第186話 ーーナビーー
「私ね、悪霊の一部なの」
「え?」
ナビからの話。これから真実を聞かされる。光の玉だったことや、女子高生の姿になれること、どこから来たかなど、全てを。
「私の生まれは分からないけど。カルティっていう街で生まれたの」
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面倒だから産まれてからはカットするわね。大まかな原因が始まったところから話すわ。
「今日で私も高校生…上手く行くかな…」
当時、私は女子校の入試で合格した。今日は入学先。たくさん友達を作って、良い学校生活を送ると意気込んでいた。
そうして入学式にて、隣になった女の子に話しかける。
「あの、私○○。これからよろしくね」
「あ、うん。よろしく。私は☆☆」
名前は…ごめんなさい。覚えていないわ。こうして自己紹介を終わった私達は最初の友達になったわ。最初の方はこの子しか友達が出来なかったのよね。授業とかも、休み時間も、よく話したわ。
教室でね、すごく可愛い子がいたの。ツヤツヤのロングな髪に、鋭い目。それで話しかけに行った人も多かったんだけどね。
「あなたの守護霊、見てあげるわ!…多分祖父かしら?おじさんね」
変な人だったみたいなの。彼女は代々霊媒の家系だったらしく、幽霊とかが見えるの。学校でもそれで人気を取ろうとしたみたいだったんだけど、結果的には不気味がられちゃったわ。彼女が1人になってる時、私達は話しかけに行ったの。
「あの、もしよければ友達にならない?」
「ぇ…?良いの!?私、変な噂とか…」
「大丈夫、噂は噂ものね。私は☆☆。よろしくね」
「あ、私は○○よ」
彼女はキラキラした目で、こう言ったわ。
「私は『彼岸 霊子』よろしくね!」
こうして、私達は友達になった。この後は3人で色々したわ。カラオケ行ったり、メイクしてみたり、プリ撮ったり。普通の高校生だったわ。あれが起きなければ。
「最近、不審者が横行してるらしい。1人では帰らないようにして、充分注意を払うように」
先生からそう告げられた。帰りに☆☆は変なことを言ったわ。
「知ってる?不審者って殺人鬼らしいわよ」
「ちょっと怖いこと言わないでよ」
「1人でいるところをガバッと捕まえて、倉庫に連れて行って…」
「あはは。そんな噂に流されてばっかじゃダメよ。不審者なんだから露出狂とかなんじゃないの?」
「そうよ。本当に殺人鬼なら霊子が何か見たりするんじゃない?」
「そうね。殺された霊は未練たらたらだから見えるはずだわ。何人も殺されてるんだったら増えてるもの。増えてないから平気よ」
「なんだーまたデマかー」
こんな感じで、私達は笑ってたわ。いつも通りの帰り道、十字路でお別れ。
次の日、☆☆は学校に来なかった。連絡も来てなかったみたいだし、私達はお見舞いに行ったわ。
「2人とも…?☆☆はどこに行ったの?」
「え、家にいないんですか?」
「そう…昨日から行方不明なのよ。お願いだから無事に見つかってちょうだい…」
「私達も探しておきます」
☆☆の家からの帰り道、
「もしかして、あの噂が本当に…」
「えぇ。そうね。本当よ」
「もしかして、霊が見えてたの?」
「えぇ…怖がらせたくなくて、嘘ついてたわ。もしかしたら…☆☆はもう…」
「やめて!そんなこと言わないでよ…」
霊子は全部見えてた。霊が増えてることも、殺人鬼がいることも。でもまさか、友達が被害に遭うなんて思わないでしょう?私もきっとそうしたわ。
そうして霊子と別れた十字路。私は背後から不意を突かれ、連れて行かれ、殺された。犯人は、『目取りの殺人鬼』。私は目を生きたまま抉られたわ。
「あなた…誰よ!☆☆はどこ!」
「誰だかは言えない。その☆☆っていうの、俺に捕まったならもう死んでるよ」
「嘘…嘘よ!」
「まぁ君も殺すから、また会えるよ」
「いやぁぁぁー!!!」
ここで私の人生は終わった。確かに死んだの。でもね、ある声で目覚めた。そう、霊子の声よ。
「2人とも…あいつを絶対に逃がさない!力を…貸して!」
気付けば、私は目だけになっていた。☆☆の目もあったわ。霊子だけが、人間の霊の姿で、私達は霊子の周りを飛んでいる感じ。目だけがね。視野は360度、少しも隙はない。
「ど…こ….こ…ろ…す」
みんな意識が朦朧としていた。悪霊の気分ってあんななのね。ただただ、殺人鬼を殺すことだけに執着した霊として、永遠に彷徨う予定だった。それでも、私は思っていた。
(霊子を、2人を解放してあげたい)
その瞬間、私の目の一つが、自分の意思で動けるようになった。これがただ一つの悪意の中に生まれた善意。私よ。
「う、動ける…?霊子?」
「あー…わたしの…わたしのともだち…」
「霊子…」
この時、私は覚悟を決めた。絶対に霊子を成仏させるって。霊子のそばを離れても大丈夫なことから、それが役目なんだって思ったわ。
その後から、私は1人で旅をした。異世界という存在を知ってからは、誰かが作ったホールに急いで入るを繰り返してたわ。私1人でも情報収集は上手く出来るけど、肝心な殺人鬼を捕まえる手段がないことに気付いた。だから、私が見えそうな人に協力してもらおうとしたんだけど…
「悪霊退散!」
「幽霊とか誰が信じるかよ!」
「ホタルの妖怪とかかしら?」
協力してくれる人はいなかったわ。そんな時、私はローディアに来た。そこで最初に見た光景が、
「うーん。どこにもないですね」
おじいさんの落とし物を必死に探していたイリウスよ。こんなに優しい人を見たのは、久しぶりだったわ。そこから、あなたをつけていた。あなたの所に顔を出そうとしたのは、戦いもあるかしら。初めてあの戦いを見た時は見事だと思ったわね。強くも繊細で、難しい動きをこなして相手の急所を避ける。完璧な勝利。
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「そうして、あなたと組もうと決めたの。以上が真実よ」
衝撃で声が出ない。ナビは殺人鬼の直接的な被害者で、同じ被害者である友達を成仏させるために生まれたってこと?
「記憶はほとんどないの?」
「そうね。思い出せないのが多々あるわ」
「じゃあ、殺人鬼を捕まえる為に生まれてきたわけじゃないかもしれないって…」
「そう、あの子を成仏させれれば、殺人鬼なんてどうでも良いのかも…」
ナビが辛い思いをしてるのは知っていた。でも、こんな時なんて言えば良いか分からない。
「気持ちよく成仏させるには、殺人鬼のやつを捕まえる方が良いだろ」
ペグはいつも素直だ。思ったことをすぐ言う。
「…そうね。そうよね。大丈夫、私は最後まで協力するわ。あなた達との旅も悪くないしね」
「1人にしねーから安心しろよイリウス」
「うん!みんなで絶対、殺人鬼を捕まえようね!」
僕らは目を合わせ、ゆっくりと頷く。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「ドラル!」
混沌とした日常の中、やっと訪れた安寧。こんな日くらい何も考えずに平和に過ごしたい。久々に竜の子ドラルに会ったイリウスは衝撃を受けることになる。
たまにはゆったりしてほしいからの。風邪はひかんよう気をつけるんだぞ。
次回「ーー急成長ーー」