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第33話 ーー知らない事ーー

「我の勝ちだな。もちろん攻撃側だ」


「ちぇ、防御側かよ」


 前回、僕らは修行の為にバクのハコニワへと行くことになった。僕らは突如として行われた、トーナメント形式のバトルをするんだが、詳しい事は前回を見てね。


「ケルトさんがんばれー。バクもがんばれー」


「がんばれがんばれー」


 僕らは特にする事もなく適当に応援することに


「何かあの応援気が散るな」


「適当感あってイライラするの。まぁ良い、始めるぞ」


「ええ、好きなタイミングでどうぞ」


 ケルトさんは半分舐めた顔でバクを嘲笑う。そんなのお構いなしにバクが本気の顔をする。


不可避ノ刃物(アンアボイドナイフ)


 突如として現れた数えきれない量のナイフ。ナイフは一つ一つに意思があるかのような挙動でケルトさんに飛んでいく。


「初手から逃げるだけじゃ、つまんねーしな!」


 そう言うと地面を叩きつけて衝撃波でナイフを吹き飛ばす。だが、休む暇もなく第二陣が押し寄せる。


「うおっとあぶねっ!」


「あれ…ナイフが学んでる…?」


 何回か衝撃波で吹き飛ばされているが、段々とケルトさんにナイフが届いてきている。衝撃派を避けるような不自然な動きをするのに僕は不信感を覚える。


「少し違うな。学んでるのはナイフじゃない。神力だ」


「神力が…学ぶ?」


「そういえば言ってなかったが、主の再生能力は知ってるだろ?」


「はい、傷が異様な速さで治ってます。トランプに襲われた時見ました」


 ケルトさん達は矢が刺さった時治らなかったのにバクだけは治っていた。少し違和感はあったのだが。


「あれは神力によるものでな。主の能力の一つ<不老不死になる能力>でな。主の血液には常に神力が混ざっていてな、主は神力が尽きない限り死なん」


「それと何の関係が?」


「主は神力に命令を出していると言う事だ。傷があれば治す、どこに傷があってどう治せば良いか。神力が自身で考える事になる。通常意思のない細胞のようや神力だが、ずっとそんな調子なら学ぶようにもなる」


「神力が学ぶ…ですか」


 僕は何か不信感を得る。神力は神の力であって細胞のように生きているものじゃない。人間で言う意思と同じだ。右手を挙げ続ければ頭で考えなくても右手が挙がるのか?神力に対する探究心が進む。


「めんどくさくなってきたな。仕方ねー、神器使うか」


 ケルトさんは気だるそうな顔をしながらも目は本気だ。右手から神器を召喚して思いっきり掴む。第何陣かも分からないナイフの集団が襲いかかってくるが、刀の一振りで全て叩き落としてしまう。


「あれって刀ですよね!?あんな使い方するんですか普通??」


「まぁあいつにとっては刀と言うより刃物だからな。包丁でも武器になると思ったらあんな風に振り回すぞ」


「おいそこ!陰で悪口言ってんじゃねー!後包丁は振り回さねーよ!教育に悪いだろ!」


 僕がトラさんに解説されている所を遠くから大声で怒りながら指摘する。


「余所見をしても平気と言うことか。1分か、このままでは拉致があかんの。仕方がないの、使うか。虹玉(こうぎょく)


「うげ、あれか」


 バクは左手に妙な玉を持っている。占いとかに使うような水晶くらいの大きさで、中は黒く濁っている。そういえば見たことあるような…


「思い出した!トランプと戦ってた時一瞬出してた!」


「そうなのか?お前が攻撃すると思って使わなかったんだろうな」


「どういうことですか?」


「見ていれば分かる」


 バクが左手を掲げると途端に玉が強い光を放ち出す。


「何ですかあれ!眩しすぎて目開けられないです!」


「あれが虹玉、強い光を放つ技だ。主には何の影響もないがな。だが、あれは条件型の能力でな」


「条件…?」


 眩しいながらも光を遮って頑張って見ていると、光源が下にボトッと落ちる。僕は玉が落ちたのかと思いチラッと見てみるとバクの指が見えた。


「あ!バク倒れてます!バクにも影響あるんじゃないですか?」


「よく見ろ、と言っても見えんか。主は倒れてなんか居ないぞ」


 トラさんがそう言うからバクの顔を見ようと腕を見回すが、腕の先が無いように見えた。まさかと思いケルトさんの方に目をやると、左腕の無いバクがケルトさんと戦っている。


「ト、トラさん!?バクの腕、腕が!」


「あれが条件。手の上に無いと発動しないんだ。主はああやって腕を自分で切り落として戦う事が多い。今更驚くな」


「無理言わないでください!」


 まるで当たり前かのように話し出す素振りは相変わらずだ。とはいえ確かにこの生活を何百年もしているとそうなるのかもしれない。僕はバクとケルトさんの影を見ながらそう思った。


「あと30秒だ」


「ち、追い込みをかけるぞ!」


「逃げ切ってやんよ!」


 どちらも攻防が完璧だ。まるで普通に戦ってるように見えるが、ケルトさんは一回も食らってはいけないと言うルールがある。そう考えると、バクとケルトさんには結構圧倒的な戦力差があるのかもしれない。


「すごい…あんな量のナイフ飛ばしながら自分に当たってない…」


「残り10秒!」


(準備は整った。やるしかないの)


(なーんか準備してやがんな〜)


 バクはさっきよりもナイフの量が明らかに増えている。2倍3倍と言うよりも10倍ぐらい。その猛攻にも耐えつつバク本体の相手をしているケルトさんは、既に動きが見えない。残像すら残らないくらいの速さで動いている。


「来た!強制受信(コンペルコール)!」


「やっぱりやりやがったか!」


 バクは唐突にケルトさんの後ろに現れる。予想していたケルトさんは既に準備をしており、バクの刃を受け止める。そしてすぐに、


「終ー了ー!」


 トラさんのストップがかかる。試合結果は逃げ切ったケルトさんの勝ちだ。


「ち、負けてしもうたか」


「ご主人様…修行してますか?前の変わらない気が…」


「お前らが強くなりすぎなのだ!」


 ケルトさんは半ば心配気味な顔で聞くが、バクは怒って返す。試合結果ではバクの負けだが、どっちも強い事には変わらなかった。


「2人とも強いです…トラさんも強いし…僕だけ場違いなんじゃ…うぅ…」


「あー泣くな泣くな。お前まだガキなんだからこれからがあるだろ?俺らだってガキの時からこんなんじゃねーんだからよ」


 涙目でうずくまる僕を見て、ケルトさんは汗を拭きながら慰める。


「ケルトさんの子供時代ですか…?」


 ビクッと身体を揺らしたケルトさんだが、何でそんな事をしたのか理解出来なかった。少し考えたのか気まずそうな顔をしてこっちを向いた。


「良いか?世の中には知らなくて良い事ってのがあるんだぜ?つまり俺の過去は知らなくて良い事なんだぞ」


「言いたくないですか?」


「言いたくない」


「そうですか…」


 変な事を言って来たが結局単純な理由だ。誤魔化す癖があるのは相変わらずだな。


「雑談は終わったか?ケルト対トラをやりたい所なんだが」


「えーちょっとは休ませて下さいよー」


 気だるそうに言いながら僕の隣に座る。


「少し休んだらすぐに開始するからな。トラも準備しておけ」


「「はーい」」


 次はケルトさんとトラさん。どんな戦いが繰り広げられるのか。

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