第24話 ーー森の中ーー
前回、僕らは盗賊が居るとされる森の中に入った。木が生えに生えててジャングルみたいになってたが気温が高いわけでも極端に暗いわけでもない。僕のハコニワと比べるとこっちの森の方が圧倒的に見えづらいし動きづらい。
「全くこんな森に盗賊なんぞ居るのか?草が生えまくってて何も見えんぞ」
「確かに…僕らの背の高さじゃ草と同じくらいだもんね…」
僕とバクの身長はほぼ同じくらいで140センチほどだ。140センチも高くまで草が生えていると考えるとすごい高い。
「我慢して下さいよ。逆に丁度いいじゃないですか。その位置だと敵からも狙われずらいですよ」
「良いわけないだろ!肩に乗せろー!!」
そんなバクの要求を飲んでトラさんの肩に乗っている。一方僕はケルトさんの背中にしがみついている。
「それにしても、本当に居るのか不思議になるくらいだな。太陽の位置的に歩いて1時間は経ってる」
「詳しい位置までは書いてなかったからな。この広い森を探すしかない」
「僕が上から探しましょうか?森が凄すぎて何も見えないかもしれませんが集落とかあったら見えると思います!」
「一体俺がどれだけの危険を犯してお前を上空に解き放つんだ?敵が上に居ないなんて誰が言った?空への攻撃手段が無いなんて誰が言った?」
「もう…分かりましたよ、すいませんでしたよ」
僕は相変わらずの心配性を跳ね除ける。ケルトさんは納得行ってないようだったが僕はそれを無視する。
「そろそろ肩に乗るのも疲れてきたの。我が空に行こうか、それなら満足だろう?」
「まぁ、それなら…」
「あー!ずるいです!何で僕はダメなんですか!」
「それはだな…あ、そうそう!ご主人様は気配を消せるんだ。空に行っても気配を消せるから見つかんねーんだよ」
「………」
僕はこの扱いの差にムッとした顔をするがケルトさんは目を逸らす。バクがスッと空に浮かび上がり周りを見渡し、すぐに帰ってくる。
「あっちの方に集落っぽいのあったぞ。ついでに言うとこの森、とんでもなく広い」
「とりあえずあっちの方行ってみましょうか」
ひとまず目的地が決まり再び歩き始める。ケルトさん達は息切れ一つ無いけど平気なんだろうか。
少ししたらその集落に着いた。人がいるかもと警戒していたが人の気配はしない。木で出来た簡易的な家だったり、動物か何かを囲っていたであろう柵だったりがある。
「昔に人が住んでたって感じだな。柵もあるところ、この森には動物がいるんだな」
「人が別の所に行っちゃって縋れちゃったにしては妙な気がします…」
「誰かに襲撃されて逃げざるを得なかったと言ったところか。扉らしきものも壊れておる」
「焚き火…数日前に使った様子ですが。数日前となると盗賊のアジトという訳ではないでしょうし…」
「俺らと同じ、依頼を受けた奴だろうな。まだ帰ってねーらしいし、死んじまったのかもな」
「うーむ。難しい話なのですね…ってうわぁ!」
僕は家をチラチラと見て回っていた。ガラスのない窓のような場所から中を少し覗いたら、そこには人骨があったんだ。僕が叫んだからケルトさんが警戒しなからも素早くこっちへ来る。
「んだ、ただの骸骨じゃねーか。生きてるやつでも居んのかと思ったが。こんなんで驚いてんじゃねーよ」
「誰でも驚きますよ!死体みたいな物じゃないですか!」
「死体?ただの骨だろそいつ。死体っつーのはもっと肌が焼け爛れてたり、内臓飛び出てたり、脳みそぶちまけてたりするもんだ。こんなんで驚いてんなら今すぐ帰れ!」
「う…」
「まぁまぁ2人とも落ち着け。ケルトもそんなにムキになるな。イリウスもあまり驚くな。ケルトの言うことも一理ある。これからお主が見る世界はもっとえぐいことで溢れている」
「肌が焼け爛れてるだけなら良い方だな。内臓飛び出したまま助けてーなんて言われてみろ、イリウスならちびるかもな。はっはっは」
「怖すぎて笑い事じゃないんですが…」
そんな話をしながらその集落の安全確認が終わった。僕らは家の物や落ちていた枝などを集めて焚き火の出来そうな所で座る。
「とりあえず使えそうなもんは集めたが…今日は野宿だな」
「まぁ安全な場所が見つかっただけでも良しとするか」
「本当に安全かは分かりませんがね」
警戒を怠る僕らとは別に常に警戒心マックスなトラさん。いつも無口だけどこういう所は本当すごい。
「色々してる内に日が暮れちまうな。とりあえず食料調達してくるぞ。食えそうなもんろくになかったしな」
「あ、僕も行きたいです!」
「ダメ、お前は危ない」
「またですか!!」
「まぁまぁ…ケルトとトラは川と肉類を探してきてくれぬか?虫は勘弁だがな。イリウスは我と一緒に食べれそうな植物を探そう」
「分かりました〜」
「うん…」
そう言うことで僕らは食糧探しに出ることとなった。ケルトさん達は僕らが着いていないからか、さっきまでの速度より100倍くらいの速度で移動した。僕とバクは離れないように近くで木や草を眺めてる。
「バク!木の実いっぱいある!オレンジみたいな形してる」
「一応取っておこう。毒の有無はケルトに食べさせれば分かる」
「?何でケルトさんに食べさせるの?毒あったら死んじゃうよ?」
「あいつはそんなに脆くないさ。あいつの五感は凄まじい。視覚も聴覚も嗅覚も味覚も触覚も、全部お手のものだ。トラも負けてないがな!」
「なるほど…ねぇバク。僕ってさ、全然期待されてないのかな」
僕は寂しかった。何も任せてもらえなくて、信用されてないのかと思ってしまった。バクの前では悲しい顔は見せたくなかったが、きっと悲しい顔をして言ったんだろう。
「それは無いな、絶対。逆に期待されてるからこそ失いたくないんだ。お主は誰よりも大事にされておる。我でも嫉妬するほどだ。もっと自信を持って胸を張れ」
「うん!」
僕は一気に元気になった。早く、もっと早く、ケルトさんの期待に応えたいな、そんな事を思って。
しばらく集めて、たくさんの植物を持ってきて待機することになった。
「2人とも遅いの〜」
「そうだね〜」
僕らは風で木の葉が揺れる音を聞いて少し落ち着く。
「そういえば、我の能力の条件について言ってなかったな」
「あ、そうだったね」
「条件は<電話に出ること>だ」
…?だいぶ欠点が見つかりそうな条件だ。
「相手が携帯持ってなきゃいけないじゃん…」
「ふっふっふ。そんな時のためにこの能力があるのだ!見よ!強制受信!」
「わ、僕の頭の上に電話のマークが」
「しばらく経つと電話が掛かれるようになる。その状態で我のもう一つの神器、この受話器で電話をかけるんだ。ちなみにそのマークは見えなくすることも出来るぞ」
「すごーい!これで相手の後ろに行けるの?それってテレポートみたいなもの?」
「察しが良いの〜。そうだとも。これはテレポート。世界は跨げないが電話さえ出れれば何処へでもテレポート可能だ」
「なるほど〜」
僕が電話に出ればすぐにバクが来てくれるのか。そう考えると安心できる。
「随分楽しそうにお喋りしてるじゃねーか。帰ったぞ」
「あ、ケルトさんおかえりなさ…い?」
ケルトさんが肩に担いで連れてきたのは動物だった。ゴトっと強い音を立てて肩から下ろしたが何の動物か分からない。
「えっと…イノシ…クマですか?」
「知らん」
「帰りましたよ。飲めそうな水場を見つけたので持ってきました」
「おー。ありがとうな2人とも」
地面には大量の食べ物が転がっている。こんなにあれば安心だ。
「とりあえず解体しなきゃいけねーし、その木の実…何十種類取ったんですか…」
「さぁな。どれが食べれるか分からんしの」
「時間かかるやつだな。イリウス、ちょっとどっか行ってろ」
「な、何でですか!」
「ケルトなりの気遣いだろう。その動物の解体とか見せたくないんだろうな」
「むむむ…」
悔しいが僕が苦手なのは認めざるを得ない。そう言って僕は少し離れた所に来た。
「もう!ケルトさんはやっぱり僕を子供扱いしてます!」
僕は落ちてた木の枝で魔法陣を描く練習をしながら不満を漏らす。
日が落ちてきて地上もオレンジ色になってきた。魔法陣を描き始めてどれくらい経ったか分からないが100個ぐらい描いた気がする。
「遅いのです…どれだけ待たせるのです…暗くなってきて怖いのです〜」
「イリウスーー!!!!!飯だぞーー!!!!」
とてつもない大声で呼ばれた。それでも少し小さめに聞こえたから結構遠くに来ちゃったんだろう。焚き火をしてる煙を頼りに僕はみんなの場所に戻る。




