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第172話 ーーお手伝いーー

「ふんふふーん♪」


 最近テレビでよく流れてくる、能力者アイドル『AMEMITU(アメミツ)』。僕は前に会ったことがあり、繋がりを作っている。その時にもらったのがこれ、永久パス。どうやらどのライブでもVIP席を使えるらしい。あれ以降忙しくて行けてないな。


「おーいイリウス〜。お前宛てに手紙だぞ」


「僕宛てに?」


 僕個人への手紙なんて珍しい。っていうか住所知ってる人が珍しい。特に差出人も書いてないが、気になるからぱぱっと開ける。


「うーん…?つまるところアイドルのお手伝いの招待ですか。久しぶりだし行こうかな〜」


「何の手紙だ?」


 ケルトさんが覗き込む。最初は反対されるかもと思っていたが、それも儚く散りケルトさんと一緒なら行っても良いということになった。

 そうして訪れた当日。朝早くに会場に着いた


「まだ開くまで時間あるのに人が居るんですね」


「ああいうのはガチ勢って言うんだぜ。誰よりも先に入ることに意味があると思い込んでる。実際は全く意味なんてないぞ」


「あんまり夢の無いこと言わないでよね」


 後ろから聞こえた声。聞き覚えのある、綺麗な声だ。


「ミナミさん!」「ミナミ!」


「久しぶり、2人とも。元気にしてた?」


 僕らは本来入れない時間帯に特別招待として入らせてもらった。今回はお手伝いに来てるから当然っちゃ当然だ。久しぶりにミナミさんと話したが、相変わらず上手く行ってるようで安心する。


「ところで、今日は何のお手伝いなんですか?手紙には手伝いとしか書いてなかったですが」


「今回はね…アイドルになってもらおうと思うの!」





「へ?」


 訳も分からないまま控室へ。そこにはミナミさん他メンバーと、知らない人がいた。


「おーミナミ。この人が例の?」


「ええ。アイドル候補の1人よ。どうかしら?」


「…うん!これはありだ!是非ともスカウトさせてもらいたい!」


 何が起こってるのか分からない。何にも分からない。この人誰?という目で見ていると、名刺と一緒に自己紹介してきた。


「失礼しました。わたくし、○○アイドル事務所のコバヤシと申します。現在アメミツのマネージャーとして、働かせてもらっています」


「今回はね〜♡。アイドル界に変革を起こすべく、新人アイドル求人をしたの〜♡」


「?」


 リーダーのアツメさんはそう言ったが、何言ってるか分からない。新人アイドルを求人したなら僕をアイドルにする必要あるのか?


「簡単に言うと企画みたいなものよ。新人アイドルと歌って踊る。その子のグループの知名度も上がるし、新しい企画で観客も満足させれるしでWin-Winのはずだったんだけど…」


「能力を使うアイドルグループなんてあたいらだけ。応募者数は脅威の0よ」


「そ、こ、で!是非ともあなたにやってもらいたいのよ。能力は知らないけど、きっと上手く行くはずだわ!」


 ツッコミたい所がいっぱいある。その中の一つが…


「僕男ですよ!」


 そう。アイドルは女がやるものという偏見とかは無いのだが、少なくともこのグループは女の人のグループだ。その中に男の、しかも子供の僕が混じるなんて色々アウト。勘違いされる可能性だってある。


「変装すれば良いのよ。そのためのメイクさん達なんだから」


「それはまぁそうですけど…踊りとか訳わかんないですし…」


「そこは指導するわよ。踊りが1番上手いのはセイカだからお願いするわね」


「まぁ良いけどさ。うちら、結構体力使うよ」


 白がイメージカラーのセイカさん。これと言って喋りに特徴がないが、ちょっと怖い。ケルトさんにも何か言って欲しかったが上の空だった。結局僕はアイドルを、ケルトさんは機材を運ぶのを手伝う手伝いをさせられた。


「あら、似合ってるじゃない♡。男の子だから素肌は出来るだけ隠さなきゃね♡。喉仏は…」


「能力で隠すから平気です」


 歪みの力で上手く誤魔化す。原理はトウメイと一緒だ。


「そういえば、私達の能力も言った方が良いわね。私の能力は『歌で注目を浴びる能力』♡」


 アツメさんの力、アイドルに向きすぎてる能力だ。


「私は『大砲を出す能力』ってとこかしら。好きなタイミングで発射出来るわ」


 ミナミさんの能力はステージの演出でよく使われている。


「私の能力は『火炎放射器を出す能力』。ステージの炎は私がやってるわ」


 セイカさんの能力も見たことある。カーテンに燃え移らない調整がすごい。


「あたいは『光を操る能力』。キラキラさせたり、明るさを調整したりする役をやってる」


 裏方の人がすごい頑張ってるのかと思っていたが、この人のお陰だったのか。流石マユさん。


「わ、私のの、能力は、『紙吹雪に変える能力』で、です!」


 ヒナさんの能力は独特だな。もしかしてミナミさんの大砲の球を紙吹雪に変えてるのかな。


「以上がそれぞれの能力よ。それで、あなたの能力は?」


「僕は『歪みを操る能力』です!相性が良さそうなのはミナミさんですかね。大砲の球の方向変えられます!」


 みんなに自己紹介させておいて自分だけ嘘を吐くわけにはいかない。僕はキラキラした衣装を着ながら自己紹介を済ました。その後は踊りのレッスンだ。開始時刻まで少ししか時間がないのにやらされる。


「いちっにっいちっに!」


「あら。筋が良いじゃない♡。やっぱり私の見込みは間違ってなかったわね♡」


 筋が良かったらしく、衣装を着てでの踊りも楽々こなした。歌に関しては歌詞カードを見ても良いと言われたが、僕の圧倒的記憶量でどうにかした。

 そうして開始まで残りわずか。控え室にて、アツメさんに最終確認をされる。


「こら♡。髪が乱れてる♡」


「あ、すいません。さっきのダンスで乱れちゃいました」


「良いから座って。直してあげるわ♡」


 アツメさんはクシで髪を整えてくれる。その様はまるで、お母さんのようだった。


「私ね。子供の髪を解かすのが夢だったの。小学生の頃の話よ。お母さんから何回も髪を解かしてもらって、いつか私もやってみたいと思ってたの」


「すれば良いじゃないですか。アツメさん綺麗だから結婚したがる人もいると思います」


「ふふふっ♡。そうもいかないのよ。アイドルって言うのは、みんなの夢そのものなの。私達は常にファン達の隣に居ないといけないの。だからダメなのよ」


 いまいちよく分からない。アイドルだって自由はあるはずだ。あ、僕がケルトさんの子供だから強くならないといけないって言うのと同じなのかな。


「私達はね、小学生の時からずーっと一緒なのよ。お母さんもアイドルで…この話は後にしましょう。髪が整ったわ。蝶の髪飾りで…完成よ♡」


 鏡の前には誰か分からない自分がいる。こんなはずじゃなかったのに。でも、みんなと歌って踊るのも悪くないかもな。


「アメミツさん、時間です」


「「「「「「はーい」」」」」」


 僕のアイドルデビューが今、始まる。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「緊張するのです…」


 数千人も集まったアメミツのファン達。その中に突如現れたデビュー新人はイリウスだ。何人もの視線を集めたイリウスは、無事にライブを成功させることが出来るのか。

 女ならミナミ!男ならイリウスがタイプだ!人の趣向にケチ付けんなよ!


            次回「ーーライブーー」

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