第26話 ーー四大勢力ーー
「流石だな。トライアングルよ」
前回僕らは何者達かに襲われた。数も多くケルトさんが食らうほどの攻撃をしてくる。囲まれていて圧倒的にピンチな状態で響いた低い声の正体は。
「久しぶりじゃねーか。ダイヤ」
「その顔、忘れやしないぞ、ケルト。貴様は我が同士、クローバーとスペードを殺した存在。仇、取らせてもらうぞ」
顔に大きなダイア型の仮面をしている。目が見えるようになっている穴は食い違ったような適当に空いていた。マントを羽織っていて頭に王冠を付けている。
「仇だー?てめーらから来たから死んだんだろ!恨むんなら弱い自分たちを恨め!」
そう言ってケルトさんは刺さった矢を引き抜こうとするが一瞬止まる。再び抜こうとして矢を思いっきり引き抜くと、血が想像以上に溢れる。
「ケルト!その矢…体の中で開くようになってるのか…」
「そうみたいっすね…」(…?傷が治らない…?)
「どうした。何故傷を治さない」
「その矢には特殊な魔法がこもっている。お前の再生能力は使えんよ」
「ケルトさん!血が凄いです!早く止めなきゃ…」
僕は衝撃からやっと自我を取り戻した。自分だけ固まってる訳には行かないと思い最善を尽くす。
「トライアングルでは見たことがないな。まぁ良い。まとめて殺す。お前ら、放て」
リーダーの人、ダイヤは弓矢を持った人達にそう言う。僕はそれがさっきの攻撃だと理解するのは難しく無かった。
「歪め!」
僕はみんなを囲うように歪みを張り、飛んできた矢を別の方向へ飛ばす。いくつかは打った人に当たった。
「ほう…これはまた厄介な」
「ケルトさん。少し痛いかもしれません…」
「構わん、早くやれ」
僕は弓矢を塞いでる間にケルトさんの腹の傷にビームを当てる。血が焼けるような匂いに鼻が曲がりそうだったがそんなこと考えてる暇はない。
「動きすぎると止血解けちゃいますからね!」
「分かってるさ!」
ケルトさんがそう言うと弓を持った人達への攻撃を開始する。ケルトさんが踏み出した途端バクとトラさんも踏み出し、同時に攻撃を開始する。弓以外にも剣を取り出したりする戦闘員達が居たが、圧倒的なスピードとパワーでどんどん払い除けていった。
(僕も何かを…でも、ビームがケルトさん達に当たっちゃうかも…)
「なるほどな。新しい者もまた、厄介というわけか。まぁ良いさ、お前達、早く立ち上がれ」
ダイヤはおかしなことを言っていると思った。だって今や戦闘員達はケルトさん達にやられてほとんど残っていない。あの3人の攻撃を食らって生きてるわけがない。そう思っていたのに。
「ぐはぁ!」「くっ…」 「ガッ…!」
3人の腕、腹、足、色々な所に矢が貫通する。3人とも飛び回っていたが落っこちて地面に伏せてしまう。
「そんな…何で!」
「なるほどな…ダイヤ…お前、物理攻撃無効が他人にも付与出来るのか」
「あぁ、気付くのが遅かったんだな。そんな事も出来ずにお前らと殺りあうとでも思っていたのか。無様だ」
「ナイフの感覚が薄かったのもそれが原因か…」
バクは刺さった矢を抜くが傷が治っていく。何で治るのかは分からないがもしかしたらと思った。
(やばい、このままだと3人ともやられちゃう!)
3人のすぐそばに剣を持った戦闘員が集まる。僕はこっそりバクに2人を連れて空に飛んでと合図を送る。
「今度こそさらばだ。地獄で苦しめ」
「今だよ!」
「ふんぬっ!」
「距離の歪み!」
僕はケルトさん達を掴んでテレポートをした。しばらくの時間稼ぎにはなると思ったからだ。着いた場所は来たことがあるであろう場所だ。でも木が視界を邪魔してそんなに遠くまで行かなかった。
「洞窟のような場所がある。ひとまずそこに隠れよう」
そう提案を受けて、僕はケルトさんに、バクはトラさんに肩を貸して連れて行った。
はぁはぁとケルトさんとトラさんが息切れを起こしている姿を初めて見て、心配でたまらない。
「…時間の問題ですね。勝算があるってことは逃げられる事も視野に入れてるはず…」
「喋るな。早く治さねば」
「治りませんよ。俺の血は徹底的に対策されてる。能力の事も知られてる。この状態からの勝ち目は皆無。全員無事に逃げれる可能性もとてつもなく低い」
「あの…何でケルトさん達の攻撃が通じなかったんですか…?」
「あのダイヤには、物理攻撃を無効にする魔法がある。俺らは見ての通り物理攻撃しか出来ないやつしか居ない。どっちにしろ倒すのは不可能だ」
場は完全に諦めムード。ケルトさん達はみんな物理攻撃で成り立っている。
「そ、それなら僕のビームがあります!それで勝てるでしょう?」
「バカ言うな。あいつらの目には能力者も視野に入れてる。それなりの対策もしてる。何より未熟者のお前じゃ勝てねーよ」
「静かに!」
遠くから探してる声が聞こえる。わざと声を出してるのは戦闘員が居なくなっていないか確認するためだろう。もし誰か1人でも返事が無くなったらそこに居ると言うことになるから。
「ともかく全員生き残るのは不可能ってこった」
「そんな!僕ならどうにか出来るんでしょう?諦めなければきっと…」
「俺が足止めするから、トラ。2人を頼む」
僕は固まってしまった。何を言ってるか分からなかったんだ。血だらけになってしまったケルトさんに寄り添って看病していて、ケルトさんの暖かさが少なくなっていくのを感じて。ケルトさんの…決意も感じて。笑っていた。ケルトさんは笑っていた。
「何を言ってる!お前だけ犠牲になるなど誰も許さないぞ!」
「ご主人様は、まぁ不老不死だし、何よりも世神様の憑き人だから無理だ。イリウスなんて足止めになりゃしないだろ。トラも役立たずだからな。逃げ足は早いのが猫科だろ。最後の力を振り絞って頑張れ」
「ふ、ふざけるな!そんなの我が…」
「嫌です!!!」
僕はやっと状況を理解した。つい大声で言ってしまったが聞かれてはないようだ。
「そんなの嫌です!僕…ずっと守られて来たんです!次は僕が守るんです!お世話になったのに…こんなの…ないです…。僕…もっともっと…一緒に…」
勝手に涙が溢れてしまう。拭いても拭いても次から次へと。そこで良い案を思いつく。
「そうです!ハコニワとかホールとかで逃げれば良いんです!僕神力残ってますし!それなら…」
みんな静まる。良い案だと思ったのに何で何も言わないのか。そう思っていたらバクが口を開く。
「あいつらもホールは持っている…ホールの性質上、さっき作られたホールの場所でもう一度ホールを使うと同じ場所に出てしまう。ハコニワは、外からの侵入も簡単に出来てしまうんだ…どんな手段を使っても、逃げ道なんて無いんだ…」
外からの声が段々と近くなってくる。
「トラ、早く2人とも連れてけ。あ、後これだ」
ケルトさんは自分の服をちぎってトラさんに渡す。
「イリウス用の目隠しだ。必要だろ」
「……本当に、良いのか?イリウスを置いていくんだぞ?」
「構わねーよ。その代わり、2人の事、頼むぜ」
「…………分かった」
トラさんはバクと僕を持ち上げる。声はどんどん近くなってくる。
「嫌です!トラさん!降ろしてください!目隠し取って下さい!ケルトさん!ケルトさん!」
「あっちから声がします!」
「見つかっちまったな。イリウス…昨日の約束、守れないかもしれねー。ごめんな」
「ケルトさん!ケルトさん!」
僕は必死に訴えるが、その声は届かない。バクとトラは目で合図をしてケルトを置いて飛び立った。
「居たぞ!みな、はなt」
戦闘員は命令をする前に吹っ飛ばされる。
「てめーらの相手はこの俺だ!!!誰1人!生かしては帰さねー!!!」
「哀れだな。まぁ良い。ひとまずこいつから殺して…」
「すまないすまない。少し遅れてしまったよ」
「遅かったな。『ハート』」
僕達はケルトさんを置いていった。1人で、戦って…僕達の為に…
「はぁ…はぁ…」
トラさんは森と荒野の境目まで来たところで疲れ果ててしまった。バクと僕をゆっくり下ろした後、地面に手を付いて、はぁはぁと息を切らしている。
「うわーーーーーん!!ゲルトざん!ゲルトざーーん!!!!」
「くそ………くそ………!」
僕は大泣きをして、バクは悔しそうに頭を抱えた。少しした後、ある程度疲れが取れたトラさんに宿まで連れてかれた




