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第183話 ーースタート地点ーー

「うぅ、さむ…」


 スポイルを捕まえ、異世界「ダスター」からも出る。ローディアは冬の真っ只中で寒い。ダスターにあった国は王様がどうにかするだろう。


「それにしても、これで何の情報も得られなかったら逆戻りだな」


「そうだね。1番面倒なのが残ってる」


 永遠の0(ゼロ)「ニヒル」殺人鬼の居た痕跡や資料を無かったことにするらしい。ナビはこれをゼロに戻すと言っていた。


「スポイルみたいに情報がない協力者も居るかもしれないわ。あいつも私達には気付いているだろうし、気を付けないとね」


「それなんだけど…12月に一回だけ来るはず。警察側の調べだとね」


 殺人鬼が訪れる周期が記されたカレンダー。僕はその写真を見ながら予測する。


「あいつが来るのは大体14〜18。その間に会って捕まえちゃえば僕らの勝ちだ」


「どこに出るかも分からないのにいけるものかしら」


「それは探すしかないでしょ。メーデさんも居るし、見つけるのは難しくないと思う」


「…あれ俺の役目なくね?」


 元々殺人鬼の絵を描くということで置いておいたペグ。ここで殺人鬼を捕まえてしまえば何の役割もなかったことになる。

 僕とナビは目を合わせた。


「まぁ色々協力してくれたし…」


「ちょっとは役に立ってるわよね」


「そ、そんなら良いが…」


 今の生活を気に入ってるんだろう。ペグからは不安そうなオーラを感じた。


「まぁスポイルが吐くか吐かないかで決まるから、今言っててもどうしようもない。僕らに出来ることは待つことだよ」


「そういうことだ。大人しく休んどけ」


「ケルトさん…ノックぐらい…」


 心配で見に来てくれたようだ。あとは任せろとだけ言われて任せてしまったが、平気なのだろうか。とにかく今日は疲れた。少しだけお昼寝しよう。






 あぁ。かったるい。


「吐け、目取りの殺人鬼はどこにいる?」


「知らねーよ。あいつは自由気ままだからな。お前らでも予測出来ねーだろ?」


 椅子に縛られてるが、焦ることはない。抵抗する必要もないし、適当こいてればいい。


「お前と殺人鬼の関係は?」


「友人ってとこか。親しいっちゃ親しいぜ」


「何が目的だ」


「あいつの手伝いみたいなもんだ。衝動が抑えられないあいつのな」


 あいつとは元々長い。俺も俺で刺激が欲しかったし、丁度良かった。


「あの子に会って、どう思った?」


「……」


 俺は笑いが込み上げてきてたまらなくなった。満面の笑みで、俺は答える。


「あいつは良い。絶望に浸れば面白くなるぞ」


「悪趣味な野郎が…」


 取り調べの警官はドアを開けて出て行った。まだ俺の取り調べは終わってないのにな。外で話してんだろ。


「あいつ、嘘か適当なことしか言ってません。これ以上は無駄になりますよ」


「…拷問はするなと言われてる。だが殺人鬼に通じる唯一の手がかり。しないわけにも…」


「でもイリウス君は…」


「それなら我が許可しよう」


 突如聞こえた声、その正体はよく知っているものだった。


「バクさん、どうしてここに?」


「窓が開いてたから入った。拷問の件だが我が許可する」


「せめて正面から…それに許可とは一体?」


「指、腕、足、内臓。死なない程度なら何をしても構わん。殴る蹴るも自由だ。嫌なら我がやろう」


「拷問について言ったのはイリウス君であなたじゃ…」


「秘密にしておけばいい。我も嫌だが、ここで情報が途絶えるのは避けたい。一応イリウスにも『協力する』とは言ったしの」


 本気みたいだ。こちらとしてはありがたいが、果たしていいんだろうか。






「ご主人様平気かな〜」


「主のことだ、心配いらん」


「警察署行くって言ってたけど、窓から入って不審者とかありそうだから怖いんだよな」


 トラは何も言わず冷や汗をかき始める。重要注意人物にはなってほしくないんだろ。大きくため息したあと、口を開いた。


「そういえば、イリウスはどうだった?」


「絶好調…ではないな。あいつも疲れただろうし寝させてる」


「そうか」


 沈黙の時間が流れる。こいつと居ても話すことないし、修行以外じゃいつもこんな感じだ。


「…主は、恐らく情報を吐かせに行った。止めはしたが、お前はどう思う?」


「今日は随分と喋るじゃねーか。何かあるのか?」


「イリウスが心配なだけだ。それでどうなんだ?」


「そうだな。難しいこと聞くんだな」


 情報。持っているに越したことが無いものだ。だが、今は状況が状況。あいつが情報を手にすれば、居ても立っても居られない。このまま行けばあいつは復讐を果たす。行かなければ不完全燃焼。どっちが幸せなんだ?


「どう転んでも地獄だ。俺に出来ることはどっちに転んでもケア出来るよう準備をすること。あいつが生きたい道を生きればいい」


「例えそれが、死であるとしても?」


           死


「おい、どういう意味だ」


 俺はその言葉を聞き、トラに問い詰める。1発殴ろうと思ったが、理由を聞くまで我慢する。


「恐らくお前と俺の考えは同じだ。だがよく考えろ。背負ってるものが違う。違すぎる。今更後戻りは出来ん。進み続けることも、あいつは自分を殺すことになる。一見すると何もしないのが正解だと見えるが、そこで恐れるのは…」


「…自殺、だな。背負いすぎたあいつは、不完全に終われば自殺に追い込まれる。そう言いたいのか」


 トラは無言で頷く。やはりどっちに転んでも、あいつは…


「だが、お前はもう一つ恐れているな」


「…何だ?」


「イリウスの両親を殺したのが殺人鬼じゃなかった。そうなった時、何が出来るのか」


「…ちょっとは休ませろ」


「すまん」


 俺に出来ることか。思えばあいつには色々してきてやったな。色々教えて、飯作って、どこか連れてって。結局全部、守るためにしてきたことで、救うためじゃなかった。俺は、どうすればあいつを救えるんだ?


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「結局、あいつらの目的は…」


 目を覚ましたイリウスは考える。どうしてスポイル達は殺人鬼を守るのかを。今思えば不思議なものだ。それぞれ生きる道があるのに、庇うなんて危険なことをするなんて。

 エアスとスポイルとか、ピカソと違って役割とかないのにね。


           次回「ーー何の為にーー」

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