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第185話 ーー選択ーー

「スポイルについての連絡が来ない…1日じゃ無理なのかな」


「そうでしょ。簡単に口を割るような奴だとも思えなかったもの」


 協力者達の心情を考えてすぐ、僕は連絡が来ないことを嘆いた。こんなんならちょっとだけ拷問してもらえば良かったとか考えてしまう。


「でも警察さんにやらせるのもなー。ケルトさん達だと最終的に殺しちゃいそうだし…」


 考えていても仕方ない。ケルトさん側に連絡が無いかと言いに行こうとした時、ちょうど玄関のドアが開く。


「少し待っておれ。帰ったぞ!」


「おかえりバク。誰かいるの?」


 玄関の外に話しかけていたようだった。ドアを閉めてるし、知り合いじゃないのかな?


「どうかしたんですか?1人、ですね」


「ああ。客人…みたいなものだ」


「今こんな空気なんですが…断れなかったんですか?」


「そんな生ぬるい相手じゃない。一応断ったが」


 何の話をしてるかさっぱりだ。お客さんなら入れてあげれば良いのに。


「危ない相手ならイリウスは下がってた方が良いな」


「そのことなんだが…イリウスに用があるみたいなんだ。とりあえず入っていいぞ」


 ドアが再度開き、客人の正体が見える。


「でっっっっっっか」


 僕は思わずそう言ってしまった。身長3メートルくらい?肩幅も謎に広いし、顔は被り物のせいで見えない。真っ黒い服。

 チラッとケルトさんを見ると、バリバリ戦闘態勢を取っている


「おいご主人、何でこんなやつ連れてきてんだ!」


「まあまあ。今回は戦いに来たわけではありません。どうか拳を収めてください」


 落ち着いた声でケルトさんを鎮める。不思議な声だ。


「君がイリウス君だね?」


「は、はい…」


「ドンベル達が世話になっているね。ありがとう。ひとまず2人で話したいんですが…」


「…リビングで俺も話を聞く。これがイリウスと話す条件だ」


 何でリビングで…と思ったが、逃がさない為だとすぐ気付いた。今の所そこまで危険性はないけど。


「分かった。怖がったままじゃ話づらいだろう。私の自己紹介もしておくね。私はデルタ。警視総監…言わば警察のトップをやらせてもらっている」


「警察のトップ…だからケルトさんがあそこまで警戒するんですね」


 とりあえずリビングまで移動する。肩とか身長とかはカモフラージュ用らしく、スルスルとドアとか抜けていった。


「そんで、俺のイリウスに何の用だ?」


「おぉ。早速本題とはありがたい。私はついつい別の話をしてしまう癖がありましてな。敵と話してる時でさえつい無駄な…」


「良いから話せ。単刀直入にな」


「失敬失敬。そうですね。目取りの殺人鬼の件、我々に譲っていただけませんか?」


「「!?」」


 僕とケルトさんは驚く。でもきっと、考えてることは違う。


「悪い話では無いと思いますよ。イリウス君はこれ以上危ない目に合わなくて済む。悲しい思いもしなくて済む。何も恐れずに、普段の生活を取り戻せる」


(確かに…でも、それって本当に良いのかな。この人達で、捕まえられるのかな)


「一応聞く、勝算はあるのか?」


「あります。こちらとしても、全勢力を持って挑むつもりです。その為に、少しばかり今までの情報提供をしてほしいのです」


 怪しいのはこの人の身なりのせいだろう。言ってることはごもっともだ。


「どうして今までは全勢力を持って挑まなかったんですか?殺人鬼のが来る周期は分かっていたじゃないですか」


「来るかも分からない不確定な周期の度、全勢力を動かしていたらこちらのリスクが大きくなる。ただ今回は違う。あなた方が見てきた様々な物、それらが全て確定要素へと繋がります」


「お前らにはどんな作戦があるんだ?」


「一度見たことあると思いますが、ロヂと言うコーギーの獣人。彼の能力は占いです。占った人物と関わりを持つ予定の人間の似顔絵を描くことができます。ですので、殺人鬼用の人間を1人用意し、その者を占わせれば、」


「顔が分かるってわけか」


 ペグの役割も補える…数も、戦力も、あっちの方が圧倒的に上。これは任せる方が適任なのではないか?僕はチラッと右上を見ると、ナビがこっちを見ている。


「どうしたのナビ?」


「そこに誰かいらっしゃるのですか?」


「幽霊のナビです。この子のお陰で、僕は殺人鬼を追う気になったんです」


「幽霊ですか。その人が情報を持ってきたんですか。なら丁度良いです。筆の者と一緒に、こちらに引き渡してくれませんか?」


「!」


 ナビの事もペグの事もバレている。僕は驚いて変な反応をしてしまった。


「知っている人は多ければ多いほど良い。安心してください。悪いようにはしません。それどころか望む物なら何でも用意致しましょう。どうですか?」


 いかにもペグが乗りそうな条件だ。高級絵の具とか出されたらすぐに…


「断るぜ。俺はイリウスの筆だ。お前のじゃない」


「おやおや、これは困りましたね。まぁ仕方ないでしょう。幽霊さんの方は?」


 ナビは動かない。何も喋ってくれない。何を考えてるか分からない。


(これを言ったら…イリウスがまた傷付くかもしれない。これを言ったら…イリウスに危ない目に遭わせてしまう)


「ナビ?」


 必死に考えている様子だ。ケルトさんもまた、何かを考えている。


(ひょっとしてこれってめちゃくちゃ良い条件じゃね?イリウスは直接関与しなくて良いわけだし、任せちゃえば不完全で終わるわけでもない。俺じゃ救えないが、これを飲めば守ることが出来るってことだよな。なら飲むしか…)


「…します」


「ん?聞こえませんでした。もう一度言ってもらっても?」


「お断りします」


「それは、幽霊さんのお言葉で?」


「そうでもありますし、僕からの言葉でもあります」


「!!!どうしたイリウス。こんな良い条件なんだぞ」


「あなたが殺人鬼の協力者である確率は0じゃない。それだけです」


 ナビからの返答は貰ってない。でも、これはダメなやつだ。


「それに、あなたのお陰ではっきりしたんです」


「それは一体?」


「僕は、復讐したいんです。両親を殺した殺人鬼に復讐を。安心してください。殺すわけじゃないです。刑務所にぶち込んでやりたいだけです」


「…なるほど。今回は諦めさせていただきます」


「珍しいな。普段ならもっと粘るくせに」


「イリウス君の協力が不可欠な事案です。君の気分が乗らないなら、我々も捜査不可、ということです」


 思ったよりすぐ諦めてくれて助かった。あのまま手駒にはされたくない。


「では、気が変わりましたら連絡を下さい。あ、最後に」


「どうかしたんですか、忘れ物ならすぐ…!」


 途端に身体に穴が開く。何個も何個も、腕に、足に、腹に。驚いてすぐ傷口を触ると、何も無い。


「…幻覚ですか」


「では、これで失礼」


 恐らくデルタさんの能力。相手に幻覚を見せるのだろう。厄介な力だ。デルタさんが帰った後、バクとトラさんが部屋から出てきて話を聞かれた。みんなして受けた方が良かったと言ってくるが、ナビの様子的に何か違う気がした。一体どうしたんだろう。


「イリウス…」


「あ、ナビ。どうしたの?」


「私ね…私ね…殺人鬼を捕まえる為に生まれてきたと思ってた…でもね、そうじゃないのかもしれない」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「それって…」


 思えばナビとイリウスが出会ってだいぶ経つ。しかしナビは自分のことを明かしていなかった。やっと明かされるナビの真実。彼女の正体とは一体なんなのか?

 幽霊の正体は生き物だ。未練が残ってるからいるんだろう?


             次回「ーーナビーー」

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