第60話 ーー小さい能力者ーー
歪みとは
空間、距離、物…実体のある物から概念まで全てに関与できるもの。これを操れるとなればどこからどう見ても最強である。しかし、強大な力ほど操る事が困難になるものだ。実際に歪みを操る能力には先を考える力やいくつもの予測を必要とする場合が多い。それが出来るやつなんてこの世界には、1人しか居ない。
「ふんふふんふふーん♪」
今日も今日とて散歩をしている。良い天気で暑い。でも子供特有の元気でどうにかなっている。そんな時ある声が聞こえた。
「おい!かねだせよ!もってんだろ!これが見えないか!」
「ひ、ひぃぃ」
チラっと路地裏の方を確認してみると小学生の低学年くらいの人間の子供3人組がか弱そうな男性を脅している。
(あれって…どういう状況?あの子供が脅してる道具って………銃!?しかもロケットランチャーに見えるんだけど…)
何かやばそうな雰囲気だ。どうにかしなきゃと思って僕は咄嗟に前に出る。
「待ちなさい!そんなことしちゃダメだよ!」
「だ、だれだよ!こ、これが目に入らないのか!」
その3人組のリーダーみたいな子が自身の五芒星を見せる為に腕をこっちに向ける。
「その紋章…人に軽々しく見せて良い物じゃない!夏だけど上手く隠さないとダメだよ!」
「う、うるさいうるさい!もういい!お前を倒す!」
「ちょっと、それ打っちゃったらあの人死んじゃうんじゃ…」
「構うもんか!くらえ!」
ロケットランチャーをこっちに向けて発射してきた。発射してくるとは思わなかったがすぐに歪みを使って対処する。説明していなかったが、空間を歪ませて攻撃を別方向に飛ばすにはその攻撃と同量の神力を歪みに込める必要があるのだ。普通の人はこれを制御するのに苦労するだろう。心理戦のような物だし。でも僕には神力が見える。相手の飛ばしてきたロケットに舞うフワフワの量が!
「上に飛んだ!?」
「ど、どうなってんだよたっくん!」
「俺はたしかにあいつに打ったはず…」
「少し考えれば分かるでしょ。僕も能力者だよ」
僕はパッと右手を見せる。その子達は驚いている様子だ。どうやら能力者と対峙するのは初めてらしい。僕はそのうちに襲われていた人を逃した。
「さて、こんな事しちゃいけないって分からないの?人からお金を取る行為は犯罪だよ」
「そんなのわかってるよ!わかってるけど…」
「たっくん…あいつを倒そう」
「え?」
「あいつを倒して、口封じするんだ!」
「確かに!りょうや冴えてんな!」
「でも…出来るかな…」
「出来るって!俺らが力を合わせれば最強だろ!」
じっくり話を聞いていたが、僕と戦うらしい。さっきのを見た感じ逃げた方が良いと思ったけど…
「分かった。じゃあ約束しよう?僕が勝ったら2度とあんなことしないこと。君達が勝ったら僕は誰にも喋らないし君達の邪魔もしない。どうだい?」
3人はこそこそと話し合っている。
「分かった!その約束受けた!お前たち、行くぞ!」
最初はさっき見た通り、ロケットランチャーでロケット弾を飛ばしてくる。
(さっきので学ばなかったのかな?)
僕はさっきやった通り上に飛ばそうとする。だが、もう1人の子供が何かするのが見えた。それを見た途端、僕の目の前にある歪みが消えた。
「…?能力が消えた?」
ロケット弾は爆発し、辺りは煙に包まれる。
「やった!倒したんじゃないか?」
「いえーい!俺らやっぱ最強!よくやったよりょうや!」
「いやー僕は全然」
「俺の役目無かったじゃん!攻撃してくれば役割あったのにー」
3人は嬉しそうに会話している。
「えーっと、喜んでる所悪いけど。まだ終わってないよ?」
僕が煙からゆっくりと現れる様を見て、3人の表情は固まる。
「なんで居るんだよ!直撃だろ?」
「僕の能力を消すのがもう少し遅ければそうだったかもね。神力で壁を作れば、爆発なんて届かない」
「お、おい!どうすんだよ!」
「とりあえず負けるわけには行かないからこっちからも行くよ」
僕はビームを打つ。威嚇射撃のようなものを続けて、相手が降参するのを待つつもりだったが、
「任せて!出でよ盾!」
3人組の1人が盾を召喚した。見た感じ神器じゃなさそうだけど。僕は盾に向かって何度も射撃した。次第に盾は僕の攻撃に耐えられなくなり穴が開く。
「うわぁ!」
盾を召喚した子は僕の攻撃で足を火傷した。それにしても動きが鈍くなっている。神力切れみたいだ。
「僕に任せてみんなは逃げて!」
僕の能力を消した子は2人の前に出る。また僕のビームが消える。でもこれについては聞いた事があった。
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「能力を消す能力者が居てよ〜。ま、俺らにとっちゃ何も効果ねーんだけどな。でもご主人様がだいぶ苦労してたんだよな〜。え?能力の詳細?多分だが…相手の神力量と同じ量の神力で相殺してるってことだと俺は思ってるぞ」
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(なら、数で勝負だね)
僕はビームの量を増やし、そのビームはどんどん消えて行く。だが、少しも経たない内にビームはその子に届きそうになる。
「う、うわぁ…もう、無理…」
「くそ!なんなんだ!これでも喰らえ!」
倒れそうになっている子の後ろで、もう一度ロケット弾を打った。諦めの悪さに僕は少しイラッと来てしまった。
「何で分からないんだ!実力差ははっきりしてる!逃げれば良いだろ!自分から死にに行くようなことするなんて、、、」
僕は真上に特大のビームを打ってロケット弾を爆発させた後そう言った。でも、どこか思い当たる節があった。これって僕も同じ事してたんじゃないかって。
「もう諦めて。僕の勝ちだ。今のビームを見たでしょ?まだあれを数10発打てる」
「やだ…諦められないんだ!」
「何でそこまで…僕じゃなかったら死んじゃうかもしれないんだよ!能力者同士の戦いは常に死と隣り合わせなんだ!勝てないと思ったら逃げるのが基本なんだ!それなのになんで…」
「………母ちゃんが…病気なんだ…」
「…え?」
必死な顔で、ロケットの子は話し出す。
「母ちゃんの病気を治すにはさ、金が必要なんだよ…でも俺、金なんてもってないからさ…だから集めなきゃいけないんだよ…」
3人組はみんな顔を俯かせている。ロケットの子なんて泣き出してしまった。
「わるいことしてるなんて分かってるよ!でも、でもさ…これで助けられるんだったら…俺なんでもするよ!お兄さん…お願い…今回は見逃して!」
「ちょ、ちょっと!土下座なんてされても…」
「お願いします!許してください!」
「りょうや…お前…」
「償いは絶対にします!お願いします!」
「なかべ…お前まで…」
子供3人に土下座させている状況…なんか僕が悪者みたいになってる…
「分かった分かった。事情は分かったから頭上げて。悪いけど、それに関しては僕はどうすることも出来ない。見ての通り僕も子供だし、あくまで君たちの犯罪行為を止めるところまでだけだ」
「…ごめんなさい…でも!」
「でもじゃない。もし君達が襲ったのが能力者だったらどうするの?みんな殺されちゃうよ?」
「それは…」
「危ないから辞めなさい。ケルトさんだったらどうするんだ…ろ…」
僕はケルトさんの名前を出した時に思い出した。
「あれ?僕さっき真上に大きなビーム出した?」
「え?うん…すごい強そうなビーム出してた…」
「嘘…やばい!3人とも今すぐ逃げて!じゃなきゃ来ちゃう!勘違いしちゃう!」
僕は急いで立ち上がって3人の所へ行こうとする。
「おーい助太刀しに…ってほとんど神力切れじゃねーか。ま、お前に子供を殺させるのは流石に早いしな。任せとけ」
来てしまった…




