理買い物に行かされそうな雰囲気だったから少し強めに言い返すがケルトさんには効いていない様子だ。そんなケルトさんは冷房のリモコンを手に取る。


「見てろよ?」


 ケルトさんがそう言いリモコンをピッと押すと冷房はそのまま動き出す。何だ付くじゃんと思った途端、リモコンがケルトさんの手から離れて勝手に動き出す。すぐさま冷房のスイッチが切られて、


「いてっ」


 ケルトさんの頭にリモコンが飛んで行く。っと普通の人は見えるだろう。僕の目にはどこからともなく神力が湧き出て操作されてるようにしか見えなかった。


「えっとー…何ですか?これ」


「ご主人様の神の仕業だよ。あの神、『世界を壊す行為は許さなーい』とか抜かしやがって」


「我のせいにしないで欲しいがの…冷房くらいは許可して欲しいがのぉ…」


「獣人は特に暑さの影響を受けやすいんだ。だから買い物頼んだぞ。買ってくるもんはリスト見ればわかるからなー」


 時は戻って現在へ。


「こんな暑い中何買ってこいって言うんですか…え?……えぇ!?何ですかこの晩飯のおかずになるものって!ふざけるのも大概して欲しいですよ!」


 あまりに適当な買い物リストに久しぶりに怒ったが解決するわけじゃないから素直に買ってこう…そう思った時、ある案が思い浮かんだ。


「あれ?僕の能力って歪みを操るんだよな…もしかして…!」


 僕はすぐに買い物を終わらせた。


「あーあちー。イリウス大丈夫かなー。やっぱ俺行った方が良かったよな…」


「今更後悔か?みっともないの」


「仕方ないじゃないですか!暑くて動けないと言えど、今日も筋トレはするんですから。そんなら買い物ぐらい屁でもなかったなーって」


「たっだいっまでーす!」


「お、帰ってきたみたいだぞ」


「変なもん買ってきてねーと良いけど…」


 僕はすぐにリビングへと行き、ケルトさんに買い物袋を渡す。


「ん?刺身?腐ってんじゃ…まだ冷たいぞ?てか、肉類も全部冷たい」


「あ、僕用事を思い出したので部屋戻ってまーす」


 すたこらさっさと部屋に戻った。これがバレたら一貫の終わりだ…


「あいつ、アイスまで買ってきてやがる」


「随分と気が利くのだな。こんな暑い時にアイスとは。イリウスの事を褒めてやらんとの」


「それはそうなんですが…俺の指定したスーパー歩いて20分かかるんですけどね」


「つまり?」


「まだ冷たいっておかしくねーか?ドライアイスも入ってねーぞ?」


「ふーむ…」


 ここで既にお気付きかと思うが念のため説明しておこう。僕の能力『歪みを操る能力』は、ありとあらゆるものを歪ませることが出来る。それは概念だろうと可能なのだ。使用例としては距離を歪ませてテレポートしたり等だぞ!今回は自身の周りの温度を歪ませることで自信に行きつく空気を低温にしているのだ!常に使っているので神力の消費はとても多い。


(でも、僕の周りと言っても最小限だから楽に維持が出来る。4人分なんて言ったらとんでもない神力の消費だからね。可哀想だけどケルトさん達には我慢してもら…)


「イリウス!」


「ふぁい!?」


 急に部屋のドアを開けられたことにより、驚いて変な声を出してしまった。


「ど、どうかしましたか?」


「うーん。いや、何でもねー。隠れて冷房でも使ってんのかと思ったが…そうでもねーみたいだな」


「どうしてそんなことを?」


「いやーお前変に元気だし、後は…まぁ何でもねーよ」


 何か怪しげなケルトさんだがとりあえず難は逃れたということで。しばらく経つと晩ご飯の時間になった。今日の晩ご飯はカレーだ。パクパクと食べているとケルトさんが話し始める。


「なぁイリウス。お前の能力って概念とかでも行けるんだよな?」


「へ?ま、まぁ…」


「それってよぉ、涼しくなることも出来るんじゃねーか?」


「え、えっと…それ!試そうとしたんですけど難しすぎて辞めたんですよ〜えへへー」(GOOD!ナイス言い訳!我ながら天才!)


「でも出来るんだよな?」


「え?」


 言い訳出来たと思ったのにすぐに追い詰められそうな雰囲気。


「まぁまぁ落ち着けよ。俺ら全っっっ然気にしないけどよぉ。もし出来たりしてんだったら素直に言った方が良いぞ?」


「で、出来るわけない…じゃ…ないですか…」


 バレそうでついつい目を逸らしてしまったが平気だろうか…


「イリウス、我々からも少し助言だ。我もトラもケルトも、暑すぎてイライラしておるでの。もちろんお主に危害を加えようなんて気はないが…怒った我々は少々怖いぞ?」


「そうだぞイリウス。俺が怒ってる所はまだ見せたことがなかったか。まぁ俺からも一つ言っておくと…俺ら、みんな嘘は嫌いだぞ?」


 何故かみんなして神器を手に持って近付いてくる。スプーンを落としてしまったが拾ってる余裕なんて無い。圧がすごい。僕は涙目になりながら壁に追いやられる。


「え、えっと…そのぉ、分かりましたから、あの、えっと…」


「「「どうなんだ?イリウス」」」


「あのぉ………そのぉ………」




「ふぃー快適快適。やっぱ便利だな!その能力!」


「あんなに暑かったのが嘘みたいだのぉ」


「本当に涼しいな!流石は生物を生みし神の憑き人だ!」


「うぅ…僕の神力が…」


 結局みんなの分もやることとなった。


「でも流石にずっとは無理ですよ!」


「えー何でだよ。理由あんのか?神力以外で」


「単純な話です。僕の場合だと、自分の動きに合わせて範囲を変えることが出来ます。思考が読める…と言うか僕が考えている通りの動きをさせれば良いだけですから。でもみなさんは違います。いつ歩き出すのか、左足からか右足からか、腕はどう動かすのか、思考通りに動かないので範囲から出ちゃいます」


 僕は軽く手を振る。涼しさはそのままだ。僕の思考と連動してるから腕を動かせば涼しくなる範囲もその通り動く。でもケルトさん達の思考は読めないから範囲が変わってしまう。特に僕の見えない範囲だと神力を無駄にするだけだ。


「んじゃあこの部屋全体の温度を変えらんねーのか?」


「出来ないことは…ないですけど。神力の消費がとてつもないことに…」


「冷房みたいに密封すれば一度冷やすだけでしばらく持つだろ?」


「確かに…じゃあそうしますか…」


 結局負担的には一緒だから変わらない…ここでやっぱり辞めますなんて言って辞めたらどんな事をされるか知りたくもないのでこれからは僕が冷房役だ。


「んまぁ涼しくしてもらってる分、お前が普段神力を使わなくて良いよう頑張るからよ。頼むぜ!」


「と、特別ですからね!特別!」


 ケルトさんになでなでされて潔く受け入れてしまった僕だったのである。

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