第61話 ーー守るためにーー
「お前じゃ荷が重そうだし仕方ないな」
「ケルト…さん…!」
最悪なタイミングだ。僕は意識しなきゃいけなかった。僕が上に特大のビームを打った時は僕がピンチな時だって。そう約束していたことを。
「ケルトさん違うんです!この子達は悪くありません!」
「そうか?でも能力者だぜ?」
「でも…まだ子供です…」
「子供だろうが大人だろうが能力者は能力者だ。今は平気でも後に平気じゃなくなるかもしれねー。今お前を殺せる力が無くても後でお前を殺すかもしれねー。能力者である以上、いつ殺されるかは運次第だな」
「なっ!ダメです!流石に殺すなんて酷いです…」
「そうか?それが自然の摂理だろ?命はみんな平等なんだろ?」
「そんな…」
まさかこんなことになるなんて。ケルトさんは淡々と話しているが、僕の気持ちを分かっているのだろうか?
「だ、誰だよ。その犬のおっさん…」
「ったく。俺はおっさんじゃねーし犬でもねーよ。ま、これから死ぬやつに言っても無駄か」
ケルトさんはゆっくり子供達に近づく。
「……げて…」
「ん?まだ言いてーことが…」
「逃げて!」
仕方がない。そう振り切って僕はケルトさんに攻撃をする。いくつも放ったビームはケルトさんへと飛んで行くが楽々とかわされる。
「おうおう、俺とやる気か?そんなにあいつらが大事かよ」
「はい!大事な未来だから守るんです!君達も早く逃げて!」
少年達は神力切れを起こしつつも時間が経っているので歩くくらいは戻ってるはず。リーダーの子が他2人を起こそうと頑張っている。それまで足止めしなきゃ…
「だがなぁ…お前がそっちに居てどうすんだ?俺のがあいつらに近くてどうすんだよ馬鹿が!」
ケルトさんは僕の攻撃を無視して少年達にまっすぐ向かう。その速さで行かれたら僕でも間に合わない。ケルトさんとの距離が遠すぎる。
(なら、近付ければいい!)
僕は距離の歪みを発動させてケルトさんの位置を元いた場所まで戻した。これで攻撃が届く!
「お前…他人までテレポートさせれるようになったのか!すげーじゃねーか!でも…それなら初めからすれば良い。テレポートさせ続ければ時間稼ぎは容易いからな」
(気付かれた…!僕のテレポート、無機物とかならそこまで神力は消費しない。でも生物となるなら話は別!大きさが大きくなればなるほど神力の消費が激しくなる!僕くらいなら問題ないけど…ケルトさんの大きさなら使えて後4回…どうする…!?)
僕は悩む。こうして必死に考えてる間も僕はケルトさんに神器を叩き込む。ケルトさんも神器を持ってそれを流し続けている。あの子達はまだ逃げれてない!
「す、すげー。あんな戦いはじめて見たよ…能力者ってみんなああなのか?」
「わ、わかんないけど…お兄さん…がんばって」
「早く立たなきゃ…」
「おうおう正義のヒーロー気取りか?面白いね〜」
僕の体力も限界が近い。さっきから本気で行ってるけどケルトさんにとっては遊んでるも同然なんだ。
「俺にも何かできることがあれば…!」
「おらおら!もう終わりか!速度が落ちてんぞ!」
「うぐっ!…まだ、負けない!」
ちょくちょくとケルトさんからも攻撃が来るようになった。攻撃と言っても刀で切ったりせずに軽く殴ったりしてくるくらいだが、それでも臆してしまう。どうすれば…
「お兄さんどいて!くらえ!」
リーダーの子が残りのロケット弾を撃ちケルトさんに当てる。多分残りの一つだろう。その子のフワフワが見えない。僕は何とかテレポートで難を逃れたが多少怪我してくれてると良いが…
「ぷはー。中々良い威力じゃねーか。でも予備動作が長い、速度が遅い、神力の消費が激しい。このデメリットと比較すると全然足りねー。もっとビル1個破壊するくらいじゃねーと釣り合わねーデメリットだ」
「そんな…怪我一つしてない…」
少年は神力切れで倒れてしまった。
(僕は結局…誰も守れなかった…子供1人も…)
「ほんと馬鹿なやつなんだな。俺の攻撃なんかより逃げれば良かったのによ」
ケルトさんは少年を軽々と片手で持ち上げる。まさに殺される瞬間だ。
「ダメです!殺しちゃダメです!そんなの辞めてくださ…」
「でもよぉ。俺は好きだぜ、そういうやつ。うちにも居んだよ。無謀な勝負ばっかして、言うこと聞かずに危ない目にあって誰かを守ろうとする、ほんとに馬鹿な野郎が。でも俺はそんな馬鹿野郎を心から愛してる。そいつが大事なもんを俺が壊してたまるか」
「ケルトさん…」
ケルトさんは少年を下ろしてぱっぱと埃を払う。すぐに僕の方に来てこう言った。
「2度と誰も失いたくないだろ?」
「…もちろんです!」
ケルトさんはニヤッと笑って僕を持ち上げた。
「んじゃ!もっと強くならなきゃな!」
「…はい!!」
そんな事で何とか子供達は殺されずに済んだ。本当に良かった…
「あ、あの。俺たくみって言います。能力は、さっき見たロケットランチャーってやつを使います」
「僕はりょうやです。能力は相手の能力を消す能力?なのかな…」
「俺はなかべです。能力は神力で何でも生み出す能力っす!」
「能力を消す能力か…随分と珍しい能力者が居たもんだな。何でも生み出すだ?」
「え、えっと…その…す、すいません…何でもって言っても自分の神力に見合ったものしか生み出せません…」
「さっきだと盾を生み出してたよね。すぐ神力切れ起こしてたけど…」
なかべ君は恥ずかしそうだ。強がってたんだろう。
「まぁそりゃあ良いや。何でイリウスがこいつらと関わることになったんだ?」
「え?えっとぉ…」
「俺らが人を襲ってた所、このお兄さんが止めに来てくれたんです」
(え、そんな正直に言っちゃう?)
僕は半分驚きながらも嘘は言っていないので口出し出来なかった。
「ふーん。お前らマジの悪役ってことか?やっぱ殺しといた方が…」
「待ってください!この子達…たくみ君のお母さんが病気みたいで…その手術にお金がひつようみたいなんです!」
「へーほんとか?」
「ほんとです…でも人を襲ったことは悪いと思ってます。俺らにはこの方法しか…」
ケルトさんが耳をぴくぴく動かしている。何か聞いているんだろう。
(心音の変化は無し…か。嘘はついてねーな)
「ほら、こんだけありゃ足りんだろ」
ケルトさんはポケットに手を突っ込んだと思ったら札束が出てきた。何ローあるんだろ…
「え?え、え、良いんですか?犬のおっさん」
「おっさんじゃねーし犬でもねーっつーの。それでてめーの母ちゃんが助かるんなら構わねーよ。残りの金はお前らが金を取ってきたやつらへの償いに使え」
「やった…やったじゃんたっくん!これで助けられるよ!」
「う、うん…ほ、本当に良いんだ…ですか?」
「良いっつってんだろ?要らないなら返してもらうけどな」
「い、要る!要るよ!あ、お兄さん…その…」
少年たちはすごく嬉しそうにしていたしこれで全て終わったと思ったが、少年は僕に話しかけてきた。
「俺らの師匠になってください!」
「え?………えー!?!?!?」
「俺ら、能力者だけど知らないことたくさんあるから、師匠に教えてもらいたいんです!」
「え、えー…」
「良いじゃねーか。教えてやれよ」
「何でケルトさんがそっち側なんですか!」
「師匠!携帯持ってますか?連絡先こうかんしてほしいです!」
「もう…分かったよ…」
こうして何故か師匠となることになった。




