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第194話 ーー目的地ーー

 前回ケルトさんと本心を言い合ったため、疲れてエネルギー補給として夕食をたくさん食べている。


「ほんと、どうなるかと思ったけどこんなに元気で良かったわ」


「えへへ。心配かけちゃったね」


「まぁそれは置いといて…こっからどうすんだ?状況は何一つ変わってない。ニヒルの能力が強化されて、殺人鬼に情報を取られた。詰んでるぞ」


 ペグはちゃんと考えている。その上で詰んでると言われたら、そりゃあ策が思いつかないだろう。


「そうだね。やっぱりこの状況を打破するにはニヒルを倒すしかない」


「ニヒルも殺人鬼と同じ、自分が居た証拠も0に戻す。見つけるのは同等に困難よ」


「なぁ。そのニヒルってやつ。どんなやつなんだ?」


 ケルトさんが話に入ってくる。あんなに言った後だ、今更手伝わなくて平気です!とは言えない。


「確か、『0に戻す能力』って言うのを持ってて、殺人鬼の証拠を0に戻しちゃうんです。見た目とかは分かんないですけど」


「ふーん。そいつは能力者なのか?魔法とかじゃなく?」


「恐らく能力者だと思うわ。ニヒルの情報自体、この世界で手に入れたもの」


「能力者らしいです」


 今思うと、殺人鬼にエアス、そしてニヒルまで。能力者が多い。ピカソが言っていた「ローディアは美しい」ってやつ。殺人鬼の言葉なのか?だとしたらあいつはこの世界を好んでる。訪れる頻度もこんなものじゃ…


「能力者なら、線で追えば良いだろ?」


「はぁ…そうは言いますけどね。あんまり遠くだと途中で線が消えちゃうんですよ。そうなると具体的な位置が…」


「でも線って真っ直ぐなんだろ?だったら道なりに進んでけば見つけられるはずだ。その証拠とやらは俺が消される前に取ってきてやる」


 証拠のほとんどは警察が持っている。ただでさえデルタさんの件があるのに、カチコミ行くなんてもってのほかだ。


「それはやめてください。もしその方法を使うんでしたら、自分で証拠を見つけるしかありませんね」


「0に戻す能力とやらは、世界に影響を及ぼす能力だ。神力の消費はちょっとでは済まん。もしかしたら消されていない証拠があるかもしれんな。飯が終わったら昨日の現場まで行ってみよう」


「うん、助かるよ」


 バクの助言もあり、自分のやるべきことがはっきりとしてくる。今はともかく証拠集め。そしてそれを消される瞬間に居合わせること。これが出来れば、もしかしたら捕まえられるかもしれない。

 そして夕食終わり、


「何もねーな。既に消されたみたいだ」


「催眠ガスの匂いだ。まだ満ちてるのか」


「凶器は釣り針のようなナイフだけか?」


「うん。それ以外は何も持ってなかった。目を抉った時に血が出てたからそう言うのもあると思ったんだけどな…」


 1日経ってしまえば消されるのだろうか。今だにニヒルの力を理解できない。絵の記憶は消されたけど、みんなの殺人鬼の記憶は消されてない。《記憶》、ではなく、《絵についての記憶》、となるのだろうか?


「どっちにしろ厄介なのには変わりない…か」


「ニヒルがどこにいるか、この世界にいるかは私も知らないわ。世界が違う場合は線は見えるの?」


「うーん。途中で途切れちゃうかな。どの世界に行ったとかは線じゃ分かんないし」


「まずその線ってやつは相手が能力者じゃないといけないんだろ?魔法使いとかなら効果ないんだろ?」


「そ。だからこの方法はあくまで埋め合わせ。とりあえずやってみよう的な」


 これで線が見えれば能力者だし、見えなければ魔法使いだ。歪められるかの指標にもなりうるから知っておいて損はない。


「あ、これは証拠ではないか?」


 バクの声に釣られてそこまで行くと、あの時のヘビの粘液が。


「これはヘビのやつ。殺人鬼のめちゃくちゃ速い動きを止めるために出したやつ」


「これはどうだ?キラキラしてんぞ」


「それは僕のビームの破片?です。何故か物体化して壊されたんですよね」


 色々あるがほとんど僕のもの。あいつのものじゃない。もうここには無いのかな、と思っていた時、トラさんが拾ってきた。


「この禍々しい指みたいなの何だ?証拠になるか?」


「え、何ですかその禍々しい指は…まるで…」


 悪魔の手、忘れていた。


「それですそれ!決定的な証拠です!」


「おぉ、急に大声出すな」


「それ、殺人鬼の攻撃手段の一つだったんです。最初はそれを使って攻撃してきて、後から身体強化を使われたんです」


「じゃああいつの遺伝子的なのも?」


「あ、いや。それはないです。これを切り落とした時も、殺人鬼の手は切れてませんでした。恐らく『巨大化させた』というより、『神力で作った』って感じでしょう」


 こんなものが残っていたなんて。殺人鬼も忘れているのかも。そのうち思い出すかもしれないし、これは大事に保管を…


「これはこれは、イリウス君じゃありませんか」


「この声…何であなたが」


 この声は知ってる。落ち着くような、まるで近所の優しいおじさんのような。


「何でも何も、ドンベルとロヂを襲った犯人の追跡ですよ。この世界ではここが最後のようですが…」


 この人はデルタさん。警視総監、警察で1番偉い人だ。僕に殺人鬼の件を譲れと言ってきた人。もちろん断った。


「僕が対峙したんです。それであいつは帰りました」


「なるほどなるほど。それで、今回はどうしてここに?」


「新たな案が浮かんだので、それのためですかね」


「その案とは?」


「…教えるわけないでしょう」


 圧を感じる。後ろには大量の警察。ケルトさんがいるから平気だろうが、怖いものは怖い。


「そうですか…せめて事情聴取でも?」


「断ります。あなた方はあなた方のやり方で追ってください。僕から言えることはありません」


「そう…ですか。ふーむ」


 僕やケルトさん達を軽く見渡す。3人は既に戦う気満々らしい。


「こちらもそちらもそれ相応に情報の価値を分かっている。ならば相応の価値を支払いましょう。いくら払いましょうか?」


「お金は要りません。交渉材料になるものは、あいつの情報だけです」


「あまり図に乗るなよ。子供だからと容赦はしない。こちらは全勢力を持ってあなた方に挑んでも良い」


「おいおい。死人を増やすつもりか?何より、俺とお前が戦っても勝つのは俺だぞ?」


「幻覚の能力を甘く見てるようだな。お前のトラウマでもなんでも、蘇らせてやろうか」


 怒ってる…でもここで屈したら負けだ。殺人鬼は僕が捕まえるんだ。


「ストップストーップ。はいはい、みんなストップ」


「ロヂさん!ロヂさんもいたんですね」


「ん?いいや、呼ばれてないよ。占いした時、イリウス君が居たのを思い出してね。それで来た。デルタさんもやめてくださいよ」


「ム…だが、これはチャンスだ。目取りの殺人鬼の情報は少なすぎる。そんな中対峙した人の情報なんてあれば、一気に近付くことが出来る。それにそっちには何のデメリットもないだろう?」


「それはそうですね。こっちは未だに何の成果も得られていない。でも、だからと言って無理矢理聞き出すのはいけません」


「ム…」


「ロヂさんすごい…」


 説得力がすごい。デルタさんが押されるなんて。


「イリウス君も、あんまり意地張りすぎないようにね。こっちも手柄を取ってやろうとか思ってるわけじゃないから」


「…はい」


「そんじゃ、俺らは調査するから、離れてもらっても良いかな?」


「はい」


 そう言われて僕らは帰った。まさかこの場でデルタさんと会うとは。証拠は残ってないはず、僕に抜け目はない。










「それで負けて帰って来たんだ」


「う………い」


「記憶は?どうだったの?」


「ス…イ………し…だ」


「へー。これで3人撃破されちゃったわけだ。てか話づらいから別の人格にしてくれない?」


 いつ見ても不気味だ。自分の目にナイフを突き立てるなんて。知らない人の目を自分にはめるなんて。


「これで良いか?こっちも疲れるんだぞ」


「疲れるのはこっち。勝手に暴れたせいで証拠がありまくり。消すのに時間かかったんだよ」


「ふん、勝手じゃない。警察側の情報を掴むためだ。最近はあのよく分からない奴らに追われてるしな」


「そいつらについては分かった?」


「ああ。何となくだが、重要な情報はろくに持ってないがな。まぁ良い。次は殺そう」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「神様へ、最近は…」


 証拠を手に入れたイリウス。しかしここからが長い。この手が忘れられてる限り、消されることはない。すなわち待ち時間だ。この微妙な時間を、イリウスはどう過ごすのか。

 暇なのは良いことよね!子供ならいっぱい食べていっぱい寝ないと!


            次回「ーー神様へーー」

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