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第62話 ーーケルトさんの秘密ーー

「じーーーー」


「………かれこれ20分だぞ?そんなに見つめてどうしたんだよ…」


 僕はいつも通りの変わらない日々に思ったことがあった。そう、ケルトさんについて全く知らないのだ。最近だと、犬じゃなくて狼だとか警察さんと仲悪くて逮捕されないとか頭蓋骨集めが趣味だとかしか知らない。それに比べてケルトさんは僕についてよく知っている。こんなの不公平だ。そう思った僕は観察してみることに。


(コーヒーをいっぱい飲んでる…ケルトさんはコーヒーが好きなのかな?それから新聞とかニュースとかで情報収集してるな…何でだろ?)


(あー…暇だ)


 お互いに沈黙した時間を過ごしている中、ケルトさんはパッと思いついたように立ち上がる。


「イリウス、買い物行かねーか?」


「うーん…行きます!」


 一緒に買い物へ行くのは珍しくない。いつも通りケルトさんの隣を歩いて商品を見て回る。商店街ではケルトさんはいろんな人と話している。何も変わらない。そんなこんなで何も分からず晩御飯…


「…ねぇバク」


「何だ?今日は様子が変に見えるがの〜」


「ケルトさんに秘密って無いの?」


「お前な〜。人の秘密探るなんてしちゃいけねーんだぞ?」


 ケルトさんは呆れたように言う。


「でも…ケルトさんは僕の事なんでも知ってるじゃないですか!ずるいです!」


「ずるいって…親なんだからお前のこと知って当然だろ?それに俺には隠すことなんて一切無いぞ」


「それは本当かの?」


「ええ、本当ですとも」


「ならば、過去について語ってみてはどうだ?」


「え!?ケルトさんの過去!?知りたいです!」


 ケルトさんは何故か黙っている。気のせいかいつもより暗い。


「…それは…出来ねー。したくないんじゃねー。出来ねーんだ」


「…?どうしてですか?」


「世の中にはな、知らない方が良い事ってのもあるんだぜ」


 ケルトさんは無理に笑って僕の頭をポンポンする。僕は理解出来なかったが、他にもあるんじゃないかと思いあるゲームを提案した。


「じゃーん!秘密暴露ゲーム!」


「お前…人の話聞いてたか?」


「大丈夫です!言いたくない秘密は、別の秘密で上書きしちゃえば良いんですよ!」


「ふーむ。面白そうではあるな」


「俺は反対ですが…主も言いたくない秘密があるんじゃ?」


 2人はあまり理解してなさそうだ。そんなに説明下手かな…


「イリウスの説明を理解しておらんかったのか?簡単に言えば、言いたくない秘密があるなら別の秘密を言えばいいのだ。それにもし一つも言えないようならば勝てば良い。まぁトランプだから運次第だがの」


「そうですよ!それに良い機会じゃないですか。みんながみんなの事を知れる。3人だけじゃ無かったんじゃないですか?」


「それは…そうだが」


「じゃあ始めますよ!」


 みんな席に着き、トランプを配った。

 ルールは簡単。まず、それぞれが手札を確認し、裏の状態で1枚取り出す。その後、ジャンケンで決めた順番でコインをトスする。そしたら、次にコインをトスする人がそのコインが裏か表か選ぶ。もし当たっていたらその人はトランプの数字が大きい方が勝ちか小さい方が勝ちかを決めれる。もしハズレていたらその次の人が大きいか少ないかを選べる。ケルトさんとトラさんの動体視力は異次元だから箱を用意してコインが途中で見えないようにしたよ。

 このゲームの面白い所は最下位にならなければ良いと言うこと。勝率は2分の1より上だ。


「じゃあ僕はこれで!」


「……」


「みんな適当ですね…」


「当たり前だ。負けなきゃ良いんだろ?4人中3人が勝つんだ。負けることなんぞ早々ねーよ」


「分かんないですよ?じゃあトスするから当ててね、バク」


「ほいほい。裏だ」


 僕がトスするとバクが予想する。結果は…


「裏だ!どっちにする?」


「そうだの〜…大きい方で頼む」


「じゃあカードオープンだな!」


 みんなカードを裏返す。僕の数字は9。勝てはするだろう。


「あ、トラの負けだの」


「何故こういう時に負けるんだ…。ゴホン!秘密か、そうだな秘密な…」


 トラさんは悩んでいる様子だがすぐに思いついた顔になる。


「そういえば今まで黙っていたんだが…主の後ろ、何か居ますよ」


「え?どういう事だ?怖いんだが…」


「悪霊だと思うので早めに祓っておいた方が良いかと」


「何で黙っておったんだ!」(夜寝れなくなりそうぞ…)


「いやー言ったら夜寝れなくなるかと…」


「…こんなんで良いのか?イリウス」


「まぁ秘密は秘密ですから。期待してたのとは少し違いますけど…」


 そこからゲームも進んで行った。


「えっと…僕の秘密は…実は…最近…太っちゃって…」


「我の秘密か〜。そうよの〜、最近間食してしまっていてな。はっはっは」


「また俺か…そうだな。俺も…もっとイリウスの世話をしたい…とかか?」


 そんなこんなでついにこの時が来た。


「お、負けちまったな。秘密か」


「ついに最終ゲームで来た…どんな秘密が!?」


「……実は俺」


 ドキドキ。


「別の世界に移住したいって思ってる」


「え?」


「な、何を言っておる!ふざけているのか!」


 いきなりの発言に場が乱れる。当たり前だ。ケルトさんはこれでも神の憑き人。この世界から離れるという事は神から離れるということだ。


「ふざけてませんよ。イリウスにこの世界は危険すぎる。だからこそ…別の世界で平和に暮らせたら、1番良いんじゃないかって…」


「ケルトさんの本心を聞きたいんです。僕の事じゃなくて」


「…!俺の本心?だからお前と暮らしたいって…」


「それならローディアでも良いじゃないですか!ケルトさんはこの世界が嫌いなんですか?」


「いや、どちらかと言うと好きだが…」


「ならこの世界で良いじゃないですか…」


 ケルトさんの言いたいことが分からない訳じゃない。僕にも考えがあったから少し熱くなってしまった。


「負けてないですけど、言ってなかったこと言います。僕には考えがありました。僕の寿命は短くて、ケルトさん達の寿命は長いです。だからこそ、みんなで神になれば、ずっと一緒に居れるじゃないですか!ケルトさんはまだ僕と80年とかしか居ないと考えてるんでしょうけど僕はそれじゃあ満足出来ない!」


 みんな瞳の色を変えた。同じだったのだろうか。僕はもっと一緒に居たいのに…


「…そうだな!そうだったぜ。俺が諦めてどうすんだってな。お前は神になっても俺の子だ。ずっと一緒だ。決めつけて悪かった」


「中々に熱弁だったの。我にも刺さったぞ。お主と居られるのは我の人生のほんの一部だと思っていたが…もしかしたら一部どころではなくなるかもの」


「そうですね。神になった後は離れ離れだと思っていましたが、一緒に居れるんですね」


「みんなでぜっっったい神になりましょうね!」


 僕は手を差し出し、みんながそれに合わせる。


「俺らはいつまでも家族だ!」


「「「「おー!!!」」」」


 秘密とかじゃなくなっちゃったけど、この夢が叶うと良いな。


「それとイリウス。太ったんだったな?明日からダイエットだぞ」


「そんな〜……」

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