第46話 ーー2階ーー
最近僕は思ったことがある。この家には2階があるのだが、使われている様子がない。僕の部屋も、みんなの部屋も1階にあるし、2階には何があるんだろうと。歯磨きをしているとそんな事を考えてしまった。
「ケルトさん」
「ん?おはよう、イリウス。どうした?」
「おはようございます。僕一つ気になったんです。この家の2階って何があるんですか?」
「「!!!!!」」
気だるそうに新聞片手にコーヒーを飲んでいたケルトさんはばっとこっちを向いた。後ろの方でバクも見ている気がするが気のせいと言うことにしておく。
「そんなに驚くことですか?僕の部屋のすぐ横階段ですし、ただ何があるのかなって」
「な、何もねーぞ!そうそう、何もねー!蜘蛛の巣張ってるくらい整備もしてねーから行かねー方が良いぞ!」
「ん?そうだったのか?お前が掃除はしておくと言うから任せていたんだが…出来ないんだったら俺がしておくぞ」
キッチンで朝食を作っていたトラさんが話に入ってくる。
「なっ!あーそうだったっかな〜」
ケルトさんは焦りながら僕でもトラさんでも無い方を向く。そこに、同じく焦った様子のバクが、
「それならば!我が掃除をしておくぞ!従者の責任は我の責任だからの!だからトラ、絶対に2階に来るでない、イリウスもだ」
「えーなんで?気になる気になるー」
「うるさい!良いから来るなと言っておるだろう!」
バクの突然の罵声が響く。その後正気に戻ったように慌て始めて、すまん!と一言謝ってきた。
「僕も見に行きたいです…ケルトさん、何があるんですか?」
((くそ、あそこには!))
(俺の珍しい頭蓋骨コレクションが!)
(トラに内緒で仕入れていた宝石コレクションが!)
(イリウスにバレたら…)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「えー、ケルトさんこんなの集めてるんですか?きも〜。マジありえないんですけど〜」
とっても見下してるイリウス
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(も、もしトラにバレたら…)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「主…あれほどダメと言ったのに、私との約束を破ったのですね…少しの辛抱ですから…我慢して下さいね…」(全身潰し拷問の刑)
神器を持ちながら泣いているトラさん
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「「ンゴォォォォォォォォ!!!」」
「わわ!どうしたんですか2人とも!急に叫び出して!」
「な、何か病気にでも…主?ケルト?」
急に叫び出した2人を心配して、ゆっくりと近づく。
「「はっ!」」
「あ、目覚ました」
「ん、ゴホン!絶対に行くな、イリウス」
「だから何でですか!」
「トラ、行ってはならんぞ」
「何でなんですか!」
僕らは知らずの内に2階に行くのが禁止となった。僕とトラさんは目が合うなり、無言で頷いたのであった。
夜。みんなが寝静まった夜。午前1時に計画は実行される。気になりすぎてベッドに入ったは良いが寝れなかった僕は静かにベッドから出る。足音で気付かれそうだから宙に空いている。外での移動はテレポートでしようと思う。ドアを少しでも開ければ…
そう思っていた時だった。
(?ドアが開かない?)
「何してんだイリウス」
「!?ケルトさん?な、な、何でこんな所に?」
「お前の起き上がる音が聞こえてな。ま・さ・か
2階に行こうなんて考えてないよな?」
「も、もももも勿論じゃないですか!」
(うぅ…作戦失敗…)
「…☆$#9+=:々」
「ん?何か聞こえません?」
「トラとご主人様の声だな」
僕とケルトさんは音がするトラさんの部屋に耳を傾ける。
「だから何で一緒に寝ないといけないんですか」
(丁度行こうと思ったのに)
「別に良いであろう?たまにはのたまには」
(忘れるまで一緒に寝てやるからの)
壁越しにしか聞こえないが、多分一緒に寝ようとしているのだろう。僕とケルトさんは完全に耳を壁にくっつける。
「はー…分かりましたよ。水飲んでくるんで、先寝ててください」
(やばい!トラさん来ちゃう!)
考えてる暇もなく、ドアがガチャリと開く。
「うお、2人で何してるんだ」
「い、いや?何もしてねーぜ?それよりトラ、お前こそ何してんだよ」
(ん?待てよ。イリウスは今階段に1番近い。主は俺の部屋のベッドだ。ならばケルトの足止めが出来れば…)
僕はトラさんに無言の合図を送られる。
(伝わりましたよ…トラさん。僕が全てを暴いてみせますからね!)
走り出す。全速力で。ケルトさんは一瞬で気がつき僕の足を掴もうとするが、トラさんの蹴りがそれを阻止する。
僕は既に階段を3段も登っているんだ。神力を使って浮いている暇なんぞない。この騒動に気付きバクがドアを開け、トラさんに飛びかかる。トラさんの気がバクに向いた瞬間、ケルトさんは僕に向かって走り出そうとするが、トラさんが足を引っ掛けて転ばせる。
僕はもう階段を6段登った。残りはたったの5段だ。螺旋状になっていて、まだギリギリ先は見えない。相当焦っているのか、バクは僕の足目掛けてナイフを投げつけるが、歪みを使ってそれを避ける。転んだケルトさんも瞬く間に起き上がり、走り出すが、今度はトラさんに足を掴み転ばされる。
僕は残り2段まで来た。先が見える。あるのは左右に4つの部屋と、奥に1つの部屋。確率は5分の2だ。ここで当てなければトラさんの犠牲が無駄になってしまう!ケルトさんはこんな時に本気を出して、その速さはスローモーションでも残像が残らないレベルだ。そこになんと、僕が歪みで飛ばしたナイフが足の指刺さった。完全にたまたまである。指とかはめちゃくちゃ痛いですからね…これにはケルトさんも足を止める。
(ここまで全て3秒の間の出来事です)
「よし!着いたです!」
(どこの扉を開けるか…時間は少しだけあるから奥の扉も開けられる。しかし、あんな分かりやすい所に何かを隠すか?だとしたら…)
僕は左側一つ奥の扉を開けることに決めた。こう言う時人は左を選択しやすいらしいしね。
「開門ー!!!ってあれ?」
見たところ何もない。窓もないし暗い部屋だ。僕の目じゃ何も見えない。
「はぁはぁ…やっと捕まえたぞ!イリウス!」
「勝手に見るなんぞ…はぁ…なんて事をしておるのだ!」
「うわーん!ハズレ引いちゃったー!」
(あぶな!暗いから箱が見えてないようだな。我の宝石コレクションはこれでお蔵入りぞ!)
「5分の2を外してしまったか…ん?何かあるぞ?」
トラさんの目は夜の闇でも問題なく行動出来るよう暗視が付いているのだ。ドサドサと部屋に入っていき、一つの箱を持ち上げてくる。
「これ、なんですか?主」
「い、いやぁ。それは我知らないと言うか…」
箱をパカッと開けたトラさんは見る見るうちに怒りの表情に変わる。
「主、少し話がございますので後で俺の部屋に来い」
「は…はい…」
「バ、バクが萎縮してる…!」
トラさんの静かなる怒りとバクの萎縮具合で何となく察した。
「よし、俺らも下行くぜー」
「うわー!離してくださいー!まだケルトさんの秘密を暴いてないんです!!」
「暴かなくて良いから下行くぜー」
トラさんに持ち上げられ、階段に来るまでの途中。僕はスッと適当に右手前の扉を開けた。その後、一瞬でテレポートを果たしたのだ。
「全く、お前って奴は毎度毎度なんでこんな…ん?あれ!?イリウス??あいつ…!おいイリウ…ス?」
(何で俺のコレクションの部屋が開いたんだ???まさか…)
「こ、これは一体…」
僕は反省点を生かし、ビームの力で明かりを確保。その部屋はまるで実験室かのように、変な入れ物に液体が入っていて、その液体に骨が浮いている。全部頭蓋骨だ。人間のも、獣人のも、とにかく色々。
「んなぁぁぁ!!!終わった……嫌われる……」
「いや、嫌いまではしませんけど…えぇ(引き)」
「うぁぁぁぁ!!!その反応が嫌だったのにぃぃ!!!」
「ま、まぁ良いんじゃないですか…趣味なんて人それぞれですし…ちょっと…悪趣味ってだけで…ね?」
次の日、みんな距離があるように感じた。
後日また元に戻ったとさ。




