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第169話 ーー聖地巡礼ーー

「こっちこっち!もう、ナビも早く!」


 僕はそう言いながら田舎道を走る。今日は僕が神の憑き人になった神社へと赴く。たまには行かないと縁起悪そうだし。僕はあの時の道を思い出し、山奥へ続く階段前まで来た。


「この階段登ったらすぐだよ!」


「何でそんなに急いでんだよ…。てか筆ぐらいポッケに入んだろ!」


 ペグの文句を無視して登る。2人は浮いてるから行きやすいだろうなと思いながらも駆け上がる。スタミナ付いてきたかな。そんなことを考えながら上に登っていくと、段々声が聞こえるようになってくる。そうして着いた神社。辺りにはたくさんの落神様達がいる。


「お久しぶりです!落神様!」


「おう!ガキか!久しぶりってほど時間経ったのか?」


「もう8ヶ月くらい経ってるんですが…」


 相変わらず酒を飲みまくっていて安心する。神様だから時間の感覚も違うみたいだ。


「そうか。そんで、何か用があるんじゃないのか?」


「…いえ、特にありませんよ。あ、それより、この2人のこと紹介しますね!」


 僕はナビとペグについて紹介する。特にペグについては、色々教えてもらえるかもしれないし。


「…ねぇイリウス。誰と話してるの?」


「え?」


 おかしいことに気づく。確かにさっきからペグもナビも一向に落神様と目が合わない。ここは神社だし、普段神様が見えない人でも見えるはずなんじゃ?


「俺らは落神。普通の神よりは神力がすくねーんだよ。だから例え神社であったとしても、見えるやつなんぞ居ない」


 初めて来た時も思った。この人達は神力がないんじゃないかと。神力がとんでもなく少なかったからなんだ。


「なるほど…人が神様を見るには、神様の神力量が関係してるんですね。じゃあここにバクとか連れてきても見れないのか…」


「落神っつーのはそういうもんなんだよ」


 落神様はそう言って酒を一口、二口と飲む。この人達に酔うという感覚はあるのだろうか。僕も隣に座って、話そうか迷う。これは言っていいことなんだろうか。


「迷ってるな」


「え?」


「これでも元神だ。人間の心くらい分かってやらなきゃ神なんてやってけねーよ。俺は隠し事の方が嫌いだ。何かあるんなら素直に話しな」


 本当にこの人がやったのか、僕はとても信じられない。神様としてのプライドも、人間を思う心も、全部あるのに、この人が「人を殺すことでレベルが手に入るルール」を作ったのだろうか。

 このまま黙ってても仕方がない。話してみるしかない。


「僕は…この世界の、能力者の。殺し合いをすればレベルがもらえるルールが嫌いです」


「…ほう。教えてもらったか。お前の予想通りだ。『それ』は俺らがやった」


 何でそんな素直に話すんだ。どうしてこの人達なんだ。僕らの会話で、盛り上がっていた周りの落神様達も黙る。


「あそこのやつらも、分かってんだろ?」


「はい…」


 本殿の中にいる顔が見えない2人。どちらも、四大神だ。あの時、落神様達に殺された神様だ。


「今は、どう思ってるんですか?この世界のルールについて、あの神様について」


 少し行き過ぎた質問だったと、今でもそう思う。でも、これだけは聞いておかなきゃいけなかった。


「…悪いことしたと思ってるさ。あの時は、人間なんてどうでもよかった。ただ自分の思い通りになれば、どうでも。ただな、この地に降りて気付いた。争わせるべきじゃなかったって。そしてこの平穏が保たれてるのは、四大神がいるからだって」


 他の落神様達も頷く。この人達はこの人達なりに反省してるんだ。だからって許されることじゃないけど、それで解決するわけでもない。殺されちゃった四大神様もあそこに居るんだったら、きっと何かあるだろうし。


「落神様、どうにか世界を元通りにする方法は無いんですか?」


「無い。…と言うにはまだ早いか。もしかしたら、出来るかもしれない」


「本当ですか!?」


 世神様でも出来なかったこと。方法があるんだったら何でもやりたい。そう思ったのに。


「何人かの神を犠牲にする。我々がやった時と同じようなことで、解決するんじゃ無いかと思う」


「…無理じゃないですか!」


 理論上可能だが倫理上不可能だ。逆にそれしか解決方法はないと言うことだろうか。やはり変えるべきは人間達の意識。


「ふーむ。仕方があるまい。ワシらもどうにかしようとは思ったんだがな。ん?」


 落神様は四大神様方の方を向くと、真っ直ぐ歩いて行き耳を傾けた。しばらく頷いたりした後、こっちに帰ってくる。


「どうかしたんですか?」


「伝言をな。あんたにだ」


「僕ですか?てか直接言ってくれれば…」


 そう思ったが、顔が見えないのには理由がある。素直に落神様の言うことを聞く。


 『あなたが将来の四大神なら安心。世神にもよろしく…いや、伝えなくて良いわ』

 『君の言葉は、きっといくつもの人を救う。良い神になってくれ』

                 だそうだ」


 やっぱりそうだ。四大神様は、どうしてこうも優しい人ばかりなんだろう。僕は喜びながらも、この人達の後継ぎについて考える。今の混秩の神、無機物を生みし神は、とても悲惨らしい。世神様が、あの2人はダメだと言っていたから。僕に人を変える力があるなら、人を助ける力があるなら、


「絶対、僕がこの世界を変えてみせます。そして、神の世界も変えてみせます」


 顔は見えないけど、確かに笑った。僕には分かる。本当の神様の気持ちが。

 そうして話も終わり、帰路に着く。ここら辺は平和で良い。田舎っぽい感じも相まって、とても落ち着く…。そう思っていると、目の前に危ない武器を持った人が。


「お前、能力者だな。レベルを寄越せ。さもないと…」


「もう!良い感じに終われそうだったんだから勘弁してくださいよ!」


 こうして僕の1日は終わる。ペグが着いてきてくれてて本当良かった(勝った)。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「誰も居ない…おかしいのですね…」


 朝、イリウスが目を覚ますとどこにも人が居なかった。外に出ても、世界を移動してみても、神様ですら見当たらない。自分だけの世界…イリウスはそんな場所で何をするのか。

 自分だけの世界か。俺だったらぶっ壊しまくるかな。ストレス発散だ!


            次回「ーー僕だけーー」

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