表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/252

第187話 ーー急成長ーー

 今日は久々にある人物と出会う。あの人達も忙しいんだろう。中々会う機会がなかった。リビングでのんびりしていると、家のチャイムが鳴る。


「あ、来たみたいです!ナビ達は初めて会うね」


「ちょっと怖いんだけど…」


 ナビ達は不安がっていたが、僕は2人を迎えにドアを開ける。


「お久しぶりです!リュウガさんにドラル!」


「久しぶり、イリウスよ」「ドラ!」


 懐かしの2人だ。


「そんでこんなことあってな〜」


「はっはっは。元気で良いじゃないか」


「ドラドラ!」


「離せドラゴン!」


「こーら!筆はそうやって咥える物じゃないー!」


 ケルトさんはリュウガさんと、僕はドラルと遊ぶ。ドラルは竜の子で、まだ幼い。ちなみにドラルと名付けたのは僕(詳しくは第96話)


「んーしょ、んーしょ、はぁー…なんかドラル成長しすぎじゃない?」


「竜というのは子供の期間が短く、大人の期間が長い。子供でいるうちなんてすぐなんだぞ」


「なるほど…じゃあリュウガさんはもっともっと長生きってことですか?」


「はっはっは。そうだな。後1億年は死ぬつもりはない」


「い、1億!?」


 竜というのは獣人とは桁違いに長生きだ。リュウガさんは笑っているが、本当に1億年も生きるとしたら、1人で寂しくないんだろうか。


「ドラドラ!ドーラルー!」


「うわ、ちょ、重いから登れないよ〜」


 ドラルは体が大きくなったことに気付いていないのか、前みたいに僕の肩に登ろうとする。僕も成長したとはいえ、流石に重い。


「そんで、お前らはどうなんだ?」


「…無関心ではないが、最低限しか出来んな」


「えっと、何の話ですか?」


 肩に掴まるドラルで体勢を崩しながら聞く。


「殺人鬼。協力してくれんならしてもらおうかとな」


「勝手なことしないでくださいよ!リュウガさんにはドラルもいるんです!」


「だが、いくらなんでも話さないのは無しなんじゃないかな?私はそう思う」


「リュウガさんまで…」


「私とケルトの状況は似たようなもの。どちらも一児の親だ。だからこそ、協力出来るのならしてあげたい。それに知っているだろう?私も強いんだ。頼ってくれ」


「ドラドラ!」


 リュウガさんは少しも困ってなさそう。ドラルだってこの調子だ。でもやっぱり迷惑はかけたくない。どうにか引かせなきゃ。


「本当ですか?」


「何がだ?頼ってくれて全然…」


「本当に強いんですか?」


「ほう…?」


 リュウガさんの目つきが変わった。もしかしたら強さを疑うなんて相当な侮辱なのかもしれないけど、それでいい。


「僕はまだ、リュウガさんの実力を見たことありません。本気になった僕を倒せるくらい、強いんですか?」


「はぁ…竜はな、プライドが高い生き物なんだ。狼よりずっとな。だからこそ…」


 急に居なくなったと思えば床に押し倒されていた。


「少しイラっとした。すまないね。遺伝とか性質とか好きじゃないんだが、妙に従ってしまう」


「…ケルトさんには勝ったんですか?」


「まだその話をするのか?良い加減にしてくれ。子供に手を出すほど落ちぶれていない」


「…勝ったんですか?」


「おいイリウス、やめろ」


 リュウガさんと喧嘩でも始めようとした時、ケルトさんが止めに入る。ドラルが震えながらアワアワしてる姿を見て、僕も正気を取り戻す。

 リュウガさんも挑発に乗っていたものの、全部分かってるみたいだ。


「安心しろケルト。あのまま行っても、私はこの子とは戦わない。それにしても、少し驚いたよ。挑発なんてする子なんだとね」


「今ので、嫌いになりましたか?」


「はっはっは。親に似ていて良いと思ったぞ。最低限協力はさせてもらう。それに変わりはない」


 ケルトさんと同じでしぶとい人だ。何言っても聞かない。それなら利用するしかない。僕はため息をつきながら確認する。


「具体的に何が出来るんですか?ドラルに危険は及ぼしたくないです」


「位置の把握とかはどうかな?探したい人間がいるなら、ある程度の範囲を指定してもらえれば探せるよ」


「竜玉ってやつですか。便利なものですね。でも範囲が分からないから厄介なのです…」


「それなら、分かった時に連絡をくれるか、戦力として私を使うかだ。安心しろ、生かすも殺すも君の自由だ。ドラルは君が預かってくれればいい」


「そう上手くいかない相手だと思います。今までずっと逃げ続けてるわけですから」


 リュウガさんが戦力としてくるなら相当心強い。でも、ケルトさんが居てもこれまであんなんだったんだ。リスクの方がでかい。


「少し、席を外そう。相談すると良い」


 リュウガさんはそう言って外に行く。その間に決めろということだろう。


「ドォラ、ドォラ。ド…?」


「ドラル、僕はどうすれば良いのかな。こんなたくさんの人に迷惑かけて、大変な目にあって、心配かけて。全部復讐のためだなんてさ。酷い人間だよね…」


 全部自分でやると決めたことなのに。家族に、友達に頼らないと決めてたことなのに。今回も、前回も、最初だって、みんなに助けてもらわなきゃ勝てなかった。


「ドラァ!」


「ん、冷た…」


 ドラルは両手を冷気で冷やして僕のほっぺを触った。言葉は喋らないのに、まるで僕に元気を出せと言ってるみたいだ。


「そうだよね。子供だから、頼っても良いよね。きっとみんなそう言ってくれるよね」


「おう。頼れ頼れ」


「ちょ、ケルトさん!?気配消してまで話聞かないでくださいよ!」


 さっきからいる気がしなかった。でも、これで決意が固まった。


「どうだい?決まったかい?」


「はい!リュウガさんには捜索と情報収集をお願いしたいです」


「情報か。具体的にはどんな?」


「警察さん達の動向を調べてほしいです」


「それは何故?」


「…勘です。どこかで、邪魔される気がします」


 リュウガさんはポカンとし、ケルトさんはがははと笑っていた。あんなに理屈たらしい僕が、勘だなんて言い出したんだ。そんな反応にもなる。


「分かった。承ろう。怪しい動きがあったら連絡する」


「お願いします」


 そう言って、リュウガさんとの会話ターンは終わった。その後はドラルとの遊びに必死だった。


「全く、イリウス君、最初と変わりすぎじゃないか?」


「まぁな。色々あったんだよ」


「それは良いが…成長は順を追ってするものだ。急成長は良いことではないぞ」


「分かってんよ。だからお前の力を借りるんだ。使えるもんは使う。それがあいつのためだ」


 リュウガさんは不安そうな顔をしていたが、ケルトさんにそれは届かない。ドラルはこんなに無邪気なんだ。巻き込むわけにはいかない。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「ぐぅ〜すぅ〜」


 イリウスが寝静まる夜。3人の時間が始まる。継がれた酒は旨く、ワインは数百年ものだ。つまみを用意し、暗い中で集まった3人の話の中に入っていこうと思う。

 僕の出番無しです。主人公なのに。お子様は見ない方が良いのです


           次回「ーー大人の話ーー」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ