第45話 ーーこの世界に必要なものーー
〈・・・と言うことがありまして、犯人は未だに見つかっていない模様です。続きまして、星町にて、駅での人身事故が多発しています。電車を利用する際は、時間に余裕を持って行った方が良いでしょう〉
「むむむむむ」
「どうした?テレビなんかと睨めっこして」
「違います!最近物騒なのが多いのです!」
「んな事言ったってな〜。ここローディアだし。能力者同士の殺し合いなんてよくあることだろ?」
「それはそうですけど…もっと平和的に行く方法は無いんですかね…」
「あるにはあるぜ。全員が良いことをすれば良いんだ。ただ、んなことするのは面倒だーって言うやつがいるからもう不可能だな」
「どうして神様は能力者のレベルを奪えるようにしたんですかね?」
「さぁな。考えたこともなかったが…確かに何でそうしたんだろうな」
「何の話をしておるのだ?」
僕とケルトさんがソファに座りながら話していると、後ろからひょこっとバクが顔を出す。
「能力者のレベルを奪えるようにしたのは何でかなって。バクは何か思いつく?」
「うーむ。特には思いつかんの…本によれば、レベルが奪えるようになったのは第一次神の後継争いの途中らしい。
そこで色々な変化が起きたようでな。神になるのに必要なレベル量が跳ね上がったり、能力が追加されたり、とにかく色々でな。もしかしたら、神が想定しなかった事が起きたのかもしれんな」
「神様が想定しなかったこと…そんなのってありえるのかな?」
「分からん。だが無い話ではない。神もそれぞれ意思があり、意見があり、感情がある。所詮我々と大差ないものよ」
「別にそんなことないと思うがの〜」
「うわ!急に出てこないでくださいよ!」
「「?」」
気付いたら横にいた薄く透けているこの人は、この世界の神。世界を管理し神、世神だ。
「神と人間どもとは大きな差があるぞ?それぞれがそれぞれの役割を真っ当せねばならんからな。我がバクを選んだのは我と似ているからだしな。神以上の存在はいないぞ」
「そこに神がおるのか?」
「うん。世神様が」
「随分と暇なんだな。イテっ!」
悪口を言ったケルトさんにテレビのリモコンが飛んでいく。僕には見えたが世神様が操っていた。
「世神様!何で能力者のレベルって奪えるんですか?そうしたのって神様なんですよね?」
「……それは…知らなくて良い。いつか生神が教えるだろう」
「今じゃダメなんですか?」
「ダメだ」
世神様は少し寂しそうな顔をして、下を向く。流石にこれ以上問い詰めることはしなかった。
「神は何と言っておるのだ?」
「今は知らなくて良いと」
「要は秘密ってことだな。ケーチケーチ。イッテ!」
今度は空の植木鉢がどこからともなく飛んでいく。頭を擦ってるケルトさんを見て神様は笑っていた。少しだけ神様の元気が出たみたいで良かった。
「では我は行くぞ。仕事があるならの」
「はい!頑張ってください!」
「いててて。神はどっか行ったのか?」
「はい!神様は仕事に行っちゃったのです」
「そうだよな世神って仕事多いんだよな。何で地上降りてきてんだよマジで」
「この前は生神様に引きずられて連れてかれましたよ」
「職務放棄というやつか…忙しいのは嫌だの…」
「次の神バクだもんね〜」
〈・・・最近自殺とかしちゃう人も多いですからね〜世の中考えることも多いですし大変ですよね〜〉
〈そうですね〜。そういう人は悲しいですが…人に迷惑かけないようにして欲しいですけどね〜はは〉
テレビを見てみると、まだ駅での人身事故の話だ。
「おかしな話よの。死んでしまった者を労わらず、迷惑をかけるななんてよく言ったものだ」
「そうですかね?俺も同じこと思いますけどね〜。殺されるっつーのに無駄な抵抗するやつとか嫌いなんすよね〜。実験台にしたいのに殺しちまうこともありますし」
「お主、おかしいのではないか?」
「ご主人様こそおかしいと思いますよ。世の中には会議だったり誰かとの約束だったり大事な用があるんすよ」
「なるほど、人間達は自身が死にかけになっても足が動けば会議に向かうのか。まぁそれも仕方がないの〜。会社の者や相手に迷惑はかけられんからの〜」
「あ?自分の身と他人じゃ違うでしょう?死ぬんだったら潔く誰にも見つからねーとこで骨になってろっつってんですよ」
「それでも見つかるまでに迷惑はかかるだろう?捜索隊でも出るかもしれんぞ?家族にはどうするんだ?見つかっていない所もいつか見つかるぞ?」
「お二人ともやめてください!」
2人がヒートアップしてきた頃、僕は何とか間に入る。
「おめーはどう思うんだ?自殺なんて馬鹿みたいなことしようとするやつの味方すんのか?」
「そんなことないだろう?どんな者であろうと死は労わるものだろう?」
「僕は…どっちもそうは思わないです。言うべきじゃないです。みんなが恨むべきは死んじゃった人じゃなくて誰かが辛いと思ってしまうこの世界なんです。それぞれが感じる事ですから死んじゃうのは変わらないと思いますが、それでも僕は…」
脳裏にトランプが、メメが過ぎる。
「生きている人が死している人を批判するのは間違ってると思います。良いことをした人の名前は語り継がれるべきですが、極悪人の人の名前は受け継がれるべきじゃないと…僕はそう思います」
あの人達を思い浮かべると目が潤う。大切な人ではなかったけれど、僕にとっては充分失いたくない人達だったから。正しく進んで欲しかったから。
「確かにの。それを言われたら何も言えんの〜」
「あーあ。正論言われちまったぜ。お前は賢いからな」
色々考えている所で、トラさんが帰ってくる。
「どうかしたのか?イリウス、大丈夫か?」
「大丈夫です…」
「おいケルト、イリウスを泣かしたのか?」
「な、泣かしてねーよ。俺が泣かせるわけねーだろ!」
トラさんがケルトさんを疑いの目で見ている中、ケルトさんは何とか否定する。
「ケルトさんのせいじゃないです!僕が思い出しちゃっただけですから…」
「そうか…それなら良いがな…」
「そうだ、トラはどう思う?神が能力者のレベルを奪えるようにした理由について」
「そうですね。手っ取り早いからとかじゃないですか?」
「それはそうだが…もっとなんて言うかの〜。そんな人間の倫理観に欠けたことするかの〜」
「きっとすごい理由があるんですよ。僕達が想像もしない、すごいすごい理由が!」
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「はー…何と言えば良かったのかの」
「どうかしたんですか?どこかへ行って帰ってきたかと思えばため息なんて吐いて。ため息を吐きたいのは私なんですがね」
「イリウスから聞かれてな。何で能力者のレベルを奪えるんだって」
「何と…!!もうそこまで迫っているとは…見込んだ通り恐ろしい子なんですね」
「あぁ。いつかお主から説明してやってくれ。この世界に必要なのは、混沌を秩序へと戻す、神なのだから」
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「きっとこの世界に必要なのは、神や制度なんかじゃない。みんながみんなを想う、そんな心なんじゃないかな!」
僕は青空を見上げながら、そう呟いた。




