第30話 ーートランプーー
(今度はどこですか?)
「秘密基地だよ。さっきまで居たのもそうだったんだけどね、工事の関係で無くなっちゃったんだ」
(中学生くらいですね。みんなお面を着けてます…)
景色は一変して少し都会に近くなっていた。大きなビル状の建物が見える。
「そんでさー。やっぱ仮面外せって言われるんだけど、仮面外したらすぐ無理だって言うんだぜ?酷いよなー」
「俺も一緒だ。どの高校も受け入れてくれない」
「中学までは義務だから受け入れんのにな」
「ただの呪いなのに…酷いよね…」
(呪い…?あの顔って呪いなの?)
僕は驚いた。顔のことじゃない。そんな呪いがあると言うことにだ。
「流石に高校行かなきゃ魔法の事勉強出来ねーよなー」
「まだ射撃系魔法使えてないよ…」
「俺も占い出来てない。あ、ハートはどう?精神系魔法使えそう?」
「勉強はしてるけど…ちょっとだけなら」
「すげーじゃん!見せて見せて!」
「精神系が使えるとは…すごいな」
「う、うん」
ハートはダイヤに手を向けて、呪文を唱え始める。
「・・・好意の反転。これでかかったはず…ダイヤってみかん好きだったよね、はい」
そう言うとダイヤにみかんを与える。すると、ダイヤは少し嫌そうな顔をする。
「これ好き?」
「これは…あまり好きではないな」
「おー!凄いじゃん!」
「演技はしてる様子ないし、マジで魔法かけれてるじゃん!」
「えへへ…ありがと」
「っは!何故みかんを嫌っていたんだ?」
「「「あははははは」」」
(他愛もない会話…みんな楽しそう。社会から隔離されてても、支え合って生きてる)
「それがトランプだからね」
「よし決めた!みんなで大学行こうぜ!」
「だ、大学!?高校無理だったのに大学なんて…」
「俺聞いたことある。大学は実力重視だから魔法が上手く使えれば行けるって。みんなで魔法の練習しようぜ!」
「それで上手くいくのか?まず最初に、魔法って基本的に高校でやるものだろ?」
「確かに…」
「じゃあさ、俺らで作ろう!新しい魔法を!それでいつかこの顔の呪いも解いてさ!たくさんの人を助けようよ!」
「うん!僕もそれが良いと思う!ヒーローになりたい!」
「じゃあ約束だ!俺らで呪いを解いて、そん時に仮面を外そうぜ!みんなの素顔とか楽しみにしてるぞ!」
「良い考えだな。それならやる気も出る」
「よし!絶対に呪いを解くぞー!」
「「「おー!!」」」
僕は涙が出てきた。こんなに良い子だったのに、未来では、あんなことになってるなんて。
「その後、我々は勉強をして大学に受かった。ある程度拒絶はされたけど、まぁ実力はあったから手は出してこなかったよ。僕らが悪役になるのは、そう遠い未来じゃなかった」
「どうしてですか!人を助けたいって!ヒーローになりたいって言ってたじゃないですか!」
「難しい質問には答えられない。答えはきっと続きを見れば分かるさ」
そう言われて、僕は続きを見ることになる。既に心は窮屈で、あまり見たくない。でもそんなの関係なく、場面は移る。
「今日も集まったな?じゃあトランプ、出撃だ!」
「「「おー!」」」
「大学はそれぞれ別の大学に行った。専門分野が違うからね。それでも僕らは繋がってたさ。毎晩こっそり集まって悪党を倒してたんだ」
(みんな、いつもの仮面をしてます…)
「ヒーローと言うのはバレちゃいけない。影のヒーローだからこそカッコいいと思ってたからね。顔を隠したかったのもあるけど」
夜の街、魔法が蔓延る世界でも、事件というのは起きるものだ。
「全員下がれぇぇぇ!!こいつをぶっ殺すぞ!!」
「キャー!」
「犯人は現在も人質を盾に立てこもって居ます!」
悪い人は人質を取って立てこもっている。警察さん達も下手に手を出さないようだ。
「俺らの出番だ!スペード!」
「あいよ!」
クローバーと手を取ったスペードは得意の射撃魔法を放つ。その攻撃は綺麗に人質を避けて、犯人の服に刺さり、壁に固定される。
「な、何だこれ!誰だお前ら!くそっ!荒れ狂う雷!」
「ダイヤ!」
「承知した!」
悪党が咄嗟に放った魔法を、ダイヤは全て受けきる。傷の一つも付いていない。
「今だ!ハート!」
「任せて!強制睡眠!」
ハートが悪党の頭に触れてそう言うと、悪党はスヤスヤと眠ってしまう。
「き、君たちは何だね!」
「ふ、正義の味方さ」
サッとトランプは消えてしまう。周りの人はザワザワし始めて称賛の声が上がっていった。
「ここからトランプの人気は好調。どんどんと認知度も上がって行った。悪党が来た時には警察よりも我々を呼ぶ声の方が多くなった。「あれ」が起きるまではな」
「あれ…?」
場面が切り替わり、今度も夜だ。少し月日が経ったのか、4人とも大人びたように見えた。いつも通り慣れた手つきで悪党を退治していたトランプだが、暴れた犯人にハートが、仮面を外されてしまった。
「あ、…」
「え…」
場は静かに固まった。何の声も、歓声も、悲鳴もない。ハートは急いで仮面を拾って着ける。その後は逃げるように去った。
「ここからトランプの人気は無くなった。もちろん顔じゃないなんて声もあったが、呪われた者として見られる目は変わらなかった。そこからトランプの活動は少なくなった」
(そんな…そんなのって無いよ…)
僕はその光景を見て、胸が苦しくなった。ヒーローになりたかった4人が、呪いのせいで…
「ごめんみんな…僕のせいで…」
「お前は悪くねーよ。ああ言うやつはどうせ何でもケチつけて来るんだよ」
「そうだぞ。助けてやったって言うのにあの反応だぜ?ひでーよな」
「そういえば、呪いの解き方は分かったのか?」
「それが…全く…この世界の物じゃないみたいなんだけどさ」
「え?どゆこと?別の世界があるの?」
「うん…どうやらあるらしいんだよね。1番有名なのが、『ローディア』。全ての世界の道となる世界」
「じゃあそこに呪いをかけた奴がいるとか?」
「うーん…別の世界って言っても何百種類もあるらしいから、探すとなると難しいかも…」
「とりあえず今日はもう遅くなってしまった。みんな帰ろう」
「うん」
みんなまた明日だったり、じゃあねだったり言って、その場を後にした。僕はあくまでハートの記憶を見る存在だから、ハートの後を追わざるを得ない。
(そういえばハートさんの家知らないな。家族とかも居るんだよね)
僕はそう思いながら後を追いかける。人気の無い道ばかり選んでいるのはきっと顔のせいだろう。
しばらく歩いていると、急にハートが立ち止まる。僕が不思議に思った瞬間走り出した。
(え?なになに急に!ってうわぁぁぁぁ!)
僕はハートが走るのに合わせて身体が引っ張られた。ハートの記憶しか見れない僕がハートから離れることは出来ない証だろう。そのままその力に身を任せておくと、空に登る煙が見えてきた。
(まさか…そんなわけないよね…)
予想は的中した。
「何で…何で俺ん家が燃えたんだよ!母さん!父さん!」
僕は何も言えなかった。思えなかった。ただその場に立ち尽くす事しか出来ない。ハートが膝をついて、燃えている家を眺めていると炎が文字のようになっていく。
「化け物が、、か。結局これかよ。は…ははは。何が人助けだ…何がヒーローだ…」
「違う!!ダメ!!!」
僕はつい飛び出してしまった。ハートの手を取ろうと、説得しようとしたが僕の手が触れた瞬間、場面は移り変わる。
「もう、人助けなんてしたくない」
「…それもそうだな。この世は、人間は愚かな生き物だ」
「顔がみんなと違うとか同じとか、中身なんて誰も見ないんだ」
「この世界には…悪が必要なんだ」
「輝きなんていらない」
「優しさなんかも要らない」
「全てはただ」
「我々のために」
全員何かがあったような厳格な顔をしている。僕は、気付かないうちに涙が溢れてしまった。
その後はパラパラと捲るように流れて行った。初めて人を殺める瞬間や、魔法の研究をしている所。どこでも、決して仮面は外していなかった。
「これが見せたかった記憶だ。どうだい?」
「どうして…どうしてあなた方がこんな目に…。あなた方がやった行いは、決して許される事じゃありません…でも、それでも、僕だったら…」
僕は泣きながら喋ろうとした。
「その続きは、私ではなく、本体に伝えてくれ。きっと…救われてくれる」
「……はい!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……う〜ん?」
「おや、起きたようだな」
「随分早いの。まだ1分も経ってないぞ」
「どうだい。私の記憶を見て…これから殺されるんだ。良心が痛むだろう?最後の仕返しさ」
「てめー…ふざけやがって!」
「待ってください!」
僕は神器を振り下ろそうとしたケルトさんを止める。
「トラさん、目隠しをやめてください」
「でも!」
「やめてください」
覚悟は決まっていた。目隠しをやめてもらい、ハートの元に行く。
「あなた方がした事は、決して許される事じゃありません。でも、起きた事、あなた方の事は同情します。僕だったら…」
深呼吸をして、言う。
「良い行いをした、あなた方を讃えます」
朝日が僕らを差す。僕の涙がオレンジ色に写りながらも、綺麗に輝く。
「ははは…僕の記憶は、少しは君の糧になったみたいだね。良かったよ…」
「ハー…ト…」
「イリウス君。ありがとう…2人にも…伝えて…おくよ」
「…はい」
心なしか、ハートさんは喜んでるように見えた。この人達も、褒められたかっただけだったのかもな。
「ま、せいぜい…」
ケルトさんは神器を掲げる。僕はもう、止めない。
「地獄で笑ってろ」
僕らは帰路に着く。朝日を浴びながら、何も言わないまま、森を歩き続ける。
【職場見学編 終】
職場見学編はこれで終わりです!伏線がいくつか張ってあったので、まだ最初から見てないって人は是非、最初からご覧ください!そしてここまで見て面白いと思ってくれたらブクマや、感想、評価などを貰えるとモチベアップになるのでよろしくお願いします!これから先に期待しておいて下さい!




