第18話 ーーここでも入団試験ーー
前回、僕はバク達の所属しているグループに連れてこられた。そこにはケルトさん達[煌牙組]とは真逆のようなもので獣人がトラさん以外いなかった。一人一人独特なメンバーから自己紹介を受けたイリウスだがまたもや何か起きそうだ。
「とりあえす自己紹介は終わったな。緊急と言うのはイリウスの事だ」
「「「「「は?」」」」」
(そうなりますよね〜)
ここまでは予想通りだった。みんな緊急で集められたのに開いた方が塞がらない状態だ。
「ちょ、ちょっと待て。そのイリウスに何かあったのか?不治の病とか?呪いとか?」
「いいや無いぞ?今回はあの[煌牙組]にイリウスが取られそうなんだ。ケルトは完全に引き入れる気だからの。それならせめてここに入れた方が良くないか?」
「その子を引き入れたいから緊急集会をかけたってこと…?嘘でしょ?」
「嘘ではないぞアイ。早くしないとあっちに負けるし、そう言う意味では緊急であろう?」
「緊急はもっと大変な時だと思うけど…」
「バカバカしい。俺は帰るぞ。お前らほど暇じゃなーんだ」
「シュウ。さっきから態度が気にならん。ストレスが溜まってるなら相手になるぞ?俺もムカついててな。手加減はしない」
「遠回しに殺すって言ってねーか?」
「喧嘩はやめて欲しいのです…」
「まぁこんな可愛い子がヤクザの1人になるのはね〜。見捨てられないし私は賛成よ。私のヘビに気に入られるくらいだし悪い子じゃないんでしょう?」
「イリウスはそれはもう良い子で良い子で…我も口を挟まないほど良い子だ」
「良い子とかはどうでも良いんだけど。足手纏いにならなければ入れても良いわ」
「お前らマジかよ。まだ子供だぜ?強くないだろうし守らなきゃいけなくなる。俺は反対だね」
「同意だ。子供は家でお勉強をしておくといい。能力なんぞまだまだ早い」
「お前は物を柔らかく出来るのに頭は硬いんだな」
「喧嘩売ってるのか?てかさっきから俺への当たり強くないか?このガキの事がそんなに大事なのか?」
「家族を大事にしないやつがどこに居る」
「とりあえず落ち着いてくれ。多数決だと4:2でイリウスを入れるのに賛成なんだがお前達2人が言ってることも分かる。だがそれはイリウスの能力を見てから決めてくれないか?」
「え、戦うんですか???」
「戦いはしなくていい。お主の切り札を見せるだけで良い」
「それならまぁある程度は納得いくか」
僕はやれる限りの物を全て出した。ビームの事、ビームを曲げること、テレポート。
線の事は言わなかった。
「なるほどな。歪みか、強いな、確実に」
「能力は悪くないが使い方がなってない。俺ならもっと…いや、」
「何だ?続きを言えよシュウ」
「当たりが強いって………俺がある程度教えてやる。俺の言う通りに出来るんだったら、賛成してやる」
「教えてくれるんですか?」
僕はびっくりした。どちらかと言うと敵寄りな人が能力の使い方を教えてくれるなんて。
シュウさんの目は何も出来ない子供を見る目から何かを成す子供を見る目に変わっていた。
「能力自体は似ている。自分より遠くの場所に発生させる力だ。基礎の基礎から教えるが、神力は普段どうしてる?」
「どうってそりゃあ自分の中でぐるぐる回してますよ」
「そこからだな。神力は体外に出せ、周りに散らすイメージだ。能力者同士の戦いだと0.1秒でも勝敗を決める。能力を使うのは早い方が良いんだ。お前は今能力を使うのに、
神力を体外に出す→形を作る→発動する
と言う三段階も踏んでいる。その中でも1番時間がかかるのが神力を体外に出す作業だ。それをカットできれば時間が大幅に減る。やってみろ」
「はい!」
「……シュウって教えるの上手いんだな」
「どう言う意味だ!」
僕は集中して神力を操る。周りにフワフワは浮いているが操ったことはない。普段僕が思った場所に神力が行って発動するからだ。
少し時間が経ってしまっても出来る気がしない。そんなこんなで戸惑っていると。
「お前、物を浮かすことは出来るか?」
「え、はい…」
「じゃあ物を浮かせた後神力を放置する事は?」
「やったことないですね…」
「やってみろ」
僕は言われた通りやった。神力は消費するもの、物を浮かせた後、解除するとフワフワは見えなくなってしまう。
「出来てるな、じゃああと場所で能力を使ってみろ」
「分かりました…」(多分意味ないと思うけど…)
僕は歪みを発生させる。すると何だか早くなってる気がする。いつもよりほんの少しだけ。
「早いな、確実に」
「え?そうですか?」
「よし、これが普通に使えるようになればお前みたいなのでもある程度戦えるようになるだろ」
僕はうーんと少し悩む。だって神力は見えないんだ。それなのに早くなるなんて理解出来ない。そんな悩みを抱える顔をしているとバクが話しかけてくる。
「どうかしたのか?何か疑問がある様子だが」
「うーん…神力ってさ、物を浮かしたり、テレポートしたり、歪めたりしたら消費する物なんじゃないの?物を浮かせるまではフワフワが見えるけど、浮かせ終わったら無くなっちゃうんだ」
「なるほど…もしかしたらだが、お主がはっきりと見える大きさと言うものがあるんじゃないか?」
僕ははっとした。確かに不思議だった。能力と神力は繋がりがある。僕の周りに飛んでる神力、フワフワは明らかに少ない。それなのにあれだけの事が出来るなんて今考えるとおかしな話だ。
「神力には細かい粒子と塊があると聞いた。お主が見えるのは塊であって粒子じゃないのかもな。それも踏まえるとやはりお主の神力量は多いのかもな」
「さっきからフワフワとか言ってるけど何の話かしら?」
「僕神力…と言うか神が見えるんです」
「ん?神が見える?どゆことだ?」
「あ、私知ってるわ。その昔、能力が見える人がいたって」
「能力が見える?相手の能力を知れるってこと?」
「それはだなー・・・」
みんなの困惑を招いてしまった。だからバクも言わなかったのかな?とりあえず説明せざるを得なかったバクはみんなに説明する。
「・・・と言うことなんだ」
「なるほどぉ…それってすごいのよね?」
「当たり前だ」
「ちょっと待て!何で見えるんだ?何でイリウスなんだ?分かんないことが多すぎるぞ!」
「それは我も同じだ」
「不意打ちやトラップが効かない…良いじゃない、ここに入るのに大賛成よ」
みんながワイワイ騒ぎ始めたところでトラさんがパーンと大きく手を叩く。
「とりあえずこれでイリウスがここに入るのを認める、反対派は居ないな?」
「ま、足手まといにはならなそうだし、良いぜ」
「ギリギリ合格と言うことにしてやろう」
「よし、決定だの。今日は集まってもらってすまんかったな」
「良いのよ〜、面白い子に会えたしね」
「今度からは何の用か連絡してちょうだいね。私も暇じゃないの」
「善処はしよう」
「後はイリウス、お主が決めるだけだ」
「煌牙組かバク達か、あれ?バク達のグループって名前無いの?」
「んー特に決まってはおらんな」
「決める必要ないしな」
「注目も浴びたくないし無い方が都合が良い。呼びたければ好きに呼んでくれ」
(それが1番困るんだけどなぁ…)
そんなこんなでバク達のグループにも入る権利を取得した。これからどっちにするか、本当に迷う所だ。