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第28話 ーー命懸けーー

 ドゴーンと大きな物が壊れる音が響く。床は穴だらけで、壁も崩れている場所が多い。そんな中戦っているのは、紛れもない僕だ。

 前回、トランプに捕まり僕らは命の危機にある。そんな中トランプは僕にあるゲームを仕掛けた。僕は作戦があり、成功すれば全員助かる。しかし、それにはケルトさんに一泡吹かせる必要があるんだ。


「おいおい、逃げてるだけじゃ勝てねーぞ?おら!」


(元のケルトさんよりも攻撃は単調で読みやすい。けどパワーとスピードがやばい!スピードはいつもより遅いけど、あの拳は当たったら致命傷…神力を固めて壁を作れば少しは気休めになると思うけどそれでもリスクが大きい…)


 僕は攻撃を避けながらビームを撃つので精一杯だった。ピョンピョンと飛び回ったり、壁を走ったりして何とか躱わせてはいるがそれも時間の問題。


(早くなってきてる…?)


 そう、ケルトさんの別人格が身体の使い方に慣れてきている。長期戦になればなるほど不利になる。それに気付いているのは僕だけじゃない。


「あれはまずいの。作戦があると言っていたが…このままでは殺される」


「作戦…ここから全員助かるなんてそんなの無理な気がします。強いて言うならケルトをあの魔法から解放出来れば…」


「その術がイリウスにあるとするなら…いいや、我々が考えても始まらん。賭けよう、あの子に」


 僕は早くなっていく動きに着いていく。紙一重で攻撃を躱す。体力も限界が近い。神力も減らされていたから底を尽きる。急がないとと自分を急かす。


(あの子供…神力を吸い上げる装置を故障させた張本人。お陰で全て吸い取ることが出来なかった。さっき言っていた言葉はどういう意味だ?全員助かるだと?)


(そうだ。邪魔は入らないんだ。周りに気は散らすな!この一瞬を集中させろ!)


 僕は神器を構え、集中する。みんなの場所も、声も、音も、全てを絶って、目を開き、ケルトさんを見て、切る。


「お?」


 ケルトさんの左腕が宙を舞う。すかさず僕の追撃を右腕目掛けて!


「へ、馬鹿だな、お前」


 僕は盛大に蹴り上げられた。咄嗟に神力の壁を作ったものの、血を吹き出してしまった。思い出した。ケルトさんは僕に蹴りの技はほとんど使った事がない。地上に居る時は基本手しか使っていなかった。その固定概念が仇となった。


「もうだいぶ体力も消費しただろ?楽になりたいだろ?殺してやるからじっとしてろよ雑魚」


「…でした」


「あ?」


「そうでした…あなたは…ゲボッ…ケルトさんじゃない」


 僕は息切れを起こして、血を吐きながらそう言った。


「まぁそうだな。身体がこいつってだけで本当の人格は無いわけだしな。ハート様!これが終わったら俺に名前付けて下さいよ!」


「あなたにはケルトさんの記憶もない…」


「そうだな。だからお前がケルトにとってどんな存在であろうとすっきり殺せるってわけだな」


「いいえ。もう、あなたの負けです」


 僕は少ないの神力を使う。テレポートを何重にも使って、相手を翻弄する。


「んな事しても無駄だって〜。圧倒的なパワーとスピードには戦法とか作戦とか効かねーっつーの」


 そんな事を言われながらも僕は翻弄を続け、ケルトさんの正面に出て、攻撃をしようと剣を振り上げる。


「おら、脳天ぶちまけな」


 ケルトさんは、いや、ケルトさんの身体を持った何かは、僕の頭を殴った。

 はずだった。


「な、感触がねー。何だ、これ」


「これが僕の能力、歪みを操る能力。2度目は通用しないはずでも、あなたには初めての攻撃ですね。僕はそこには居ませんよ」


 僕がホログラムのように消えると、殴ったものはただの空気、僕はその少し下に居る。


「これで終わりです!」


 そう言って、剣を投げ捨てて顔目掛けて思いっきり殴った。


「は?」


 ケルトさんの身体に僕のパンチなんて効くわけなかった。そのまま体勢も崩さずに頬に殴り返された。


「あっはっは。やっぱ馬鹿だなお前!いや、親だから殺せねーのか?剣で斬れば良いものを!あっはっは」


 僕は殴られた頬を赤くしながら勝利を確信する。


「さっきも言ったでしょう。僕の勝ちです。

          契約です!」


「なに!?」


 その場に居た全員が驚いた。僕とケルトさんの目の前には光る紙が浮いている。


「契約だと?何だそれは!そんなの情報に無いぞ!ケルト!早くそいつを殺せ!」


 ケルトさんの身体にいる何かは状況が掴めていない様子だ。そんなの構わずに、僕は契約を遂行する。


「ケルトさん…目を覚ましてくださーーーーい!!!!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「何で…何で…俺が…イリウスを……やめろ…もう…ダメだ…俺なんてどうでも良い…だから…だから…」


 ガラスのような透明な壁には、ケルトさんの身体が見ている景色が映る。何度も壊そうとしたのか、ケルトさんの拳は、赤くなっている。


「…ルトさん」

「ケルトさん!」


「イリウス…俺は…もう…行きたくない…操られて…殺そうとして…顔…合わせられない…どんな顔して…会えば良いんだよ…」


「僕は、それでも。そんなケルトさんでも。立派なお父さんですよ!」


 僕のような光は手を伸ばす。ケルトさんは涙を流しながら、

        その手を取った

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ケルトさん!戻りましたか?」


「ん?あぁ…」


「それなら早くバク達を…」


 僕がバク達の檻に目をやった時には既に檻は無かった。あれ?と思いケルトさんに目をやると、片手で檻を掴んでる。

 そのまま檻をこじ開けていたが、ケルトさんは俯いたままだ。


「トラ、イリウスとご主人様を連れて雲ぐらいまで飛んでくれ。今すぐ」


「あ、あぁ…分かった。イリウス、早くおいで」


「ふざけるな!何が起きている!戦闘員全員、撃て!」


「させません!歪め!」


 途端にケルトさんに向けて大量の矢が放たれるが全て歪みで跳ね除ける。その後は考えてる暇もなく気付いたら空高くに居た。


「うぇぇ?ってトラさん!何でケルトさん置いてくんですか!僕だけでも残りますー!」


「暴れるなイリウス!置いて行ったわけではない!」


「ケルトが本気を出すんだ。あいつは今、とてつもなく怒っているからな。ほら見ろ」


 バクが手を差し出すと、その手はとても震えている。


「お主には影響が無いように抑えていたが、あの殺気は歴代一位かもしれんな」


 よく分からないまま雲があるくらいの所まで飛んだ。僕達はトラさんに掴まったまま神力で浮いているが、全く何も起こっている様子がない。そう思っていた時。


「ん?トラさん、バク、今銀色にピカッてしなかった?あの建物中心に円みたいに」


「そうだな。もうすぐ音も届くだろう」


 バクがそう言った途端、ゴゴゴゴと音が鳴り始める。


「な、何!何!地震?何!」


「下を見ていろ」


 言われた通り下を見ていると、建物が崩れ始めている。と言うか、周りの木々も倒れ始めている。ただ倒れ方が少しおかしいように思えた。さっき見えた光の範囲が綺麗に切れている。


「な、何が起こってるの…?」


 しばらくしたら音も収まり、トラさんは切れている所と切れていない所の境界ぐらいに降りた。木々は輪切のように切れており、丸太がたくさん落ちてるイメージだ。


「あれ、何なんですか?って言うか何でバクだけトラさんの肩乗ってるの!僕も僕も」


「ダメだ。理由があるからな。ほら、トラ。見えてきたから、目を隠してやれ」


「はい。イリウス、我慢しておけな」


「もう!何でですか!僕はもう十分大人です!」


 僕はトラさんのせいで真っ暗な景色しか見えない。ただ、指の間から入る光が多いのできっと木が切れている所に入ったのだろう。僕は必死に手を退けようとするがびくともしない。


「そんなに見たいなら言葉で教えてやる。

 すぐそばに人が倒れているな、足が輪切りになっているな。身体を伏せたんだろう、脳みそがさらけ出てるな。

 お、あっちのやつはまだ生きてるぞ。喉が中途半端に切れていて声も出せない様子だ。ピクピク身体だけは動いているな。上半身と下半身がバラバラになっていてあれでは1分も持たないな

 どうだ?見たいか?」


 僕は震えながら答える。


「見たく…無いです…」


 僕は目を塞がれたまま歩いていった。

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