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第47話 ーーボーリングーー

[・・・って事があってさー。気まずくなって大変だったんだよ〜]


[そんなことあったんだ。ケルトさん、見せたくなさそうだったからね]


[カゲさんのプレゼントの意味がやっと分かったよ。でも何であんなのコレクションしてるんだろう…]


[あーそれはねー・・・]


 あの2階事件があった4日後、ピルス君との電話でそんな何気ない会話をしていた。お互いの近況を報告し合ったり、また遊ぼうか話したりするんだ。


[あ、そういや明日って暇?どこか遊びに行かない?]


[多分暇だと思うけど…ケルトさんに聞いてみるね!]


[分かった!もし暇だったら1時に星町駅集合ね!]


 そう言って電話を切った。僕はまた遊べるとワクワクだ。


「ケルトさん!」


「良いぜ、楽しんでこいよ」


「ありがとうございます!」


「あ、そうそう。まぁピルスが居るから平気だと思うが、こっちで遊ぶんなら気を付けろよ。隣のネクス町は治安が良い方だが、こっちは悪い方だ。能力者には警戒しとけ」


「わっかりました!」


 ケルトさんから忠告を受け、次の日。


「ピルスくーん!」


「あ、イリウスくーん!」


 2人で手を張り合って駅の前に着く。今更だが、ピルス君の服は大学生が着る感じの普通の服だ。


「今日はどこ行くの?」


「あはは…それがあんまし決まってなくてさ…とりあえず楽しめそうな所は調べておいたんだけど」


「どんな所があるの?」


「ボーリングとかカラ…、神社とか、商店街とか?」

(カラオケはまだ早そうだね)


「ぼうりんぐ?神社と商店街は良いところ知ってるよ!」


「おっけー。とりあえずボーリング行ってみる?イリウス君初めてそうだし」


「うん!」


 僕らはぼうりんぐと言うのをする為に広い建物に入った。星町住みの僕もこっちの方には来たことが無かったから新しいものに目を輝かせる。

中に入って、受付でピルス君が何かして、いざ、ゲームスタートだ。


「これ何?すごく重い…」


「それはボーリングの玉だよ。それを転がして、あそこにあるピンってやつに当てるの。1回で全部倒せたら高得点だよ!チャンスは2回あって、1回で全部倒せなくても、2回目で全部倒せればおっけー!」


「なるほど!」


「最初はお手本見せるから見てて!」


 ピルス君は規定?の位置に立って、構える。


(ここでかっこよく決めるんだ。そうすればイリウス君からの印象爆上がりかもしれない!)


 ピルス君は助走を付けてボールを転がす。よく分からないが、綺麗なフォームなんじゃないだろうか。ボールはそのままピンの先頭に当たり、1回で全て倒した。


「よっしゃ!」


「すごーい!よく分かんないけどそんな風にやれば良いんだね!」


「そうそう!今度はイリウス君やってみて!」


「うん!よいしょ、よいしょ」


 何とかボールを持ってきて、持ち上げる。流石に重すぎたから神力で補正をかけたが、ズルじゃないよね…


「えりゃ!」


 ピルス君のフォームを真似してボールを転がすと、思った軌道とは少しズレたが、ピンを3本倒せた。


「やった!倒せた!」


「すごい!初めてとは思えないよ!」


「次で決めれば良いんだよね?」


「そうそう!」


 次もやったが、全部は倒せなかった。2回目で4本倒したが、2本残ってしまった。


「むー…」


「初めてだし、全然凄いと思うよ?普通は一本も倒せず端の方落ちちゃうんだから」


「ガハハハハ!!余裕余裕!!」


「流石リエン様!」


 遠くの方に一組、すごい声のおっきい獅子の獣人さんが居た。ほとんど客が居ないのも相まって、声がすごい響いてる。


「全く、人が少ないからってうるさくするのはやめて欲しいもんだね」


 ピルス君がボソボソ言ってるのを静かに聞いていた。その後も、ゲームは進んでいき、もうすぐラストという所で、


「おい、そこのガキ。能力者だな?」


「え?」


 僕は急いで右手を隠す。そうだった。普段は右手は握ってるからバレないが、ボーリングの玉を投げる時、右手のひらが見えてしまう。


「い、いや〜?僕知りませんけど…」


「おい、レベル寄越せ。そうすりゃ痛い目には会わなくて済むからよ」


「ガキ!さっさとリエン様にレベルを渡さなければ酷い目に遭うぞ!そりゃあもうギッタギタのぺったんこに…」


「おいてめーら。何俺の事無視してんだ。イリウス君に手出したらタダじゃおけねーんだよ。今すぐ消えて、2度とその汚ねぇ面見せねぇっつーんなら許してやる。失せろ」


「あ?能力者でもねーやつが調子乗ってんのか?こいつの保護者か何かかよ。はっはっは」


 いつもは見たことがない、捕食者のような目をしているピルス君を獅子の男は嘲笑う。


「イリウス君。ちょっとこれ、返しに行ってくれない?」


 ピルス君は、そう言って借りてたスニーカーを渡す。


「で、でも!ここは僕が戦わなきゃ…」


「良いから、行ってきて」


「おいおい、行かせると思ってんのか?」


「お前の相手は俺だ。荷物も置いてあんだ。イリウス君が帰ってくるまでにケリを付ける」


「2体1なのに馬鹿な奴なんだな。へっへっへ!」


 僕は怖かったし、任せるしかないと思って受付まで走って持って行った。僕らのいた所は結構遠かったから、それでも時間がかかった。その後も急いで帰ってくると、獅子の男とその連れが倒れていて、ピルス君が1人立っていた。


「良かった!無事だったんだ…ね…?」


 ピルス君の顔を見ると血だらけで、あざとかがもう凄かった。ペッとピルス君が口から何かを出すと、それが折れた歯だと気付くのはそんなに難しくない。


「ど、どうしよ、どうしよう…救急車?それともケルトさん呼んだ方が良いかな…」


「待って待って落ち着いて。俺平気だから、こんくらいの怪我全然平気だから。出血もほぼしてないし、平気平気!それより次行こうよ!商店街行く?神社でも良いな〜。早く俺も能力欲しいし!」


「……とりあえず包帯だけでも買ってからね。帰りに僕の家寄るからね」


「おっけーおっけー!」


 薬局で買った包帯や、消毒液で応急処置を終わらせて、色々周った。その日は夕方まで遊び歩いた。ずっと怪我が心配だったが、決して苦しい顔や痛そうな顔は見せなかった。一通り終わって、帰りに僕の家に寄った。


「おかえり。ってピルスじゃねーか。その怪我どうしたんだよ」


「ちょっと色々あって…へへ」


「僕のせいです!僕が油断してたから…右手見せちゃったから…」


「違います!決してイリウス君のせいなんかじゃありません!俺が自分で…」


「どっちも叱る気ねーからとりあえず上がれ。治してやるから」


 僕ら2人はリビングまで行き、ピルス君はソファに座ってケルトさんのヒールを受けている。


「そんで、誰にやられたんだよ」


「よく分からない獅子の獣人さんです…急に話しかけてきて、僕のレベルを寄越せって…」


「なるほどなー。イリウス、俺の部屋からハサミ持ってきてくれないか?」


「え?分かりました…ハサミならそこにあるのに…」


僕は不思議がりながらもケルトさんの部屋に向かった。


「そんで、本当は誰にやられたんだ?お前にここまでするなんてだいぶ強いやつだと思うが」


「…自分でやったんすよ…」


「自分でか。んなことする必要あったのか?獅子の男だったか?そんな馬鹿なやつ、相手にもなんなかっただろ」


「そうっす。実際2秒で片付いたんで…正直弱かったっすね。でも、一応イリウス君から見た俺は弱いんで、ギリギリ勝ったって感じにしたかったんすよ」


「そこまでするかよ普通」


「イリウス君のやる気…と言うか自信を失わせたくなかったので…俺はこれからも、弱い俺として居ますから!」


「いつかはバレることだからな。それまでは、まぁ頼むぜ」


「ケルトさーん!持ってきました!あんな分かりづらい所にあるなんて…」


「わりぃわりぃ。普段は使わねーからな」


 チャキっと包帯を切ると、ピルス君の傷は完治している。駅まで送って行くと言ったがそこまではしなくて平気と言われてしまい、仕方なく玄関まで。


「えっと…今日はごめんね。僕のせいで…」


「イリウス君のせいじゃないって!」


「また…遊んでくれる?」


「当たり前じゃん!いつでも誘うから、今度はもっと楽しいことしようね!」


「うん!」


 そうして、僕らの1日は終わった。

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