第180話 ーーたくさんの者ーー
赤く染まった世界。そこで戦うのは、誰かの為に、自分以外のために戦う1人の少年である。
「くっ…!数が多すぎる。こんな量のゾンビ全員倒してる暇ない。でも…」
この人達を解放してあげなきゃ、ちゃんと倒してあげなきゃ。スポイルの力から、解放しなきゃ。
「定まらない狙い!」
ゾンビに囲まれている中、アンロックで大量のゾンビにビームを当てる。多すぎるせいで定まってないはずなのに全部当たる。
「噛まれても感染しないのが唯一の良い点ですね。ナビ、スポイルは!」
「まだ動いてないわ!逃げる様子もない、ここで私たちをやるつもりよ!」
逃げないだけありがたいか。でも、このままじゃあ本当にやられてしまう。
「あっ」
剣を振り回していた時、僕の腕をゾンビが掴んだ。それで動きが止まってしまい、流れが乱れた。
(やばい、体勢を…!)
遅かった。大量のゾンビが僕に乗っかる。これじゃあ圧死だ。こんな所で…僕は…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「優斗!大丈夫か!」
「う、う〜ん…い…たい…」
何で地面に倒れてるんだ?黒いコンクリートの…道路?血が流れてる。僕の頭から?
「待ってろ。今治す」
「○○…?」
この人、まただ。また出て来た。僕の記憶にある、誰か。友達。頭の血が戻っていって、怪我なんて無かったかのように…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
僕に乗っかったゾンビが全員吹っ飛ぶ。急に軽くなった僕はびっくりしたが、その声で誰だか分かる。
「イリウス!1人で行くなっつっただろ!だからこんなことになんだ!分かったか!」
「ケルトさん…?どうしてここに…」
「馬鹿な。ここは俺の許可がないと入れないはずだぞ。なんであの獣人達が…」
「俺の能力、忘れたのか?『力加減によって空間をぶっ壊す能力』。空間を応用してる技なら、どんな技だろうがこの力でどうにか出来る。鍵のかかった触れられない扉でも、俺なら触れてぶっ壊せるってわけだ」
「イリウス、まぁ叱るのは後だ。何をすれば良い?」
「王様を守りながら、ゾンビ達を全員倒してください!首を飛ばすだけじゃダメなんです。全部、全部消さないと」
「はっはっは。相変わらずの無茶振りだ。面白い。その願い、受け入れてやろう」
結局僕にはこの人達しかいない。この人達がいるから、僕が居るんだ。全力で頼りにさせてもらいます。
僕はゾンビを任せてスポイルの所まで一直線で飛んでいく。檻の上で座っていたスポイルは面倒そうに立ち上がり、何人かの強そうなゾンビを前に置く。
「最後の抵抗ってやつか、スポイル」
「それはこっちのセリフだな。お前…いや、お前ら、ただで済むと思うなよ?」
兵士の格好をした強そうなゾンビ達はゾンビとは思えない速度で攻撃を仕掛けてくる。こんなに素早いとはありえない。何とか神器で受け流すが、多対一はやばい。
「ペグ!」
「もうやってる。出来た!吹っ飛べー!」
ペグの描いた大砲から球が飛んでくる。僕はテレポートで避け、ゾンビ達に当たる。
「これで死んでくれるなら嬉しいんだけど…」
爆発も起こり、普通だったら大ダメージなはずだが、ゾンビ達は爆発の中から出てきて向かってくる。
「そう上手くは行かない…か。でもダメージは入ったはず。甲冑の隙間を狙って…!」
矢が足元に刺さる。何だと思い上を見ると、弓兵が居た。あんな量を操ってるなんて思いもしなかった。
ゾンビ達も僕に向かって攻撃を開始する。狙い通り甲冑の隙間から上手く切るが、様子が変な気がする。あまりやりたくなかったが、特大高威力のビームを兵達に当てて、甲冑を溶かす。すると、
「スポイル。お前は本当にムカつくやつだ。人の身体を、命を何だと思ってる」
既に頭がない。それどころか身体中穴が空いていたりしている。頭を刎ねても動き続けるのは知っていたが、先に刎ねて慣らしておくなんてありえない。
「そいつらに命なんてない。もう死んでるだろ?倫理的な話はするなよ。俺には理解出来ないからな」
僕は兵士達をまとめて切り刻み、ビームで燃やした。これで動けない。スポイルを守るゾンビももう居ない。
「終わりだ。お前を捕まえる」
「うお!何だこれ、魔法?」
ケルトさん達もだいぶ片付けたのか、声が聞こえてきた。僕が目線を向けると、雷のような魔法が向かっていた。咄嗟に歪ませて回避させたが、どうして魔法なんかが…。
「当たり前のことだが、魔法使いをゾンビにすれば、魔法が使えるゾンビになるぞ?」
「…!ケルトさん、油断しちゃダメです!」
魔法陣が出てきて、ケルトさん達は大きな爆発に巻き込まれる。火が渦のように登り、爆風で吹き飛ばされそうになる。バクやケルトさんなら不死身だから耐えられる。でもトラさんは…
「あぶねーあぶねー。服が燃えるとこだったぜ」
「流石に全裸で戦うのは格好つかんからな」
「全く。我々がその程度も予想していないと思っておったのか?イリウスよ」
「……良かった…」
あれに反応して避けたみたいだ。
「こっちは任せておけ。そっちはそっちのことに集中しろ!魔法使いはそっちにも居るぜ?」
「よく分かったな。これだから経験者は嫌いだ。何でもすぐ当ててきやがる」
スポイルの後ろから魔法使いゾンビが現れるがそれだけじゃない。剣を持った人や、弓を持った人まで。これはさっきまでとは違う。どこかの世界のパーティを丸ごとゾンビにしたのか。
「こいつらは勇者パーティってやつだ。魔王を倒したとされる伝説の勇者達、それを相手出来るかな?」
「出来る出来ないんじゃないんです。やるしかないんですよ。ナビ、ペグ。力を貸して」
「分かったわ!」「おう!」
厄介な相手だ。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「……」
どこかの世界の勇者パーティと戦うことになったイリウス。凄まじい経験とチームワークを兼ね備えた人達に押されてしまうが、ここで負けるわけにはいかない。
ゾンビの肉を切る感触、「グチャ」って感じでめっちゃ嫌だの
次回「ーー腐るーー」