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第37話 ーートラさんの修行ーー

「はぁー…俺の番が回ってきたか…」


「何で元気ないんですか?まさかまだ決めてないとか…」


「いいや、一応決めてはいるがな」


「ならば早くやろうぞ。時間が勿体無い」


 ケルトさんの修行が終わり、僕たちはトラさんの修行をすることになった。昨日終わったばかりなのだが筋肉痛がいまだに響く。

 朝からトラさんのハコニワの中に連れて行かれた。住みやすい気温のサバンナのような場所で、筋トレ器具が見える。


「俺の修行は…」


「もう早く言って欲しいのです…」


 トラさんは神器であるハンマーを取り出して床に叩きつける。


「この神器を壊してもらう。もちろん持ち手じゃないぞ」


 僕は理解出来ていなかった。神器を壊すなんて単語初めて聞いたから。


「神器を壊す?壊せるんですか神器って?」


「まぁ壊せねーことはねーな。ただ相当硬いからな。こりゃあハードな修行になりそうだ」


「これは3人チームでやってもらう。俺は手を貸さんからどうにかして壊してくれ」


「本当に壊せるんですか?持ち手の部分ならまだある程度細いですけど…」


 持ち手が細いと言っても僕の手では完全に握り切る事が出来ないくらいだ。小さめの木ぐらいの太さはある。それに比べてハンマーの主体の部分は電柱を6つ並べたぐらい太い。こんなのが迫ってきたら確実に避けられないだろう。


「まずは神器が壊せるかどうかだったな。イリウス、神器を構えてくれないか?両手で持って刃が上になるよう待ってほしい」


「こうですか?」


「そうだ、そのまま絶対に動くなよ」


 トラさんが神器を担ぎ、勢いを付ける。ビュンと風が起こり、手に違和感を覚える。


「うわぁぁ!折れちゃってます!折れちゃってます!!」


 僕は大焦り。神器が折れていて真っ二つだ。手に残っているのは持ち手と少しの刃だけ。


「落ち着け落ち着け。一回神器を手元に戻して、もっかい出してみろ」


「うぅ…わかりました…」


僕は言われた通り神器をしまってもう一度出す。すると神器はいつもの曲がりくねった剣に戻っていた。


「治りました!良かったです〜!」


「こんな風に神器は一度戻すと元に戻る。これなら壊れても安心だ。ただ、今俺は3分の2くらいの力で振ったわけだ。つまり分かるか?」


「神器は相当な力がないと壊れない…ってことですか?」


「そう。お前の剣は元々細いが、俺のハンマーは違う。神器の耐久度が全て同じだとしても、俺のハンマーは質量も太さもある」


「故に、これを壊すのは困難と言うわけだ。実際に壊したやつはいるのか?」


「………ε(イプシロン)。あいつらの科学技術に負けました。ただ、力技で壊したやつは今だに居ません。もし壊せるようになったら…あいつらにも勝てるかもしれません」


「なるほどの。それについてはイリウスがその神器を歪めてしまえば良いのではないか?」


「あ…」


 トラさんは完璧にやらかしたと言う目をしながら僕を見つめる。僕の歪みには硬さや太さなんて関係ない。物体そのものを歪ませてしまえば折るのなんて容易い。


「なし、イリウス、なしだ。イリウスの歪みはなしだ。良いな?」


「えー?」


「えーじゃない修行にならないだろう。とにかく!これが俺の出す修行です!早く始めてください!」


「全く仕方のないやつよの〜。それにしてもイリウスの能力は本当に有能よの。我々の修行を無意味にすることが出来てしまう」


「僕の能力は最強だからね!」


「お、最強なのか?じゃあ俺とまた勝負しようぜ!今度は本気でな!」


「遠回しに殺したいって言ってるの分かってます…?」


 そんなこんなでトラさんの神器を壊さなければいけなくなってしまった。考えてみるが、やはりこの太さの金属?を壊すのは容易く無い。

 ビームで焼いてみても、ケルトさんが殴ってみても、バクが切ってみても、傷は付くがこんなことを繰り返していては1年はかかる。


「うーんどうするかー」


「傷くらいなら付くが…ケルトの攻撃でどうにかならんなら力技じゃきついか…」


「ビームでどうにか高温に出来ないかな?金属っぽいし形が変わるかも!」


「あのなー…確かに金属っぽいが、これは神の石って言われててな。実際に見たやつは居ないんだがよ、人間が加工なんて出来ない代物なんだ。焼いて形を変えるなんぞ出来ねーんだよ」


「なるほど…こう言うのは神様に聞くのが1番…あ、そうだ!神様に聞けば良いんだ!」


「おい流石に反則だぞ」


 良い案を思いついたかと思ったが一瞬で却下される。再びうーんと考える。


「バクの神器でさ、思いっきり突いちゃダメかな?」


「どう言う事だ?」


「だからさ、先端が尖ってるものに大きな力を入れれば、全部その尖ってる所に行くわけじゃん?そしたらこんな大きなハンマーでもヒビが入るんじゃないかなって。トラさんが個人じゃなくてチーム戦にしたのも理由があるんじゃないかな…」


「なるほど…やってみる価値はありそうだ。ケルト、我がナイフを突き刺すからそこに向かって殴れ」


「分かりました〜。上手くいくんですかね〜」


 バクは言った通り、ハンマーの叩く部分にナイフを突き立て、ケルトさんが勢いをつける。ケルトさんの拳はまっすぐナイフの方に行き、その衝撃はハコニワ中に響いた。結果としてはバクのナイフが粉々になってしまい、トラさんのハンマーは少し凹んだが、あまり効果はない。


「んがぁー!!もう壊せねーよんなもんー!!!」


「惜しいな。後一息が足りなかったな」


「もう何が足りないんですか?トラさん、分かってるんでしょう?」


「それを考えるのがお前たちに与えた試練だ。ま、考えた所で実行できるかは分からんがな」


「何ですかそれ…」


「何かが足りないのは確かなんだ。それが分かればこの方法で行けるかもな」


(足りないものと言えばバクのナイフの耐久度…僕の剣を使うとしてもこの形じゃ力が分散しちゃうな。ケルトさんの刀?いや、長いほど折れやすい。最適なのはバクのナイフなはず。だとしたら耐久性を上げないと…)


「バク、神器って神力込めたら硬くなったりしない?」


「それは…そうだな。硬くはなるだろうな。ただ、刃先が刃先の役割をしなくなる。神力が多くなればなるほど、接触面が大きくなるから意味がないぞ」


「それなんだけどさ…刃先だけ神力込めないようにって出来ない?」


「な!無茶にも程がある!神力を長年使ってきた我でもそんなこと考えないぞ!」


 やっぱりダメかと諦めて考え直そうとした瞬間、ケルトさんが感心した顔で僕に近寄る。


「めちゃくちゃ良いじゃねーかそれ!もし出来たら最強の道一歩進めるぞ!やってみる価値はあるぜ!」


「ほ、本当ですか!?」


「待て待て待て待て。出来んぞ?絶対に出来んぞ?神力を込めると言うのは、その物体に神力を巡らせると言う事だ。部分的に解除なんぞ、出来るわけがない!」


「神力を込める時ってその物体を自分の身体みたいに思うんでしょ?なら、刃先だけ除外すれば…」


「そう単純に行くと良いな。まず、刃先に神力が行っていないなんてどうやって確認…は!そうか!こやつ神力が見えるんだ!」


 僕は集中して神力をナイフに込め始める。刃先だけを除外するイメージ…目を閉じて、感じる。まるで折れたナイフに神力を込めるような…


「出来、ました!」


「ま、マジか…」


「おっし!じゃあ行くぜ!!」


 ケルトさんが大振りな一撃をナイフに与えると、ナイフは粉々になってしまった。ただ、ハンマーには大きなヒビが入っていた。


「よっしゃー!来たぜ!来てるぜ!これ後1回で完全に壊れるぜ!」


「ま、まさかこんなに早く壊されるとは…」


「おいおい!次の修行は考えてるんだろうな?流石に『俺の修行はこれで終わりだ』なんつったらブチギレるぞ?」


「う…今考えているところだ!」


 始まりからたったの2時間。トラさんの第一修行は幕を閉じそうだ。


「もう一回神力を込めます!ちょっと足りないかもですが…」


「イリウス、少しだけ手を貸してやる」


 バクが僕に触れると、神力が増えている感じがした。


「神力って他人に与えられるの?」


「いや、普通は無理だ。だが我々は四大神の憑き人同士。繋がりはあるものだ」


 そのまま神力を込めて、ケルトさんの1発で、ハンマーは真っ二つになった。

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