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第198話 ーー償い 後編ーー

「ケルトさん!助けに来ました!」


 神の座へと突入した僕。ケルトさんは驚いて口が閉じない様子だったが、他の神2人はそうでないようだ。


「何故イリウスがここにいる?人間はこの世界に来れないはずだ」


「さあのぅ。一体何の用なのかのぅ」


 ケルトさんは鎖で縛られてる。恐ろしい神力量だ。あんなの僕でも壊せない。


「イリウス!俺のことは良いから逃げろ!殺されるぞ!」


「逃げたらケルトさんと一生会えないんです。そんなの嫌です!僕はここでケルトさんを連れ戻します!」


「あー…やっぱりそれか。イリウス、お前を地獄行きにする気はない。今なら見逃せる。頼む、帰ってくれ」


「お断りします、閻魔様」


 閻魔様は深く悩む。僕のことを見たり、床を見たりして。そうして油断していると、無数の鎖が襲いかかってきた。


「あぶな。これ当たったらやばいやつだよな…」


 ケルトさんに着いてるのと同じやつだ。捕まったら終わり。絶対に壊せない。


「イリウス。最後のお願いだ。帰ってくれ」


「僕からも最後の忠告です。絶対に帰りません」


 神様にこんな失礼なことを言ったのはいつぶりだろう。閻魔様も諦めた様子だ。


「ならば、親子共々地獄行きだ」


 さっきより早く、多く鎖が飛んでくる。何とか逃げるので必死だ。ケルトさんを救い出す算段も立てなきゃいけないのに。

 一応ビームで攻撃を仕掛けてみるが、やはり守られる。こっちからの攻撃なんて無意味だ。どうする…


「もう諦めろイリウス。無理なのは分かってるはずだ。逃げても構わん。逃げ切れるならな」


「逃げま…せん!」


 閻魔様の目の前に行き、神器を振るう。こっちも本気だ。だが、閻魔様に神器は届かなかった。鎖が僕の神器を引っ張り、攻撃は失敗。捕まらなかったのは良い物の、鎖が体に当たりダメージを負う。


「いった…ぐぅ…」


(このままではまずいのぅ。何とかイリウスがケルトを連れて逃げれるようにしたいが。我が鎖を外したら閻魔に叱られる。どうにかそれ用の流れを…)


「はぁ。拉致があかんな。神の世界への無断侵入。確か死刑だったな。殺したくはないが、殺すか」


「ん?…おー!そうだ、その手があった!閻魔、我がやる」


「急になんだ。お前はあの子の肩を持つ側だろう」


「だからこそ楽に一撃なのだ!とにかく任せておけ」


 世神様は右手で槍投げ構えを取る。神力が右手に集まっていき、槍の形が完成されていく。


神槍(しんしょう)、これで一撃だ。でも一応鎖で追いかけてくれ」


「…?まぁ良いか。取り逃さんよう気を付けろ」


 槍に集中したいのに鎖が邪魔をする。何とか鎖を避けているが、このまま槍を投げられたら…


「イリウス!よく見ろ!」


 槍が来る。何とかテレポートで鎖と一緒に避けた。でも、これも長くは持たない。槍は地面に突き刺さり、地面には大きな穴が開く。あの鎖を断ち切るほど鋭く、少しでも当たったら大ダメージだろう。こんなの無理だ…もう終わりだ…


「ん?鎖も断ち切る…?」


(よし、流石はイリウス。気付くのが早い)


 鎖が断ち切られるなら、それをケルトさんの鎖に当てて貰えば良いのでは…?そうすればケルトさんは動けるようになる。これなら救い出せる。

 僕は鎖を避けながら、世神様とケルトさんの間に立ち回る。そのタイミングを狙っていたかのように槍が飛ぶ。そして、


「なるほどな!」


 ケルトさんも理解してくれたようで、鎖を引っ張り槍に当たる。これならいける。


「おい世神!あいつの鎖を壊してどうする!」


「し、仕方ないではないか!イリウスがちょこまか動くのだ!」


「世神様…」


 あらゆる攻撃を避けながら、ケルトさんの鎖を壊していく。そして残り一本!


「もういい、俺がやる。『裁きの光』」


「おいおいおいおい!ここにいる生命を全て無に帰すつもりか!」


(まずい。裁きの光はまずい。効果範囲広い上当たった瞬間死ぬ!このままじゃイリウス確実に死ぬ!うわぁぁ何も手段ないぞー!)


 何かやばいものが来る瞬間、門が壊れて暴れてる神々が入ってくる。


「「許さんぞ生神!」」


「何でお前らがここにいる!」


「はっはっは。軽く遊んでいたらついつい」


「門番は何をしてるんだ世神!」


「鎧が重くて動けていないようだの…」


「何のための門番だ!」


 もうぐちゃぐちゃだ。そして裁きの光とやらも解除された。


「今だイリウス!早く来い!」


「おい、何指示して…」


「これで終わりだー!」


 槍が最後の鎖に当たる。ケルトさんを見ようとしたその瞬間、気付いたらケルトさんの胸の中に居た。


「よくやったイリウス。ちょっと本気で走んぞ」


「ぬぅわぁぁぁぁ!!」


 音なんか置き去りにする速さだ。門が見る見るうちに小さくなっていく。そしてバク達の所に…


「はぁはぁ…もう、立ってるだけで充分だ…動けん…」


「もう終わりか。まぁ楽しかったな。殺すよう言われてるから殺すぜ」


 力の神様は神器を出す。動けないバクとトラさんに避けることは出来ない。


「イリウス…お主だけは…」


 力の神様が吹っ飛ぶ。何回も転がり、頭を床に擦り付けられる。


「おい、力の神。うちのもんに手出すな。神だろうが何だろうがぶっ殺すぞ?」


「へ、へへ。憑き人が神より偉くなった気か。お前、ほんと面白い。だからお前を選んだんだ」


 力の神様ももう戦う気はなさそうだ。僕らはそのまま出口へと向かう。


「お、来たか!急げ急げ!」


 そう言われて、僕らはホールに入っていった。






「はぁ。連れ戻すのはそう難しくない。どうしてくれる」


「さあ?何のことか分からんの」


 閻魔もだいぶ疲れたようだ。生神にも少し無理をさせたな。


「人間界まで降りて裁きの光を喰らわせるのもありか」


「まぁ待て。あそこまで罪を犯した者を慕う物がいる。それには理由があるはずだ。もう少しだけ、更生のチャンスを待ってやらんか?」


「うーむ」


 イリウスが懐くんだ。ケルトも悪いやつではない。それを分かってもらいたい。まぁイリウスに泣いてほしくないだけだがな。


「分かった。そうしよう。生神も門番を頼んでしまった悪かったな」


「いえいえ。閻魔様の頼みです。何でも聞きましょうぞ」


「本当は迎えに行きたかったのだろう?」


「はっはっは。何のことやら」


「こやつ、分かっていながらあの態度だったのか…」


「規則はなくてはならない。それには無情さも必要だ。だが時には、感情がなければいけない罪も出てくる。それを見届けてみたかった。好き勝手に暴れて、ルールを破り、それでも救い出したい。それ自体は否定できん」


 こいつがここまで考えているとは…我は感心してしまった。普段からルールルールとうるさいやつなのに。


「だが、お前らは別だ。神としての風格がなっておらん。人間にあそこまでだらしない姿を見せたんだ。四大神全員、後で地獄まで来るように」


「「「「は、はい…」」」」


 さっきの発言撤回。やっぱりうるさいやつよの。






「よいしょっと。久々の地上界です!もう夕日ですけど」


「時間の流れは変わらんようだの。帰って来れたのが奇跡みたいだ」


「また来ますかね」


「大丈夫だと思います。閻魔様もそこまで拘ってるように見えませんでした。あ、落神様!ありがとうございます!」


 今回1番の架け橋となってくれたのは落神様だ。危険を犯してまで手伝ってくれた。感謝してもしきれない。


「良いんだ良いんだ。美味い酒でも持ってきてくれりゃあな」


「ケルトさん、今度美味しいお酒をお供えします」


「おう、そん時は俺も行くぜ。あんたのこと見えねーけど、本気で感謝してる。ありがとな」


「感動の所失礼するぞ」


 後ろからの声。この声は確実に…


「生神様!?」


「生神、何故ここに…」


「神力を追えばこれぐらい分かる。落神達よ」


「逃げろ!お前ら逃げろ!」


 そうだ。四大神は落神がいることを認めていない。見つかれば生まれ変わりを強制される…


「今回は見なかったことにしておこう。礼を伝えに来ただけた。イリウスを連れて来てくれてありがとう」


「………四大神が俺らに礼を言った…?」


「失礼な落神だな。ん?」


 生神様は本殿の方を見た。あそこの2人は元四大神。今の生神様とは接点ないはずだけど…


「初代から話は聞いております。どうぞ、心ゆくまで、この世界をお楽しみください」


 生神様はそう言って帰っていく。


「あの、生神様…」


「どうかしたか?」


「その…ありがとうございました!」


「礼はいらん。神として当然のことだ」


 やっぱりかっこいい。僕もあんな神様になりたいな。大きくなったら、「神として当然のことだ」つて言ってみたい!


「よし、よく分かんねーけど解決したみたいだし、帰るか」


「そうですね!お腹空いちゃいましたよ〜」


 僕らの日常はまだ終わらない。神様の器を知った、そんな日だった。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「クリスマスイブなのです!」


 寒い日。雪が降る夜に1人立ち尽くすイリウス。雪が積もった景色は、いつもと違って特別に見える。やっと訪れた平穏だ。ゆっくりと休むといい。

 みんなには迷惑かけちまったな。豪華な料理でもてなしてやるぜ!


          次回「ーー平穏のイブーー」

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