第41話 ーー穏やかな日ーー
「ふにゅ〜。やっと修行が終わったのです〜」
「終わったのは強化週間であって修行じゃねーぞ」
「えーまだやるんですか?」
「当たり前だ!」
やっと一息付いたのに…としょんぼりするがケルトさんはガン無視だ。
「どれもこれもお前の為なんだぜ?人間は強くならねーとすぐ死ぬからな」
「身近に死んじゃった人とか居るんですか…?」
「いや居ねーけど。てか俺人間嫌いだからな。弱いし、使えねーし、弱いし」
「その全てに僕が当てはまってると思うんですが…僕の事は嫌いじゃな…っは!もしかしてケルトさん…本当は僕のこと…」
「あ?何言ったか聞こえなかったぞ」
(もし僕が嫌われてたら…捨てられちゃうのかな…要らない子だから殺されちゃうかな…売り出されるとかかな…でも少しでも役に立てるんだったら…)
「ス…リウス…イリウス!」
「は!ど、どうかしたんですか?」
「どうもこうもねー。もっかい言えっつってんの。ボソボソしてるやつは好きじゃねーぞ」
「えっと…その…ケルトさん、僕の事嫌いなのかなって…」
「は?んな訳ねーだろ、自分の息子嫌う奴がどこに居んだよ」
「でも弱い人嫌いだって…」
「馬鹿やろう」
コツっと軽く僕の頭を叩く。うぐぅと言いながらケルトさんを見上げると、僕の正面へ来て膝を付いた。
「お前は弱くねー。これまでいくつもの問題に巻き込まれても生きてんだろ?充分強い証だ。お前が一人前になるまで、足りねー所は俺らが補うからよ。決して諦めんじゃねーぞ」
かっこよくこのセリフを吐いたケルトさんの顔は、心なしかいつもより輝いて見えた。あの時、僕の事を息子にすると決めた時と同じような。
「あ、あんまりじっと見んなよ!恥ずかしくなるだろ…」
「あ、ごめんなさい」
赤面するケルトさん(毛が黒いから分からないが)を見て、ある言葉を言ってみたくなった。ケルトさんに言ったことがない、本来言うべき言葉。
「これからもよろしくお願いします、ケルトお父さん!」
「なっ!あ、改めてお父さんなんて言われると…その…お前な!俺で遊ぶんじゃねーぞ!」
「えへへへ〜」
真っ赤になった顔(毛が黒いから分からないが)をしたケルトさんを見て、僕は安心した。やっと一息付いているんだと。
この4ヶ月、恐ろしい事がいくつもあった。雪の能力者に、記憶の能力者に、トランプ…命を狙われたのはこのくらいだが、ケルトさんの組に入ったり、いっぱい修行したり…確かに大変だったけど、みんなと居る事が楽しいと感じれた。
そしてついに…
「春でーす!!!春なのでーす!!!」
「おうおう、相変わらず元気だな」
春が訪れた
「僕の1番好きな季節は春ですから!そういえばみなさんの好きな季節ってあるんですか?」
「とってもどうでも良い事を聞くの、我は秋だな。紅葉が美しいしほら、暗殺の秋って言うだろう?」
?????????
「そんなの聞いたことないけど…ケルトさんとトラさんは?」
「俺は夏だな!くそあちーけど修行が捗んだ。すっげー汗かいた後の水風呂とか最高だぜ!滝行も出来るし、海行けるし、それから…」
「俺は冬だ。理由は…故郷を思い出したくない…からだ」
トラさんの表情が少し曇る。
「能天気なケルトさんと違ってトラさんは深そうです…」
「おい誰が脳天気だ」
「別に深くない。俺がローディアに来たのも故郷に居たくないのが理由だからな。何があったかは…すまんがまだ言えない。心の準備が出来たら話そう」
「無理しなくて良いんですよ!トラさんが何で来たとか、僕は全然気にしません!」
「そうか…ありがとう」
「勝手に盛り下がってる所悪いが、今日は花見に行くんだろう?」
「そうです!」
「場所は決まっているのか?」
「まだだけど?」
僕の当たり前発言にみんな唖然とする。
「…舐めているのか?」
「そこら辺探せばあるでしょ!」
「あ、それなら良いとこ知ってますよ」
「流石は我が忠実なるしもべケルト!期待しておるぞ!」
ケルトさんの提案により、僕たちはケルトさんに着いていくことに。そして着いた先は、
「それで…」
「どうしてこうなるんですか!!!!」
墓場だった。僕はすかさず理由を聞き出す。
「なんで墓場なんですか!おかしいでしょう!」
「おかしくねーだろ。ほら、見てみろよ」
そう指を指した場所にあるのは大きな桜の木だ。丁度よくヒラヒラと桜の花びらが散っている。
「人は居ねーし、桜は見れるしで最高だろ?」
「墓場じゃなければ…だがの。ほらイリウスー、目覚ませー」
「っは!ケルトさんのせいで意識飛んでました…」
「飛ぶ要素あったか?」
「こんな所連れてきたことですかね…」
とりあえず来てしまったのは仕方がないとして、桜の下には墓が無いからそこでお団子やらなんやらを食べることに。
「不気味ですね…」
「幽霊は見えないぞ」
「そういう意味じゃないです!幽霊が見えるものか見えないものかとかじゃなくて純粋に…」
「そういう意味じゃない。俺の目には幽霊が映っていない。つまり居ないんだ。分からんか?」
「???」
「トラは幽霊が見えるんだ。霊感が強いって感じのやつでの」
「昔、寺で働いてた事があってな。その時に見えるようになったんだ」
「そうなんですね!寺ってローディアのですか?」
「いや、別の世界さ」
「そこで俺らは出会っちまったわけだしなー」
「え、何ですかその話?すごい気になるんですけど」
「へへへ〜。まだ秘密だぜ、イリウス」
「そんな〜。気になる気になる気にな…」
「何か居る」
僕がふざけている時、急にトラさんが真面目な顔で僕達に背を向ける。ケルトさんもトラさんの言葉に反応し、僕を背に持ってくる。
「我には見えんぞ、気配も感じん。と言うことは…」
「霊の類でしょうね」
「だからこんな所来たくなかったのです…ん?」
僕の目には映っていた。あの日初めて出会い、初めて別れた友達の姿が。
「メメ!」
「あ、ちょ、イリウス!どこ行くんだ戻ってこい!…トラ!何が見える!」
「………イリウスから聞いた通りだ…一つ目小僧で間違いない。だが霊体だ。マズイかもしれん」
僕はケルトさんの言葉を無視して走る。メメも驚いて逃げているみたいだったから。しばらく走っていると、丁度墓の端っこの方に来た。急斜面になっている下には家が建っている。
「メメ!メメだよね?僕のこと覚えてる?商店街で迷子になってて…あ、そう!メイゴだよメイゴ!」
「メイ…ゴ?」
メメの声で、メメの見た目で、嬉しかった。幽霊だろうと何だろうと、会えたのが嬉しかった。でも、すぐに違うと気付いた。
「メイゴ?ふふふっ、お前の名前メイゴ?じゃあメイゴ…ふふっ、その身体、頂戴???」
メメだと思ったその幽霊は、姿形を変えて、僕に襲いかかってきた。トラさん達が着く頃にはもう遅かったはずだ。
「うわぁぁ!」
「イリウス!」
「くそっ!間に合わんぞ!トラ!除霊の準備は!」
「出来ています!」
僕はお札を持ったトラさんと怒っているケルトさん、焦っているバクを見て、身体を乗っ取られる…はずだった。
「なんで?なんでなんでなんでなんで?身体に入れないぃぃぃ!」
「何が…起きてるんですか?」
幽霊は僕の身体をフワンフワンと透き通ってを繰り返している。そこに隙をついたかのようにトラさんが迫り、
「悪霊退散!」
「あぁぁぁぁぁぁあ!!!」
札を押し付けて、幽霊は消えていった。すかさずトラさんは僕に札を向ける。
「お、おいトラ!何やってんだ!幽霊は追い払ったんだろ?」
「確かにそうだな。だがあの悪霊はイリウスの身体を乗っ取れていなかった。悪霊が身体を乗っ取れない理由は既に悪霊が憑いている可能性が高い!お前は本物のイリウスか?」
「そうですよ!僕本物ですよ!僕も何があったのかよく…」
「全く世話が焼けるな、メイゴ」
「!!!」
突然声が聞こえて、周りを見回してみたが姿は見えなかった。確かに居たんだ、僕の側に。
「てい」
「いた!何するんですか!」
「札を押し付けるのが早いと思ってな。悪霊は憑いていないみたいだな」
「だからそう言ってるじゃないですか…」
「イリウス、お前なぁ…もし本当にお前のダチだったとしても、妖怪は死んだ時には怨念しか残さねー。今度からは気安く行くんじゃねーぞ」
「気安くは行かないようにしますよ。でも、本当に怨念しか残さないんですかね」
「ん?何が言いたいんだ?」
「えへへ〜。内緒です!」
僕は確かに感じたよ。もし、気のせいだったとしても、1人じゃないって思えた。




