第40話 ーーイリウスの修行2ーー
「何なんだ…これ」
俺が見つめる先にはピチピチと跳ねている明らかに危なそうな魚と獲物が水を飲んでるところを襲いそうなワニのような生物が居る。
「水の中に居るんじゃ飲めないではないか!と言うか魚多すぎだろ!」
「どうにか殺せれば良いんですが…」
トラが魚を一体取り出してハンマーで潰してみるが、砂にめり込んだだけで生きている。
「こりゃあこいつらも物理攻撃無効っすね。まぁ一瞬で飲めば良いですし、あいつが来る前に早く済ませちゃいましょう」
全速力飲めば問題ないはずと思い、一度水に手を入れて魚達を吹き飛ばす。その隙に飲む。
「うぇ…魚の生臭さが染み込んでて最悪な味だ…」
「文句は言ってられん。我も飲むぞ」
とりあえず全員が飲み終えて少しの安息。あの生き物も見失ってるみたいだ。
「太陽の位置が変わってるな。夜も来るのか」
「やはり時間の流れは変わっているのか?ローディアが夜だとこっちも夜、と言うわけではなさそうが」
「そうですね。こっちの方が時間の流れは早いです。今までの換算で言うと、後2時間で夜は来ますかね」
「砂漠の夜は寒いと聞きます。注意しなくてはなりませんよ」
「それよりもだ、あの生物の弱点が日光だとしたら夜になると…」
「詰みますね」
あくまで予想だが、あの巨大生物は日光が弱点だ。わざわざ砂の中で追いかける必要ないし、そんな高くはジャンプしない。
「やるしかないと言うことか。作戦を考えよう」
その後、俺たちは作戦会議をした。限られた時間の中で何をするか、どうするか。そして結論は出た。
「よし、これで行こう」
「おっしゃ!いっちょやってやらぁ!」
俺たちは足音を立てて、あいつを呼び出す。
(あっちだ。あっちからきこえる。あっちにいる。アルジのめいれい、あいつらをタベル。
おとはミッツ。いちバンおもいのがあのトラ、にばんめがくろいヤツ、そしてさんばんめがニンゲン。まずはトラからクウ。くろいヤツはやっかい。さきにヨワイヤツ、クウ)
「よし、来ておる!来ておるぞ!準備は良いか!」
「ええ!もちろん!」
(ここ、ニゲラレナイ。ク…ウ?)
「作戦成功だな。足音ってことは、体重だろ?」
俺は大量のナイフを持って走っていた。ナイフが一本1キロと考えると15本くらい持てばトラと同じくらいの体重だ。一方トラは、片腕を切り落としてあるから俺と同じくらいの体重。
(なんでくろいヤツが!?)
「おら行くぜ!」
俺はその生き物を思いっきり殴る。生き物の体勢的に上に吹っ飛ばすのは無理だが、これで良い。
(だめだ、イチドひく)
生き物は俺と真逆の方へ行こうと砂に潜るが、それも罠だ。
(なんだ?これ、うごけない。アミ?)
「引っかかったぞ!トラ!行け!」
「分かりまし…た!!」
ご主人様が神力で作った網。虫取り網のように棒が付いている形状になっていて、その先をトラがハンマーで殴る。砂があるおかげで、シーソーみたいに生き物は浮き上がるってわけだ。
(あつい、あついあついあついあついあつい!)
「おっしゃ!焼けてるぜ!案の定日光が弱点だったな!」
「完全に我々の作戦勝ちよの!」
「これは貰ったな」
生き物は高く高く飛び、日に焼けている様子だ。ドンと音を立てて地上に降ってきた時には、黒焦げになっていた。
「死んだ…のか?」
そう思ったら、生き物はゴロゴロと動き出し、砂に潜る。
「…ゴウカク」
「え?」
完全に生き物が姿を隠し、そこから追われることはなかった。その後夜が来たが、寒さも特に問題はなかった。
そして、時は過ぎ、イリウスがハコニワに戻ってくる。
「みーなさーん!生きてまーすかー?」
「あぁ、おかげさまでな」
「お主、我から水を奪うなんてな、後で覚えていろ」
「な、何でそんなに怒ってるんですか!修行なんだからしょうがないでしょ!って言うかあの生き物はどうしたんですか?」
「あー。太陽の下に出したら黒焦げになったぞ。まだ生きてるみたいだがな」
「なるほど、まぁあの子はそう簡単には死にませんからね」
ゴソゴソ、と僕の後ろで音がしたから見ると、砂から顔を出している。
「ありがとう、よく頑張ってくれたね」
「メイレイ、まもった。おれ、イイコ?」
「良い子だよ。ほんとにありがとう」
生き物は疲れた様子だ。ハコニワの力ですぐに治してあげると、砂の中に戻っていく。
「そいつ、殺すのか?」
「どう言う意味ですか?」
「いつまでも砂漠にしておくわけにも行かねーだろ。ほかの環境になっちまったら生きてけねーんじゃねーか?」
「大丈夫です。あの子には色んな力を入れましたから」
そんなことで、僕の修行はケルトさん達の手によって1日で終わってしまったのである。
次の日
「う、うわぁ!何するの!?」
「水の恨みぞ!我はお主のせいで生臭い水を飲まざるを得なかったのだからな!」
「そんな!だからって不意打ちしてこないでよ〜」
「止めなくて良いのか?怪我するぞ」
「まぁ怪我しても治せば良いしな。ご主人様が怒る気持ちも分かるってもんだ」
俺らは静かに傍観している。こうやってふざけ合ってられるのも今だけかもしれないしな。
「ぬぅわぁ!たすけてくださいよー!」




