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第20話 ーー決断の時ーー

「僕決めました!」


「「………」」


 バクとトラさんは息を呑む。ケルトさんは自信満々に腕を組みニヤついている。


「《煌牙組》に決めました!」


「おっしゃーーーー!!!」


「ぬぬぬ…ダメだったか…」


 僕は前回までケルトのグループとバク達のグループの見学に行ってきていた。2つのグループの人柄や強さ、自身への影響、神様の指示で決めた。バクとトラさんは悔しそうで少し申し訳ないけど僕はこの選択肢に決めた。


「ごめんなさい、バク、トラさん」


「謝る事ではないぞ。お主が良いと思った道に行け」


「煌牙組が嫌になったらいつでも来るんだぞ」


「はい!」


 トラさんとバクは心配なようだ。確かに顔も怖かったしどんな扱いを受けるかは想像できない。


「おいおい俺んとこは別に嫌になる要素ねーぞ?」


「みんな顔が怖いです…」


 そんなこんなで僕は今日から煌牙組所属だ。


「はー。やっとひと息つけたなー」


「ほんとだの。そういえばイリウス、修行の調子はどうだ?」


「良い感じだよ!段々と色んな技が思い浮かんで来たし!」


「ほんとか?じゃあ1勝負しねーか!良いよな!」


「えぇ…」


 僕は嫌そうな顔をしたがそんなの関係ないかのように僕を連れてハコニワに入る。


「おーっし。じゃあ始めるぞ!」


「がんばれーイリウスー」


「負けるなーイリウスー」


「ふざけないでくださいよ…」


 急に始まる修行だが新しい技が溜まってたのは確か。試すチャンスが来たと思えば上々だ。僕は覚悟を決めて試すことにする。


「じゃあ………始め!」


(最初は距離を取るところから。ここはケルトさんのハコニワだからただの平原。隠れ場所はない)


 いつも通り距離を取りつつ空を飛びながら戦う。


「まずはこれ!(おり)!」


 僕の周りから多数のビームを出す。歪みで方向を曲げながら相手を翻弄する。ケルトさんは一つも当たらずに逃げ惑うが狙いは当たることじゃない。


「あっぶ…ね?おいこりゃあ…」


「これが僕の新技、(おり)です!相手を翻弄しつつ歪みを使ってビームで囲う技。逃げ道はありません!」


「ほう…そんでこっからどうす…」


 僕は最近知ったことがあった。神力を自由に操れるようになったことで見えてきた物があった。

  ビームに神力を多く込めると威力が上がる。

 ただ、神力を込めるには時間が必要だ。いつもの速度で出すとなると最低量になってしまう。だからこそ、囲を使って時間を稼ぐんだ。

 そうしてケルトさんに特大ビームを喰らわせた。


「いってー。どんだけ威力高ーんだよ。服が消えるとこだったぞ!」


「痛いで済むんですか…中々ですね…」


 まだ奥の手はある。僕は焦りつつも余裕ぶる。


「中々な成長具合ではないか?あの技、確定で入るような物だろう」


「そうですね。ビームの威力をもっと上げれればほとんどのやつは瞬殺でしょう」


「そうよの〜。と言うか囲と言ったか?あのビームの動きどうなっておるんだ?人間の脳にあの量のビームを制御できるものなのか?」


「さぁ…俺にはさっぱり…」


 バク達が何か話している間にも戦いは続いている。


「これならどうです!」


 僕はそう言いながら神器を手に取る。そして、ビームを何個も放ちながら近づく。


「なるほど。相手の動きを封じながらの戦闘か。お前だいぶ分かってきたじゃねーか!嬉しいぜ!」


(まだ舐められてる…どうにかあっと驚かせないと!)


 必死に神器で斬りつけるが一向に当たらない。そういえばケルトさんに神器の使い方を教わってなかった。重かったから神力を使ってある程度軽くして何とか振れている。そんな遅い剣術じゃ当たるはずもない。


「ったくそんなんじゃ当たんねー、ぜ!」


「グフゥ!」


 僕はお腹を蹴り飛ばされる。少し吐き出してしまったがまだ立てる。けどこれが続けば確実に負ける。僕は<あれ>をしようと決心した。


「おいおい、もう終わりか?」


「行きます!」


 僕はテレポートを駆使しながら近づく。動きは不規則だがテレポートするたびにケルトさんと目が合う。ケルトさんは何もしないで浮いていて甘い近づき方をしたら殴ると言わんばかりの構えを取る。その誘いに僕は乗る。


「喰らえ!」


「んな甘い攻撃喰らう訳ねーだろ!いっぺん痛い目あって出直してこい!……?」


 ケルトさんは僕の顔を殴ろうとした。と言うか殴った。確実に殴っている。今も顔に伸びている腕がある。確かに当たっているのに、まるで幻覚でも見ているかのように触っている感覚がない。剣を構えているイリウスはそのまま剣を振る。腹を切ろうとしている剣を止めようと手を差し出すがそれもすり抜ける。


「どうなってるんだ?こr…」


 ケルトさんは体制が崩れている事に気付いた。何が起きたか分からなかった。


「脚が、切れてやがる…?」


 未だに理解が出来ていない。確かに殴ったはずなのに感覚がない。見えているイリウスが本物じゃない。


「これが新しい技です。名前は付いてませんが」


 見ていたイリウスが霧のように消えていく。そして現れたのは見えていた場所より少し下にいるイリウス。


「歪みを使って僕の位置を誤魔化しました。透明化の技術を応用して中途半端な自分を作ったんです。あたかもそこに居ると思わせて本当は少し違う座標に居ると言う幻術的な技です!」


「………なるほど…はっはっは!なるほどな!おもしれー。おもしれーじゃねーか!はっはっはっは!!」


 脚が大丈夫か心配しているイリウスを他所目に大笑いしだすケルトさん。笑ってる間に脚が生えていく。


「そっちがそんな奥の手出すんなら俺も隠しちゃいれねーな!」


「何かしてくるんですか!?もうこれで終わりでも…」


「サービスしてもらったんだ。お礼くらい言わなきゃな!」


(確実に何かしてくる!とりあえず距離を…)


 考えてる暇もなかった。途端に体が震えだし動けない。心臓の鼓動が速くなっていき止まらない。体中鳥肌が立ち、頭が真っ白になる。


「これが俺の能力の一つ。《気配を操る能力》。今は殺気を操ってるぜ。広範囲な上に並の相手ならこれを使うだけで心臓発作で死ぬ。逆に強いやつなら殺気にも耐性があるから場所がバレて俺が不利になる」


(やばい!やばい!息が出来ない!心臓がドクドク言ってる!動けない!声も出せない!)


「お前は殺気に耐性が無いからな〜。そのままだと死ぬぜ?参ったは無しか?」


 参ったと言いたいぐらいだが言えない。声が出ない。息も吐けなくて苦しい。


(何も言えないんですよ!早く助けて下さい!)


「ぷはー!はぁはぁ!死ぬ所でしたよ!どうしてくれるんですか!」


「どうするって…修行なんだから死ぬ気でやんなきゃダメだろ?後まだ終わりじゃねーぞ?神器の使い方教えてやんなきゃな」


「えーまだやるんですか!?」


「たりめーだ。まぁ実践形式はやんねーよ。驚く事が多くて今日は楽しかったなー!」


 とはいえまだ修行はやる。長い時間息を止めてた影響か疲れがどっと来る。


「…は!ついつい見入ってしまった。イリウス、お主凄いな!ケルトの両足取れるなんて!我も引っかかりそうだし今度から周りも切り刻むようにしておくぞ」


「あの技、俺でも引っかかりそうだな。今度から範囲攻撃でやった方が良いか」


「褒めてくれるのは嬉しいですけど戦う前提で話さないで下さい!」


今日だけで色んなことに決断を下した。ケルトさんの脚を斬るのだって本当はしたくなかったし、覚悟を決めるのに時間かかっちゃった…僕の強さも証明出来たし、今日はひとまず終了だ。

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