第52話 ーー命ーー
「……?ケルトさんケルトさん。あの行列は何ですか?」
僕は今、ケルトさんと一緒に買い物を終えて帰宅中だ。いつもとは少し違う場所で買い物したので、あんな行列は初めて見た。
「ん?あれか。ちょっくら寄ってくか?」
「何の行列かが気になるんですが…」
「まあまあ。行ってからの楽しみ、だぜ」
そんな事で僕らはその行列に並ぶことに。時間自体はケルトさんと遊んだり話したりすればすぐなので問題なかった。ただ、ケルトさんは少し有名なのか、周りの視線が集まりやすかった。
「おかしいな〜。俺の噂はそんな広まってねーと思ったんだが」
「色々なことやってますからね。流石に全く広がらないのは無理がありますよ」
僕の願う平穏で楽しいだけの日々からは遠く離れている気がする…
そんなこんなで僕らも店の中に入る。店の中は甘〜い匂いに包まれていて、中に入っているだけで幸せだ。匂いの正体はケーキだった。どうやら有名なケーキ屋さんのようだ。
「お、これまだあんのか。いつもは売り切れなんだがな。これ4つ…と、イリウス、何か食いたい物あるか?」
「ショートケーキ食べたいです!」
「ショートケーキ4つ頼む」
ケルトさんが注文すると店員さんは慣れた手つきで箱に入れる。何が有名なのかとか聞いておけば良かった。店の外に出た後、
「ケルトさん、あのお店って何のケーキが有名なんですか?」
「あのケーキ屋な。ハニーケーキって言う蜂蜜のケーキが有名でな。いつも午前中に売り切れちまうほどなんだぜ。でも今日は売ってたからラッキーだったな!」
「そうなんですか?蜂蜜ってどんなのでしたっけ?」
「あれ?蜂蜜食わせたこと無かったか?あー確かにそうだな。良い蜂蜜じゃねーと俺やトラの舌に合わねーから基本使わないんだったな。家帰ったら食おうぜ」
「はい!」
時刻は2時ごろ。おやつにもってこいの時間だ。
「おぉ、シュガンに行ってきたのか。行列が大変だったであろう」
「ううん!ケルトさんと一緒だったから大変じゃなかったよ!」
「まぁまぁ、早く食いましょう。イリウスも初の蜂蜜らしいですし」
「そうか、俺らのせいで蜂蜜を食べたことがなかったな。アレルギーとか無いと良いが…」
「俺の血がある。多少は平気だ」
僕は緊張しながらも一口食べる。
「!!!!!」
その美味しさは異常だった。元々甘い物が大好物な僕はこの美味しさに絶句。目の輝きが止まらない。
「ははは、美味そうで何よりぞ」
「………!蜂蜜ってこんなに美味しいんですね!砂糖とは違う甘さと言うか…なんて言うか凄いです!」
「だろ〜?この店は良い蜂蜜使ってるから自然の甘さで超良いんだぜ〜」
「うむ。やはり美味いな」
僕はついつい集中して食べてしまっていた。食べ終わったがあの美味しさは忘れられないだろう。
「蜂蜜ってこんなに美味しいんですね!」
「すっかりハマっちまったみたいだな。今度から買ってくるようにしてやるよ。焼いたパンに付けても美味いんだぜ〜」
「そうなんですか!絶対買ってきて下さいね!」
僕は終始幸せの気分で自室に行く。蜂蜜について何も知らなかったので少し調べてみることに。
「ふむふむ。蜂蜜は蜂さんが作ってるんですね!蜂さん達の食糧を人間が奪ってるって感じになるんですか…ちょっと複雑ですね」
そんなことを思ったが、今更そんなこと言ってられない。この世界では、全ての生き物が平等なんだ。人間だろうと、誰がいつ殺されるかなんて分からない。命の価値は同じだ。
次の日、散歩がてらチラッとシュガンのお店に行ってみた。相変わらずすごい行列だし、売り切れの看板も見える。
「相変わらずなのですね…」
僕がそう思いながら散歩を続行すると、1匹の蜂が見えた。春も後半だから居てもおかしくはない。
僕はそれを見て追いかけてみることに。もしかしたら蜂蜜を少し分けて貰えるかもなんて考えたり。
「やめてください!」
蜂さんを追いかけていると、女の人の声が聞こえた。路地裏からだ。
「ぐへへへ。ちょっとぐらい良いじゃんよ〜。あんまり動くと能力で動けなくしちゃうぞ?」
「離してください!誰か!!助けt……!!!」
「ほーら話せなくなった。まずは口が動かなくなって、次第に全身が…」
まさかの事件現場に遭遇。どうしようかと迷っている暇もない。とにかく助けに行かなきゃという思いにかられて飛び出す。
「待ちなさい!」
「だ、誰だ!」
「そこの人!女の人をいじめちゃダメです!能力を使って人を傷付けるなんてやっちゃいけないことです!」
「なんだ。サツじゃなくてただのガキが。大人しくお家に帰んな」
「ビーム!」
とにかく必死な僕は危なそうなおじさんにビームを放つ。それに喰らったおじさんはあつ!と言って一瞬怯む。ただ、
「ん?熱いだけでそんなに威力はないのか。君、能力者だね。レベル頂いちゃおうかな〜!」
おじさんがゆっくりと近付いてくる。怖いながらも神器を取り出して構える。
(ダメだ。手加減したら僕が死ぬ。そうだ、人の命はみんな平等。僕が死ぬか、殺すかだ!)
普段ケルトさん相手にしか使わないような技をそのおじさんに使う。おじさんの能力は恐らく敵の動きを制限するタイプ。時間をかけると厄介になりかねない。
「囲!からの、ビーム!」
僕お得意の技を使って決着を付ける。おじさんは高火力のビームに焼かれ倒れ込んでいる。多分死んでは居ないだろう。
「………はぁ!あ、あの!ありがとうございます!」
女の人はやっと喋れるようになったのか感謝を伝えて走って行った。僕もどうしようと思っておじさんの息があることを確認して帰った。蜂さんを追いかけていたつもりがこんなことになっちゃうなんて…
(はぁー…あのおじさん死んでないよね。僕人殺しにならないよね…てかケルトさん達と居る時点でそんなの慣れなきゃいけないのにこんなこと考えてられないじゃん。でも…救急車くらい呼んだ方が…でもあそこ住所分かんないし…)
「何考えてんだ?」
「うわぁ!何でも無いです!」
後ろからポンと手を置かれて驚いてしまった。ケルトさんは僕を怪しんでいる様子だ。
「なんかあったみたいだな。話せ」
「い、いや〜?特になにも」
「話せ」
「だ、だから何も」
「は、な、せ」
「うぅ…」
その赤い瞳から放たれる圧に負けてしまい全て話した。叱られることを覚悟していたがそんなことされなかった。
「なるほどな。息があったんなら死んでねーだろ。俺らのとこ来いって言いてぇとこだが、そんな距離あんなら仕方ねー。後黄色と黒ってその蜂多分スズメバチだから近寄んな」
「?生きているなら良かったですが…後蜂さんは温厚なんですよ」
「殺しちまっても良かっただろそんなクズ。スズメバチは余裕で刺してくるしくそ痛いぞ。毒は俺の血があるから平気だが」
「殺すなんてよくないです!スズメって何の話してるんですか!蜂さんは滅多に刺さないって本に書いてありましたよ!」
「はぁー…もういいよ…」
自分を守るために相手を殺す。そうするべきなのは分かっているのに身体が動かない物だ。
「ふーむ。息は…あるな。ん?待て、この顔は…やはり、あいつから貰った似顔絵通りだ。占いなんて信じたくないが、これは信じざるを得ないかもな。俺が逮捕するやつの似顔絵を渡してきたが当たる確率は80%だったかな。次はっと…子供じゃないか。こんなの外れるに決まってる。とにかくこいつが誰にやられたか知らないが署に連行だな」




