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第34話 ーー最強対最強ーー

「さいしょはぐっ!じゃんけんぽい!」


 ケルトさんとトラさんは集中した顔でじゃんけんをする。そんなに集中するものなのかな?何回かあいこになってやっと決着がついた。


「ぐわー負けたー!」


「よしっ!」


 ケルトさんが負けてトラさんが勝った。恐らくトラさんが攻撃だろう。


「じゃんけんに負けただけじゃないですか。そんなに悔しがります?」


「お前まだ分かってねーのか?この試合は攻撃側が120%有利なんだよ。当たり前のことをだが、防御側は攻撃側の攻撃を一度でも食らえば負けだ。だが攻撃側は防御側から何度でも攻撃を受けれる。もちろん俺が殴って瀕死になる相手ならどうにかなるが、今回はそうじゃねー」


「なるほど…じゃあケルトさんは逃げの一手ですかね?」


「まぁな」


「準備が出来たなら始めるぞ。2人とも位置に付け」


「「はーい」」


 比較的安全な場所に移動し、バクと2人きりになる。


「ちゃんと見とけよイリウス。俺が圧倒的不利状況で勝つところをな!」


「俺が負けると言いたいのか?赤っ恥かかせてやる」


「やれるもんならやってみろ!」


 いつものように煽り合ってる2人を眺めて落ち着く。煽りながらも自分の定位置に移動して準備運動をする。


「よし、準備出来たぜ」


「俺もだ」


「攻撃はお前だからな。お前が来たら開始と見なす」


「ならば行かせてもらうぞ」


 緊迫した空気が流れる。既に2人とも目付きが違う。神力が見えるから分かるが、バクが僕の目の前に壁を作っている。ちょっと見づらい。

 パッと2人の姿が消えたと思ったら強い衝撃波と共に取っ組み合ってる2人が現れる。


「うわあぁあぁあぁあぁあ」


「これは…思ったよりきついの…」


 衝撃波で吹き飛びそうだった僕をバクが掴む。身体が空中でブラブラとしていて涙目だ。バクが頑張って神力の壁を作ろうとしてるのが見えたから、僕も神力で協力する。2人の取っ組み合いは収まらず、何とか吹き飛ばないくらいには壁を厚くできた。地上に着いてケルトさん達を見ると、本当に目で追えない動きをしていた。互いの拳や神器がぶつかり合ってる瞬間だけ視認できるくらいだ。


「ケルトさん思いっきり当たってるじゃん!」


「防御はしてるから当たっているとは言えん!このルールはどんな攻撃をされても防御さえ出来ればセーフなんだ!」


「そうなんだ!じゃあ後3分これが続くのかもね!」


 僕らはすごい音の中風を防ぎながら大声で話す。しばらくすると目が慣れてきたのかある程度の動きが見えるようになる。

 トラさんがハンマーを振っている所をケルトさんが受け流している。そして、体勢が崩れた所を狙って殴ってる。見た感じ浅い、トラさんも効いてる様子が見えない。ケルトさんは浅い攻撃ばっかで追撃しようとしない。多分狙いすぎるとトラさんにやられるんだろうな。僕とは生きてる世界が違いすぎる。やる気がどんどん無くなっていく。


「イリウス!少し聞いてくれ!あいつらは確かに強いしこの世界でも最強だ!だが!お主もあそこに混ざれる才能がある!決して自分を甘く見るな!」


「…うん!」


 絶望しそうだったが、バクのお陰で立ち直れた。僕はすかさずケルトさん達の動きを観察する。


「…能力、発動!」


「なっ!」


 トラさんの攻撃がまたケルトさんに受け流されたと思ったらそのまま地面を叩いた。そして、トラさんの言葉と同時にケルトさんの足場が潰れて消える。


「貰った!」


 ケルトさんの消えた足場から次の足場までの距離はたったの数センチ。それで体勢を崩してしまうなんてどんな繊細な動きしてるんだ…体勢を整えられなかったケルトさんはそのままハンマーに当たり飛ばされてしまう。

 バクと僕は突然の決着に固まったが、すぐに取り戻す。


「勝者!トラ!」


「おっしゃーー!!!見たかイリウス!?かっこよかったか!?」


「え?あ、はい、かっこよかったです」


 トラさんはいつもしないような顔で僕を見る。その目はキラキラしていた。


「どうだケルト!俺の方がかっこいいってよ!!」


「誰も俺よりかっこいいなんて言ってねーだろ!てかくっそムカつくなお前!もう一戦だ!」


「誰がするものか!俺の勝ちだ勝・ち!」


「てんめー…」


 トラさんはいつも通り煽る。喧嘩になるからやめてほしい。


「2人とも喧嘩はやめてくださいよ!どっちもかっこよかったですから!」


「「どっちの方がかっこよかったんだ!?」」


「もう良いから黙ってくれ…全く。イリウスに好かれたくても我には好かれたくないのかこの2人は…ぶつぶつ」


 バクは嫉妬してるかのようにぶつぶつと何かを言っている。


「とにかくだ!修行はまだ終わっておらん!早く準備をしろー!!!」


 その後、僕らは修行を再開する事となった。


「うぐー…傷に染みるですー」


「あれ?俺治したはずだろ?」


「それは大きい傷だけです。小さい擦り傷とかは治してもらってないです」


 汚れた身体を綺麗にするためにお風呂に入っているが、傷によく染みる。修行の時間はざっと10時間。もはや痛みすら忘れてしまいそうなくらい傷付いた。


「これで避ける修行は終わりですか?」


「んーどうだろうなー」


「え?どういうことですか?修行って1日に1人のやつやるんじゃ…」


「あーちげーよ。その修行を提案した人が満足するまでだ。だから今回の修行で成長が見られないどっかの10歳が居れば明日も避ける修行だぞ」


「えーそうなんですか!?じゃあ強化週間って名前ですけど出来が悪かったら…」


「強化月になるかもな!俺は修行好きだし全然良いけどな〜」


 良いわけないでしょうと小さな声で言うがケルトさんは聞いていない様子だ。


「風呂上がったぜ〜」


「分かった。飯は出来てるから先に食べておけ。主も飯食べててくださいよ」


「あぁ分かっておる分かっておる」


 お風呂に上がった後、お昼ご飯が無かったのでお腹がぺこぺこだった。そのためすぐに夕食を平らげてしまう。


「あ、そういえばバク。バクの修行ってもう終わり?」


「そうよの〜。正直続けても良いが…」


 腕を組んで悩んでいるバクにえーと野次を入れる。正直やりたくなかった。


「ま、これ以上やってもお主には意味が無いかもな。能力でどうにかなるだろうし。後はケルトとトラに任せるとしよう」


「やったー!」


 これで避ける修行が終わりだと聞いて両手を上げて喜ぶ。しかし、すかさずそこに突っ込む人が居た。


「何喜んでんだ?ご主人様の修行は十分甘い方だぞ?明日から俺の修行だが、動けなくなるまでやるからな。覚悟しとけ」


「えー⤵︎」


 ちょっとでも喜んだ自分が馬鹿みたいに思えた。


「あ、そういや忘れてた。お前にやりたい事があってな」


「何ですか?」


 ケルトさんはそう言うとグラスを持ってくる。グラスの上に右手首が来るようにして左手で神器を持っている。


「え、何する気ですか?本当に何する気ですか?」


「まぁ見てろって」


 黙って傍観してるがやっぱりだった。手首を神器で切って血がドバドバ出ている。僕は止めようと飛び出そうとするがバクに止められる。その後、グラスの3分の1くらいまで溜まると手首に力を入れて血を止める。そして、グラスを僕の目の前まで持ってきてこう言った。


「飲め」


「いやいや流石に今の見て飲む人居ないと思いますよ?」


「やりたい事は分かった。だが本当に平気なのか?そんな量飲ませたらお主になると思うのだが…」


「色々研究した結果、この量が最適って分かったんですよ」


「何がしたいのかさっぱりなんですが!」


 ケルトさんの血を飲むなんて絶対したくない。これを飲まないと死ぬくらいないとしたくない。


「まぁ簡単に言えば、これはお前が飲む1日分の血だ。飲めば24時間、俺の再生能力が少しだけ手に入る。ま、腕や足は4回、首とか脳とか心臓は1回ってとこだな。時間が経つにつれて再生速度や回数が少なくなる。

 もっと簡単に言えば、1回までは死ねる」


「ケルトさんの血って危険なんですよね?飲んで平気なんですか?」


「危険だな。量が多過ぎるとお前の血や遺伝子が消えて俺のもんになる。だがその量じゃ平気だ。お前の血の方が圧倒的に多いから侵食はされねーよ。だが、さっきも言ったがあくまで24時間しかもたねー。1日1回。これを飲むのが絶対だ」


「まぁ試しに飲んでみると良いのではないか?」


 僕はグラスを睨みつけながら手で待つ。ケルトさん達の様子を伺うが逃してはくれなさそうだ。


(落ち着けイリウス!こんな修羅場何度だって潜り抜けたじゃないか!今回は血を飲むだけだ!)


 僕は覚悟を決めて思いっきり飲み干した。


「ぶはーー…はぁ…はぁ…」


「良い飲みっぷりだな。味はどうだ?」


「美味しくないですよ!なんか…体が変な感じです…力がみなぎると言うか…」


「成功だな。試しに腕切ってみるか」


「絶対やめてください」


「冗談だよ。だが一応ちょっとした切り傷くらいは付けさせてくれな」


 そう言って僕の腕に刀を置き、スッと切る。するとその傷はすぐに塞がり、跡さえ残らなかった。


「よし、これでOKだ。誰かに襲われても俺らを呼べる時間くらいは稼げるだろ」


「すごいです…でも治る時少し痛いんですが…」


「あ、それは多分副作用だな。1ヶ月くらい飲み続ければ治ると思うからそれまでは我慢しろよ」


 今日からケルトさんの血を飲むことになったが、意味があることなんだろうか…

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