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第56話 ーー勧誘と将来ーー

「どうしたー?浮かない顔してんじゃん」


 俺がケルトを取り逃がしてから数十年。あいつは刑務所で俺らの仲間を大量に殺した。


「…別に浮かなくない」


「嘘つけ〜。みりゃあ分かんだよ。付き合い長いっしょ?」


「それはそうだが…」


「俺の占いが何かした?」


 こいつを一言で説明するなら陽気なコーギーと言ったところか。俺もこいつもローディアで生まれ育った幼馴染だ。2人で警察になって、能力者になって…


「いいや、お前の占いはよく当たるぞ」


「そっか。そんなら良かった」


 こいつは俺が出会うキーとなり得る人物の似顔絵を描くことが出来る。ほとんどの場合は俺が逮捕するやつの似顔絵だが、この前は違った。こいつの占いも80%でしか当たらないから結局逮捕系なのかもしれないがな。


「俺が描いた中にさ、あのケルトの主が居たっしょ?確かお前が前捕まえてきた能力者の変態オヤジの次。もう見つかったの?」


 相変わらずこいつの記憶力は凄まじい。自分が描いた物なら一つも忘れてないんだろう。


「……あぁ。だが、あいつは違うみたいだ」


「ん?違うって?」


「あいつは…あの子はケルトの主人じゃない。ケルトの息子だ」


「は?」


 こいつは不思議な顔をした後、大笑いしだした。


「…!いつまで笑ってる!」


「イヒヒ…だって、ケルトの素性とか全部調べたっしょ!お前がストーカーしてまで暴いたのに…ぶっふ、あはははは!」


「ストーカーとは人聞きが悪い!俺はあいつを全員で逮捕出来るよう最善の策を…」


「はいはい…ふー。分かった分かった。お前が言うくらいだし嘘は無いんだろうな。でも諦めろ。上層部からの命令でもあるんだぞ、ケルトとは関わるなって。あの時死んだ仲間は確かに惜しいけど…あいつらの分まで捕まえるのが俺らが出来る事だ」


「……だが…」


「俺は何度でもお前を止めるよ。許したくない気持ちは分かるけどさ。でもほら、ケルトが言ってた社会の掃除って言うのもあながち間違いじゃなかったっしょ?あいつが襲うのはいつも喧嘩を売るようなチンピラとか暴力団とかだけ」


 こいつはいつも正しい事を言う。決して間違っていないし、否定が出来ない。


「それはそうだが…」


「逆に考えてみようぜ。俺らの仕事が減るってさ。俺らは表から、あいつは裏から犯罪者を減らしてけばその内お前の言う平和が訪れるって」


「…!そうか!そういうことか!よし分かった!少し行ってくる!」


「え?ちょちょちょどこ行くの!?おーい!って行っちゃった…変なのに首突っ込まないと良いけど…」



「ふんふふんふふーん!出来ました!」


 僕はお得意の歪みを使って裁縫にチャレンジ。え?何で歪みが関係してるのかって?………僕もよく分かんない!でも歪ませて裁縫すると何かやりやすい。今はケルトさんの人形を作ってる。

 その後、綿が全然足りなくて途方に暮れた。突然鳴るピーンポーンとの音に暇だった僕は行ってみる。ケルトさんはインターホンを見て苦い顔をしている。


「どうかしたんですか?ケルトさん」


「あ?あぁ。これ見てくれよ」


 僕が抱っこみたいに持ち上げられて確認すると、ドアの前に居たのは警察のドンベルさんだ。


「いや住所まで突き止めるか普通」


「まぁ凶悪犯さんですからね。いてっ!」


 軽く頭を叩かれた。ケルトさんは面倒そうにドアを開けに行く。


「何の用だドンベル。また逮捕とか言いに来たのか?」


「違う!その…これ、昨日の詫びだ。あの子を間違えて逮捕する所だったからな」


 ドンベルさんは菓子折りを持ってきていた。スーツ姿で別人みたいだ。


「よし、用はねーな。じゃあ閉めるぞ」


「ま、待て待て待て!用があるんだ!その、あの子にも…」


(僕ぅ……)


 出来れば関わりたくなかったが仕方なく。ケルトさんは長話になりそうなのを察知してドンベルさんを中に入れる。


「ほれ、粗茶だ。話って何だ?」


「話というのはだな。これだ」


 持っていたカバンの中から取り出したのは一つの紙だ。


「えーっとなになに?一緒に警察署で働きませんか?悪い人捕まえ放題…何ですかこの物騒な広告は」


「簡潔に言うと、勧誘だ。我々と共に警察官になってみないか?」


「え、10歳に何言ってるんですかこの人…」


「ほんとだぞドンベル。いくら人手不足でも10歳を雇う事ねーだろ」


「うちは10歳とかそう言う年齢制限は無いんだ!それなりに仕事が出来れば合格出来るし、ある程度上層の人間の推薦なら試験を全て免除出来る!何よりもほら!能力者なら特別に、筆記や法律の試験は無く、体力測定や能力診断だけで合格出来るんだ!君の場合だとケルトの修行もしてるんだろう?ならば体力測定でも問題ないだろう!そして何よりも給料が段違いなんだ!能力者になっているかなっていないかでは500万ローも差があるんだぞ!俺は正義感の強く、人々に優しい君みたいな子に警察になってほしいんだ!面倒なデータ入力とかが無くてひたすらにこの世界に蔓延る犯人を捕まえるだけで良い!ケルトもそうだ!お前は戦うのが好きなんだろ?ならば望んだ通りに叶うぞ!警察になれば正義の為に戦えて人の役にも立つ!最高じゃないか!という事でどうだい2人とも!」

(※要約 給料良いし待遇良いから入らないか?)


 完全に頭がパンクした。僕が何も言えない時にケルトさんはバサっと言う。


「えーっと?つまりは入って欲しいって事だな?」


「ん?まぁ結論で言うと…そうだな」


「それは断るぜ」


「な、何でだ!悪い条件じゃないはずだ!」


「悪いとか悪くないとかじゃなくてな、純粋に興味がねーんだよ。元々縛られんの嫌いだし、だから仕事してねーし。イリウスに関しても、危険な目に合わすわけにはいかねー。刑務所壊したのは悪かったから、諦めてくれ」


「そう…か」


「人の助けになるのはすごく嬉しいですし、楽しいです」


「…なら!」


「でも、僕はまだ子供です。将来とか考えるのも少し早いくらいです。だからまだ決められません。もし、もうちょっと大きくなって、また警察さんに興味が出たら、声をかけても良いですか?」


「もちろん!いつでも待っているよ!」


 ドンベルさんは諦めが付いたようで帰っていった。


「別に甘やかさなくて良かったんだぞ」


「甘やかしたつもりはありませんよ。本当に興味が出るかもしれないじゃないですか」


「へ、俺の子なのにか?」


「ケルトさんの子なのにです!」


「そんじゃ、楽しみにしとくぜ。お前の夢がどうなるのか」


 今日は色々大変な日ですが、ドンベルさんもケルトさんも喧嘩しないで良かった。もっと仲良くなると良いな。

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