第190話 ーー周期 後編ーー
「居たわ」
「行きましょう!」
1人見つけた後、どんどんと疑わしい人が見つかっていく。メーデさんは見つかるたびに僕に知らせて、そこまで向かってくれる。でも、、、
「目取り?」
「さ、殺人はしてねーよ!」
「…?」
全員、揃いも揃って違う。いや、違うように見えると言った方が正しい。判断材料が少ないとはいえ、本当の殺人鬼は強いはず。こんな囲に引っかかるようなやつじゃない。
「さっきから別人ばかりですね」
「そうね〜。あの中に混じってたりしてたら楽なのに。あ、また見つけたわ」
すぐに向かうが、やはりさっきまでと変わらない。
「ローディアってこんなもじゃもじゃ頭居るんだな。すっごい治安悪いし」
「仕方無いわよ。人口が多いからその分犯罪率も上々、悪いことをしている人で絞っちゃうと忙しくなるわよ?」
「…被害者は出したくないです。その前に捕まえたい…」
確かに事件が起きてからの方が確実で早い。だが、そこには必ず被害者が出てきてしまう。僕はそれを避けたい。
「またよ。今回はそこまで危なくはなさそうよ。行くの?」
「もちろん。襲われてる人はいるんでしょう?」
そうやって何人も倒していくが、殺人鬼らしきやつはいない。もじゃもじゃ頭でもない人の所にも行き始めてしまい、ただの人助けになっていた。疲れが出てきて少し座っている時、メーデさんの様子が変わる。
「…ちょっと、私のヘビに触らないで欲しいわね」
「どうしたんですか?」
「獣人2人にヘビが捕まったわ。この服装じゃ警察よ」
「どんな人ですか?」
「え?えーっと、ドーベルマンの犬獣人と…コーギーの犬獣人かしら?」
僕は一瞬でドンベルさんとロヂさんだと気付いた。僕が捉えて警察を呼んでもらってるせいで2人も動いてるんだろう。
「念の為会話を盗み聞きしとくわ。大事な情報があったら言うわね」
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「ヘビ…だよな?」
「大人しいね。噛まないタイプなのかな。それにしても何でこんなところに?」
ビームで拘束された人が大量に捕まっている。その元凶調査に向かった俺らだったが…
((あれってイリウス君のビームだよな…))
正体は分かっていた。こんなん分かりようしかないじゃん。
「非番なのに呼び出されたと思えば、既に捕まってるやつを連れてこいだの捕まえたやつを見つけてこいだの…」
「本当に扱いが雑だな」
「デルタさんには特にこき使われてるよ」
こいつもこいつで大変そうだな。能力が占いなのもあってか、頼られる頻度が高い。
「ところで、今日は占わなくて良いのか?」
「はいはい。そう言うと思って占っておきましたよ」
俺はスケッチブックを渡され、それをペラペラとめくる。これからこんなやつらに会うのかと思いながらも、途中で手を止める。
「これ、イリウス君と…誰だ?」
「さぁ。でも同じページに書いてあるってことは同時に出会うってことだね。まぁ俺の占い自体当たる確率は8割。”2割”を引いたら”終わり”だね〜」
「つまらんことを言うな」
途中でイリウス君に会うんだったらその時に注意すれば良い。今は大人しく罪人を狩っておけということか。
「それにしても…そのヘビどうすんの?」
「うーむ…」
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「警視総監デルタ。それにあなたのことも知ってるみたいよ?」
「やっぱりですか。僕の知り合いです。でもそのデルタさんと色々あったので呼びませんでした」
「それなら追跡はしておくわ。捕まってるけど」
2人の動向を探ってくれるのはありがたい。僕らはそんな調子で、殺人鬼っぽい人を狩り続けた。そうして3時間が過ぎた頃、
「…どうしてこんなにも見つからないんですかね」
「来る時間は確定してないものね。やっぱり困ってる人を全員助けるなんて無理よ」
「でも、そうじゃなきゃ…」
また、
「被害者が…」
僕みたいな、、、、
もういっそのこと、
殺せば良いんじゃない?
「こ、ろ、し、ちゃ、え、よ」
「だれ!」
耳元で聞こえた声。若々しく、力強く、恐ろしい。すぐにビームを打つが、どこにも居なかった。
「どうしたのイリウス君?」
「はぁはぁ…いや、何でもないです」
僕はこの時から自分おかしくなっていたのかもしれない。復讐に身を溺れさせないと誓ったのに。
「次居るわよ。あっちの方に…イリウス君?」
僕はメーデさんを追い抜いた。メーデさんも疲れてるだろう。僕1人で平気だ。
「お前が目取りの殺人鬼か?」
「目取りの殺人鬼?いや、人違いだと思いますけど…」
見たところ犯罪者でもない。ただの一般人だ。女の人が怖がって走って行ったのが見えたが、ただの勘違いだろうか。この人から殺意は感じない。でも、
「やっぱり、1人1人殺した方が早いかもな」
僕の心は壊れかけていた。
ビームを使ってその人を殺めてしまいそうになった時、僕の能力は跡形も無く消えた。
(あれ、何でビームが…)
「だ、ダメだよ!」
声のした方を見ると、あの3人組がいた。
「師匠…殺すなんて…ダメだよ!」
怖くて怖くて仕方ないのか、足が震えている。涙目になりながら、僕に訴えかけている。その様子を見て目が覚める。
「チッ。根性なしが」
「そこか!」
急いでそこに向かうが、誰も居ない。さっき耳元で囁いてきたやつの声だ。残っていたのは、トゲトゲした禍々しい神力だけ。
「一体誰が…」
そう思いながらも、3人の元へ降り立つ。
「し、師匠…」
「うん、大丈夫。僕は平気。ありがとう。それにしても、どうしてここに?」
「それ…」
服に着いてる小さい黒い丸を指差す。何かと思い取ってみると、機械のようだ。
「発信機。俺が作って貼っつけといた…師匠の様子、変だったから」
「なるほどね。こりゃ一本取られちゃった」
「イリウス君!」
メーデさんも来た。心配で急いで来たんだろう。その後みんなのことを紹介しつつ話し合った。結果的に防げて良かったけど、あのままだと僕…
「本当良かったわ。あなた達も、止めてくれてありが…」
(危険信号…?)
メーデさんの動きが止まる。深刻そうな顔になっていき、すぐさま僕に声をかけた。
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「くっそ…不意を突かれた」
「ロヂ、止血からだ。こいつは俺が相手する」
ロヂがやられた。油断も隙もないようなやつなのに。こいつは何者だ?
「…これで…だから…やっと…」
「ボソボソと言っても聞こえん!今すぐ捕らえる!」
投げ縄をそいつに飛ばすが当たらない。動きが俊敏だ。光が邪魔して顔が見えない。
「もう用はない…」
「くそ、逃すか!」
急いで後を追うが、どこにもいない。それよりもロヂを
「俺は平気。片目を取られただけだ。傷も深くない」
「あの一瞬で片目を抉ったのか?潰されたわけじゃなく?」
「んじゃあ見るか?」
「それは遠慮しておく…」
片目を押さえているロヂは目を取られたと言っている。もしかして今のが、
「ドンベルさん!」
「その声…イリウス君か!」
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「じゃあ、ロヂさんが…」
目取りの殺人鬼を探していたイリウス。抜け目はなかったつもりだったが、それらしき人物の被害者が出てしまう。顔も分からず逃げられてしまったが、イリウスはどうする?
僕があんなことになったから…僕が自分を見失ったから…僕のせいで…
次回「ーー占いーー」