第53話 ーー警察ーー
「じゃあ行ってきまーす!」
「おう!気を付けて行ってこいよな!」
今日も今日とて僕は買い物に行く。ケルトさんが買い忘れた物の買い物だ。いつもと違う場所だけどもう迷わない!
(迷った…)
人混みに巻き込まれて気付いたらこんな所。人がたくさんいるのは変わらないけど商店街とかそんな感じじゃなさそうだ。とにかく歩いてみるが目的地からどんどん離れていくのを感じ取った。そんな時、
「あら?あれイリウス君じゃない?おーいイリウスくーん!ほらやっぱり!バクじゃないじゃない!」
聞いたことのある声に釣られてそっちへと走った。そこに居たのはバクが率いるチームのメンバー、メーデさんだ。一緒にいるのは同じくメンバーのライさんだ。
「どうしたの?ここらへんに来るなんて珍しいじゃない」
「迷っちゃったのです…○○って言うスーパーに行きたかったのですが…」
「あぁ?あのスーパーなら完全に真逆だぞ?どうやったらそんなに間違えんだよ」
「うぅ……」
「こら!小さい子をいじめないの!この人混みなら仕方がないわよね〜。送って行くわ」
「はい!」
そういうことで迷子になった僕をメーデさん達が送って行ってくれる事になった。一緒に歩いているが、いつでも離れちゃいそうだ。
「そういえばなんだけど…大変だったらしいわね。トランプと戦ったんでしょう?」
「そうです!僕の活躍でみんな生き残ったんですよ!えっへん!」
「バクからもそう聞いたが、ほんとかね〜」
「本当ですよ本当!僕も強く…」
ライさんの方を向いていると、丁度裏路地の方に人影が見えた。他と明らかに違う神力に僕は驚いた。みんなフワフワした神力なはずなのに、その人影はトゲトゲしていた。気になって行きたかったがそういうわけにもいかない。とりあえず買い物を済ませることにした。
「ほら、着いたわよ。帰り道は分かるかしら?」
「はい!ここから家までは知っています!ありがとうございます!」
そう言ってお二人とは分かれた。知っているスーパーじゃないとは言えチラッと見て回れば目的の商品くらいあるものだ。
「よし!これで終わり!早く帰ろ!」
あの神力が脳にチラつくが、遅くなってしまっているので帰ること優先だ。しばらく鼻歌でも歌って歩いていると事件に遭遇する。
「誰かあの人を捕まえてー!」
おばあさんが走っている人を指差している。走っている人はおばあさんが持っていたであろうバッグを持っていたので窃盗犯だろう。僕がそれを易々と見逃すわけがない。すぐさま飛んでその犯人の前に降りる。
「待ちなさい!おばあさんの物でしょう?返さなきゃダメです!」
「だ、誰だてめー!ガキが調子乗ってんじゃねーぞ!!」
「!!!!」
その人は能力者だった。その人が手を下から上に上げるような動作をすると僕の居た地面が浮き上がる。表面だけだからそこまで強力な力じゃ無く感じた。流石に変な地面じゃ戦いづらいので浮き上がりビームで牽制をする。
「何なんだあいつ!ガキのくせに能力者なんかになりやがって!容赦はしねーぞ!」
浮き上げたコンクリートの塊を僕に勢いよく投げつける。遠距離攻撃は歪みによって効かないも同然なので問題ない。だが、僕が別の方向へ飛ばした瓦礫が他の人に当たってしまったら大変だ。
(どうしよう…歪みで僕が当たらなくなっても他の人に当たる。最悪なことに人がまだまだ多い。てか何でみんな逃げないの!仕方ない、喰らうしかない!)
僕は腕で頭を守りながらもコンクリートの攻撃を喰らう。ビームで溶かすことも考えたが、それには大きなエネルギーが必要だ。特大のビームなんかになったらそれこそ被害が大きい。
「これならお前も防げねーみたいだな!!喰らえ!」
その人がより大きなコンクリートを僕に投げつけようとした時、声が聞こえた。
「束縛」
僕とその人は投げ縄で捕まえられる。投げ縄の先には警官服を着ているドーベルマンの獣人さんが居た。
「能力で暴れていると通報を受けた。貴様ら2人とも、逮捕する」
「くそ!てめー!これでも喰ら…え?」
(あれ?能力が使えない?)
僕は気付いた。能力が一切使えないことに。それどころか神力も浮いていない。と言うことは?
「うわぁぁぁ!!!」
浮いている僕は落ちるしかないわけだ。縄で縛られてる状態で着地出来るわけもなく、そのまま落下した。
「うぅ……いたたたた」
「あ、見つけた!あの人が私のバッグを取ったんです!」
「分かりました。あの2人組はもう捕えましたので安心して…」
「違うの!あの子は私のバッグを取り返そうとしてくれたの!あの子は悪い子じゃないよ!」
疑わしい顔をした警官さんがうずくまっている僕の目の前にまで来る。
「…本当か?」
「うぐぅ…」
痛い中顔を上げると警官さんが驚いた表情をした。
「何と…バクだったな。お前が人助けなんてするんだな。あのケルトの主だからありえないと思うが」
また勘違いさせてしまってるようだ。顔が似ているから仕方ないとは言え多すぎるな。
「えっと…僕はバクじゃないです。イリウスです」
「はいはい、そう言うのは署で聞くからな〜。まぁ証言もあるし無罪になると思うが」
「その必要はねーぜ」
「その声は…ケルトさん!」
僕の後ろに立っていた。今急いで来たのか少しだけ呼吸が荒い。
「ケルト…貴様!どの面下げて現れたんだ!」
「この面だ。こいつは俺の息子だからな。悪いがサツの署なんかに連れて行くわけにはいかねーんだよ」
「なるほど、同行拒否か。その子が何者かなんて知らんが、捕まえるのが俺の役目だ」
「あ?そりゃあ俺と今ここでやるって意味だが構わないのか?」
辺で沈黙が流れる。丁度今到着したパトカーから1人の女性警官が降りてきた。女性の割に体格がすごい男らしくて強そうな人だ。
「そこまでにしておけ、ケルトとは争うなと言われてるだろう」
「ちっ!今回だけだ」
僕を縛っていた縄が解ける。すかさずケルトさんが僕の前に来て関わらないように壁になる。女性警官の人が歩いてくるのを感じて怖がっていたが、
「逮捕の協力、感謝します」
それだけ言って車に乗っていた。悪いことをしたのかと思ってこれから良いことをしなくなるのを避けたのだろう。あの人は出来る人だ。僕達はそれを見届けた後に一緒に帰った。その帰り道で、
「ケルトさん、あの警官さん知り合いですか?」
「まぁな。昔色々あったって感じだ」
「色々…何があったんですか?」
「そりゃあ帰ってからのお楽しみだ。夕飯の時にでも話そう」
ケルトさんはニヤニヤしながらそう言った。怖かった。




