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第35話 ーーケルトさんの修行ーー

「おっしゃー!お前らやってくぞーー!!」


「うにゅ〜朝から元気ですね〜」


 眠くて目を擦りながら立っている僕と裏腹に元気いっぱいなケルトさん。今日はケルトさんの考えた修行をやる日だから張り切ってるんだろう。僕は全くもってやりたくない。


「て事で、今日俺が提案する修行は…」





「筋トレだ!」


「へ?」


「筋トレだ筋トレ、知ってんだろ?」


 知ってるには知ってるが…修行?


「そ、そういうのって時間をかけてやるものだと思いますけど!?まさか1ヶ月修行だーとか言いませんよね!?」


「んな時間あるわけねーだろ。今日1日、あるいは2日でマスターしてもらうからな!」


「どうやってですか…」


「それは我も思うぞ。1日で成果は出るだろうが、それは修行なのか?何よりも、我やイリウスは筋トレの必要なんてほとんどない。それなのにやる意味は?」


 バクと僕はいくら鍛えてもケルトさん達並のパワーが出せるわけない。意味がないのかと言われればそうじゃないかもだけど、必要はない気がする。


「やってから言ってください。ま、考えてる限りだと、イリウスは剣技の向上ですね。神器を少し浮かせないと持てないくらいなんで、それの解消も混みです。ご主人様に関しては、純粋に能力の頼りすぎで鈍ってるでしょう?」


「ぐぬぬ…」


「まぁまぁ。主もした方が良いですよ。健康にもなりますし」


 トラさんはそう言うが「我は不老不死だ!」と一蹴される。


「それでも説明が付かないです。筋肉は時間が経って成長していくものです。1日や2日でどうにかなるものじゃありません!」


「そうだな。普通の人間なら、な。お前、俺の血飲んだだろ?」


「あ、、、」


「一晩経ってるし、俺の血も筋繊維まで染み渡ってるはずだ。1日や2日でムキムキとまでは行かないだろうが、剣が軽くなるくらいまでは行けんだろ」


 僕は完全に嵌められた感じがしてケルトさんを睨むがドヤ顔をしていて気が付いていない。そのまま今日の修行内容が決まって、ケルトさんのハコニワへと移動。辺りは草原で風がある。


「すっごい綺麗な草原です!あれが無ければ…」


 辺りに広がる緑色の景色に一部分だけ筋トレ道具が転がっている。ケルトさんより大きい重りがあって本当に持ち上げられるのかと思った。


「あれってなんだあれって。バーベルって言えよ!大事な筋トレ道具なんだからな!」


「あんな大きさ持ち上がるんですか…?僕の何倍あるんですか…」


「あれが1番重くて1枚15tだ。知り合いに圧縮系の能力者が居てな。頼んだんだ。ほんとはもっと小さくしたかったがあれが限界だとよ」


「15トン!?どんだけ重いんですか!?まさかあれを持てとか言わないですよね??」


「流石に言うかよ、お前はそうだな〜。これでもやっとけ」


 ポイっと投げ渡されたのは結構重いダンベル2つ。投げ渡す事ないじゃん…と思いつつ何キロなのか気になった。


「結構重いですけどこれで何キロですか?」


「あ?それ10キロだが…それで重いってお前…」


 自分でも驚いた。既に腕は吊るしてある状態。これを上げ下げするとなると1回や2回が限度だと分かる。


「おっけー分かった。お前は待ってろ。腕立てから始めねーといけないかもしれねー。ご主人様はこの重量を基本にやってください。トラはあれやっとけ。ご主人様の指導も一緒にな」


 ぱぱっと2人の内容を説明してすぐにこっちにやってくる。


「イリウス!筋トレ経験はどんだけだ!」


「はい!0です!」


「0か………腕立ては…分かるよな?」


「はい!」


「おし、じゃあやってみろ」


「はい!んいーち!にーい!さーん!!!」


 ボトっと言う音と共に僕は寝転がる。それを見てケルトさんは絶望する。


「まず…一個だ。フォームが最悪だ。何だその動きは?水飲む時の犬か何かか?そして二個目だ。これだと日が暮れるまでやっても意味がねー。あんまりやりたくなかったがやるしかねーな」


 そう言ってまたダンベルを持っきて渡されたが、今度は10キロと比にならなかった。


「な、何キロあるんですか?これ」


「30だ。それを一回で良いから持ち上げろ。出来たら次は二回だ。次は三回。休憩は長くて30秒だ良いな?」


「出来るわけないでしょこんなの!僕まだ10さ…」


「やれっつってんだ。圧かけられたくなかったらやれ」


「むぐぐ…」


 そんなこんなでやることになったがやっぱり持ち上がらない。頑張ってみるが一向に上がる気配がない。ケルトさんが見てるから手を抜くのも出来ないし、必死に頑張る。

 30分後、努力した結果が報われたのか一回だけ持ち上がった。


「わー!やったです!持ち上がったです!ケルトさん!持ち上がったで…す…って何やってるんですか…?」


「見てわかんねーか?筋トレだ筋トレ」


 僕がケルトさんの方を見ると、逆立ちをして足で大きい重りを持ちながら腕立てみたいなのをしている。重りの上には丸いボールみたいなのがあって、それが落ちないように気をつけてるようだ。


「よし、一回は終わったか、もう30秒は経っただろ、連続二回だ。早くやれ」


「そんなぁ…」


「やる気ねーみたいだな。仕方ねー」


 そう言われてすぐ、僕は鳥肌が止まらなくなった。さっき圧をかけると言っていたが、まさか殺気の話とは…


「これで少しはやる気湧くだろ。頑張れよ」


「うぐー…」


 僕は落としたダンベルを拾って再開する。だが今回はそんなに時間がかからなかった。20分もすれば二回連続で持ち上がったのだ。


「じゃあ次は三回だ」


 15分後には持ち上がった。


「じゃあ四回」


 10分後には…


「よし、ほれ、受け取れ」


「うわぁ!ちょっと危ないですよ!」


 またダンベルを投げつけて来てキャッチする。あんまりさっきより軽いのかそこまで重くない。僕が文句を言うと、ケルトさんは汗を拭きながら言った。


「ちゃんと待てるじゃねーか。それ、さっきの10キロだぞ」


「え、ほんとですか?」


 重いと思ったのが嘘みたいだった。持ち上げる気すら起きなかった物がこんなに軽く感じるとは…


「ま、修行の成果は出てるって事だ。そんで次の修行だ。神器を出せ」


 言われた通りに神器を出すが、やはり重い。鉄の塊である故仕方ないが。出した後、半ば強引に神器を取られた。


「うーん。まぁ大体70ってとこか。子供が持つにしちゃあちょいと重いが…」(もしかして生神って神器作り下手か?)


「それで70キロってことですか?重すぎませんか?」


「そうだな。だがお前にはこれを軽々と振ってもらうことになる。なーに1時間で30キロが上がるようになったんだ。70くらい2日あればいける」


「そうなんですかね…」


(確かに2日あれば上がる…大人ならな。あくまでこいつは子供だ、子供には限界値があるから突破は出来ない。さーてどうするか)


「とりあえず、これを振る練習しとけ。周りに当たらねーようにな」


「分かりましたー!」


 ケルトさんの様子が少し変だったが気にせず離れる。剣は引きずってしか持って行かなくて少し悲しくなる。


(うーん、この剣、両手剣にしては持ち手短いし片手剣だよね?何でこんな重さになったんだろう…)


 謎が残るが構わず振ってみる。やっぱり振ると剣に振られてるような変な振り方になってしまう。剣の遠心力で自分が飛んで行きそうになるが何とか耐える。


「どうにかして振りやすくならないかな〜。やっぱり神力で覆うしかないのかな〜」


 そう思いながら神器を眺めている。神力で覆わないと振ることも出来ない。もはや筋量じゃないのではないかと思い始めてたそんな時、


「イリウス。少し良いか?」


「あれ?トラさん!どうかしました?」


「ちょっとしたアドバイスだ。俺のハンマーもざっと10tあってな、ずっと持ってるともちろん疲れるわけだ」


「そんなに重いんですね…」


 トラさんの3倍くらいのハンマー。金属っぽいし重そうだったけどまさかそこまでとは…。


「だからな、多少なりとも神力で覆っている。俺はそれで良いんだ。これは潰すものだからな。だがお前は違う。神力で覆いすぎると斬れ味が悪くなるんだ。だからそれを持つことと言うより、覆う神力量を少なくすることを目的にした方が良い。出来れば普通に持った方が良いが、流石に時間が足りない」


「そう言う事だ」


「ケルトさん!」


「俺もちょいと気にかかってな、その神器、やけに重いんだ。だから多分神力で支える事を前提として作られてる。そう言う事で、お前がギリギリ持てる思う重さまで神力を籠めろ。その状態で振り回せばそれで良い」


「なるほど…よく分からないですけどちょっとは神力使って良いってことですよね!頑張ります!」


 こんな剣が何でそんな重いんだろう?僕はそう思いながら、今日も修行に励む

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