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第178話 ーー外ーー

 スポイルと対面した僕、思ったより良い人そうだった上、それは嘘じゃないと心音から分かった。可能性としては二重人格、もしくはエアスの嘘ということになった。エアスもスポイルも信じたい僕は、もう少しだけ調査することにした。


「ということで外に調査しに行ってきます」


「おう、まぁ気をつけてな。あ、それと金だ」


 もう一度中に入るチケット代を貰い、外へ出る。門前の人からはあまりの速さに驚かれた。夜になる前に何か見つけないと。


「おーい。おーい。どこに行ったんだー」


「あれ?あの人…」


 僕らにチケットを売った人だ。情報も色々もらったし、挨拶しておかないと。


「こんにちは!」


「あれ?もう出てきたのかい?」


「また入ります。ところでどうかしたんですか?」


「それがねぇ…」


 どうやら人を探しているらしい。夫婦で生活していた人らしく、いつも見るのに今日は見ていないだとか。


「あの2人はとても仲が良くてね…どんなにお金が無くても、婚約指輪だけは売らなかったんだ。こっちも良くしてもらってたから飢え死にとかはしてほしくないんだよ」


「なるほど。指輪をしたお二人ですね。僕の探し物ついでに探しておきます」


 そう言って僕は見回る。スポイルが何かしている所とか見つければ何かしら分かると思うが、確か城にいたはずだ。こんな所にいるわけない。


「やっぱり…スポイルは悪人じゃないのかな。全部エアスの嘘?だとしたらまた始めからかな」


 そう考えながら歩いていると、2人の人影が見えた。ひょっとしてと近付いたら、僕は後悔することになった。


「し、死んでる…」


 男女は両方とも左手薬指に指輪をしている。あの人が探していた人に間違いない。


「あ、少年よ!見つかったかい?」


(やばい、こんなの見たら…)


「えっと、まだ…」


 僕が止めようとするより先に、老人は辿り着いてしまった。その光景を見た老人は、目を丸くして、ひどく落ち込んだ。


「別におかしな話じゃないさ…この外じゃあ、人が死ぬのなんて日常茶飯事だ…でも、誰も見ない所で死ぬなんて、あんまりじゃないか…」


 外の人は死にやすい。環境的にも、金銭的にも。それでも好んでここにいるわけじゃないのかと僕は思い出す。


「外にいる人ってみんな好んでここに居るって聞いたんですけど、違うんですか?」


「そんなわけあるか!死ぬくらいなら中に居たほうがよっぽど良い…だが、わしらはみな監視されているんじゃ」


「監視?」


「そう。長年外で暮らしているものや、中で適応出来なかったものを入れないよう、監視しているんじゃよ…」


 これは初耳だ。そこまでするのには理由があるのか?感染症とかなら納得出来るが、出禁にするほどなのだろうか。


「都合が良いってやつですか。確かに危険視というより何かを狙ってるような…」


 そう考えていると、老人が僕の後ろを見て驚いたように腰を抜かす。僕も慌てて振り返るが、夕日をバックに、二つの人影が。


「あれって…」


「生きてたんだ!2人は生きておったんじゃ!」


「…!待ってください!」


 何かおかしい。まずい気がする。


「全く心配かけさせやがっ……て?」


 光のせいで影しか見えない。でも、う゛ーと言う低く、ガラガラした声と、僕らを見ていないその目で、何となく分かった。


「お前ら…一体…!」


 老人が殴られそうになった所を、僕がテレポートで助ける。やっぱりだ、あの人達はもう、「腐ってる」


「近付かないで下さい。あの2人はもう死んでます」


「何を言ってる!立ってるじゃないか!」


「ゾンビになってるんです!やっぱり居たんですね、ゾンビの能力者」


 でも姿は見ていない。遠隔でゾンビに出来るのか?それともまだ近くにいるのか?とにかく早く探さないと。


「待ってくれ!ダメじゃ…殺しちゃダメじゃ…ゾンビとか知らないが…ちゃんと動いてるじゃないか…」


 神器を取り出した僕を必死に止める。知らない人にとっては、ゾンビでも生きているのと同じようなものだ。それが大切な人となれば…


(ダメ、迷ってる暇はない。今すぐあの2人を殺して探さなきゃ。どっちにしろあの2人は助からないんだ。生きてないんだ。僕は殺しなんてしない。元々死んでるんだ。






   でも、殺しちゃったら、この人は悲しむ)


 僕の迷いは、体の自由を効かなくさせる。気がつくと、ゾンビがすぐそこまで。人の限度、怪我をしないための無意識の加減を忘れた人間の攻撃は、普通よりもよっぽどダメージが高い。食らったらタダじゃ済まない。


(それなのに…決意が固まらない…)


「うっ!」


 殴られる直前、何かに突き飛ばされて助かった。すぐに立ち上がり老人を心配する。怪我はないみたいだ。その後僕が目の前を見た時に居たのは、ペグだった。


「念の為着いて来といて良かったぜ」


 空中に手のような物を描き、僕のほっぺを思いっきり叩く。


「しっかりしろ!お前は殺人鬼を捕まえるんだろ!他人ばっか気にして、自分の意思も固められねーやつにそんなこと出来ると思ってんのか!お前がやるべきことはなんだ!あのゾンビを生かすことなのか!?」


 やっと目が覚めた。僕はみんなを助けたいんだ、守りたいんだ。ゾンビを放っておけば、きっと外の人達に手を出してしまう。


「ごめんなさい、おじいさん。僕、あの2人を…送ってみせます」


「おく…る?」


「あの2人の魂を、天国まで、きっと送ってみせます!だから、僕に任せてください」


 僕なら出来る。やるからには、一撃で楽に送ってあげるからね。

 僕は怒りを、疑いを、心の霧を晴らして、清々しく、慈愛の祈りを持ち、2人の首を刎ねた。それでも動き続ける頭と身体に不気味がることなく、ビームで燃やす。それは一瞬で、誰も気付かない内に終わった。


「おじいさん。これで解放されましたかね」


「…あぁ。きっとな」


 終わった後は、すぐさま犯人を探す。でも見つからない。時間をかけすぎたか。そう思ったがもしかしたらと思い街への入り口に向かった。そこにはローブ姿の明らかに怪しい奴がいる。


「待て!」


 丁度中に入っていく所だった。僕はテレポートで無理矢理追いかけようとしたが、


「イリウス。追っちゃダメ。出禁になるわよ」


「ナビ!でも追わなきゃ…」


「問題ないわ。しっかりと、見たからね」


 2人とも、僕が心配でついて来てたんだろう。本当にありがたい。感謝してもしきれない。ナビからは話を聞くことになった。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「一体何人の魂を弄んだ!」


 遂に犯人を突き止めたイリウス達。たくさんの人を殺し、ゾンビにした『そいつ』に、イリウスは怒りが抑えられない。その感情任せ、ケルト達に言わずに会ったイリウスはどうなるのか。

 俺が居なきゃ大変だったな!あいつはいつも心配かかるからな!


            次回「ーーゾンビーー」

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