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第174話 ーートラさんの誕生日ーー

 キュ、キュっとマジックでカレンダーにマークを付ける。今日は12月1日。トラさんの誕生日だ。


「うーん。プレゼントどうしようか迷いますね…」


「トラっつってもネコ科だろ?マタタビでもあげれば良いんじゃね?」


「ケルトさんに骨あげるのと同じだよ。多分殺される」


 野生の獣じゃなければ猫でもない。ケルトさんのこと無駄なプライドって言ってたから猫扱いされても怒らないかもしれないが、流石にマタタビは可哀想だ。本気で悩んだ末、こっそりバクに聞くことにした。


「誕生日プレゼント…か。トラが好きな物とか、よく考えたら知らんの」


「えー。200年は一緒に居るんでしょ?それなのに知らないの?」


「仕方あるまい。あやつは顔に出ないからの。特別キラキラした物を付けるわけでもないし、食べ物も自分で作った物だけを美味そうに食べるしな」


 思い返してみてもトラさんの好きな物っぽいものは思い浮かばない。顔に出ないどころか口にも出さないからこれは厄介だ。


「では、我はプレゼントを探しに行ってくるぞ」


「え、ずるい僕も行く」


「ダメだ。こういうのは内緒にしておくから価値があるのだぞ」


 そう言ってバクは出かけてしまった。仕方なくケルトさんを頼ろうと家の中を探すが居ない。玄関を見てみても靴はある。ということはハコニワで修行だろうか。ケルトさんのハコニワに入ろうとした時、あることが頭を過ぎる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「お、イリウスじゃねーか!丁度良い!相手が欲しかったんだ!あ?トラのプレゼント?良いから修行しろや雑魚が!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 こうなりかねない。修行中に割り込むなんて自殺行為だ。結局僕は自分の頭とナビとペグを頼ることにした。


「男なんて単純なんだからラーメンでも食べさせれば良いんじゃない?」


「マタタビがダメなら猫じゃらしとかどうだ?描いてやるぜ」


「この2人はダメな気がする…」


 やっぱり1人で考えるしかないと思った。だがそれよりも考えるべき問題が一つあった。


「僕の所持金これだけ…?」


 600ローだ。たまーに現金を渡されて買い物に行くが、その時のお釣りを貯めた額。基本カードだから少ない。


「600ローって何買えるの?」


「そうね。お団子5本くらい買えるんじゃない?」


 商店街は基本安いがトラさんの胃袋を考えるとそんなんじゃ足りない。明らかにやばい。


「これじゃあプレゼントも買えないよ…バクは出かけちゃったしケルトさんは修行中だし…トラさんにお金頂戴なんて言ったらバレちゃう!」


「お、金なら描いてやろうか?」


「犯罪はやめて!」


 お金を描こうとするペグを止め、僕は考えた。600ローでトラさんが喜ぶプレゼント…

 悩んだ末に、僕はあることに気付いた。今まで気付かなかった、他の人とはあって、トラさんとはないこと。僕は買い物に出かけた。






「誕生日おめでとーございます!」


 トラさんがリビングに来た所で祝う。ケルトさんも美味しそうな料理を作ってくれたし、バクもプレゼントを隠して座っている。この時点でトラさんは嬉しそうだ。


「わ、わざわざこんなことをしなくても…俺はあくまで従者で…」


「何を言っておる。ちゃんとした家族であろう?誕生日くらい祝わせろ」


 相変わらず控えめなトラさんだったがバクに一蹴される。たくさんあった料理やケーキを平らげ、いざ、プレゼントタイムだ。


「そういえばトラさんも家に居なかったですけど何してたんですか?」


「ケルトと修行だ。早く強くならないとな」


「だからプレゼントとか何も用意出来てねーんだが…まぁそうだな。しばらく修行終わりにマッサージでもしてやるよ」


「本当か!それは随分と嬉しいものだな」


 滑らかに会話に滑り込みプレゼントをしたケルトさん。しかもトラさんめちゃくちゃ嬉しそう。これは後がきついタイプだ。僕らのプレッシャーが凄い。


「我からはこれぞ。本だ。一応大事な物だから大事に使うんだぞ」


「あ、ありがとうございます!何回でも読み返すことにします!」


「そうはならんと思うがの」


 バクは買い物に出かけたのに何も買ってなかったのか。それなら僕の話聞いてくれても良かったじゃん!そう思いながらも僕はプレゼントを用意する。


「こ、これ!」


「…?」


 僕の手にあるのはおもちゃのハンマー。完全におもちゃだ。ケルトさんは笑いを堪えるのに必死になっている。


「こ、交換でお願いします!」


「プレゼントじゃないのか?何とだ?」


「トラさんの神器の一つと…」


 ケルトさんも流石に驚く。おもちゃのハンマーと神器のハンマーの交換は異例すぎる。神器はそこまで軽くない。


「良いかイリウス。トラも確かに複数神器を持っておるが、流石におもちゃとの交換は…」


「僕、思ったんです。バクとは、このナイフで繋がってます。ケルトさんとは首輪で…でもトラさんとは何も繋がってないんです。だから、繋がるのが僕からのプレゼントです!」


 僕なりに考えた結果だ。トラさんはいつもそうだ。1人でも大丈夫、見守るのが好きなんだって、遠くから僕らを眺める。でも僕は、僕らの中にトラさんが居てほしい。だから、そうしやすいように繋がっていたいんだ。


「…分かった。交換しよう」


 マジか…とケルトさんもバクも驚いた様子だったが、トラさんの目に迷いはない。僕の理由を聞いて少しだけ嬉しそうだった。


「これで良いか?少し重たいかもだが…」


「大丈夫です!」


 トラさんは神器譲渡の儀を行う。僕の手にある神器は、光を宿し僕の五芒星と繋がりを果たす。


「これで出来たぞ。お前と俺の繋がりだ」


「はい!ありがとうござ…にゅぎゅ〜」


 トラさんは我慢が効かなくなったかのようにいきなり抱きついてくる。力が強くて潰れちゃいそうになるが我慢だ。


「俺のことなんて気にかけてくれてありがとう…イリウス」


「えへへ〜家族なんですから当然ですよ」


「お?泣いてんのか?」


「馬鹿言え!泣くわけないだろ!」


 トラさんは自分は空気で良いって思ってそうだ。でも僕はそれを良いとは思わない。自分勝手だったけど、それでもトラさんには嬉しいことだと良いな。

 夜、トラさんは自分の部屋でバクから貰った本を開く。


「早速だが読んでみるか。ん?」


 本を開けた途端、何かが下に落ちた。しおりかと思い拾うが、手紙みたいだ。


「これは…ふっ。イリウスばかり構っていたが、たまには主にも構ってあげなきゃな」


 内容は秘密だ。今日はトラさんにとって最高の日だっただろう。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「異世界ダスターに行きたいです!」


 楽しい日はあっという間。苦しい時の方が長く感じるのはなんでだろう。イリウスは夢を見る。残酷な悪夢を。早く殺人鬼を捕まえないと。そう思い、異世界ダスターへと向かう。

 出来れば平和に終わってほしいが…そうも行かなそうだ。やれることなら何でもやる。


            次回「ーーダストーー」

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