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第168話 ーー布団ーー

 朝日が登る。もう外は寒い。寒過ぎて布団から出たくなくなってしまう。規則正しい生活を安定させる為にセットした8時のアラームを、何の躊躇いもなく切る。そのまま布団に潜ってぐっすりと‥


「…ん?」


 ジリリリリと古い目覚ましのような音が響く。布団の中にある目覚ましからじゃなく外から。僕は寒い中少しだけ顔を出す。


「起きろイリウス。スケッチの時間だぞ」


 どうやらペグが描いた目覚まし時計が鳴ったようだ。恐らくわざと描いたんだろう。


「後5分だけ…」


「そう言って30分ぐらい経つんだろ!早く起きねーと朝飯も無くなるぞ!」


 僕はペグの言葉に耳を傾けず目を瞑った。もう一度寝れそうだった時、音を出している目覚ましが僕の布団へ大量投下される。


「んがぁー!うるさい!」


「おーきーろー!」


 描かれた絵を全てビームで消す。そしてこのままだとまた邪魔されると分かってた僕は対策を講じる。こんなことの為に使っちゃいけないのは分かっているが、召喚(サモン)〈スキュー〉。


「ンゴォ!」


「ってことでよろしく〜」


 ペグは邪魔しようとするが、スキューがそれを許さない。完全に門番だ。僕はそのままぐっすりと眠りにつく…。


 そして9時。遅いからケルトさんが僕の部屋に来る。扉を開けて早々スキューが見えたから幻覚じゃないかと目を擦ったがやはりそこにいる。


「イリウス?何でスキューなんて出してんだ。ってか寝んな」


 ケルトさんはそう言うが僕の耳には届かない。仕方ないとこっちまで来て布団を捲ろうとするが、そこにはスキューが居る。布団に手を伸ばしたケルトさんを、スキューは止めようとする。ビームを出しても良いんだぞと言わんばかりに目である玉をピカピカ光らせる。


「お前、神力あんまりもらってねーだろ。今のお前をぶっ殺すなんて、そう難しくねーんだぞ?」


「ンゴォ…」


 ケルトさんは遠慮なく殺気を出す。流石の僕でもこれには目を覚ます。そしてスキューはこの時初めて知った。死の恐怖を。


「ケルトさん?何でここに…」


「何でもクソもねー。早く出てこい」


 時計を見ると9時だ。それでも僕は起きる気がしない。でもケルトさんの警告を無視したら痛い目を見る。どうするべきか…。


「お布団があったかくて外に出れないです」


「歪みでお前の周りの温度を歪ませれば良いだろ」


「モフモフ感がないです」


「俺のこと触ってれば良いだろ」


 何を言っても言い返されるパターンだと悟り、最終手段に移る。


「ぬわぁー。お布団に吸い込まれていく〜。これは誰かの能力に違いないです〜。早く倒しに行ってください〜」


 ケルトさんは大きくため息を吐く。自分でも何をしてるのかよく分からない。


「そうか。じゃあとりあえず外に居る奴ら皆殺しにしてくるから待っとけよ」


「ストップ!出ます!出ますから!」


 僕はそうやってたくさんの命を救った。布団に出た後は寒さを感じながら着替えて、顔を洗い、ご飯を食べる。


「ご飯が冷めてます…」


「自業自得だ。ビームででも温めてろ」


 仕方なくビームで温める。焼けちゃわないよう気をつけなきゃ。それよりも一つ気になるものがある。テーブルの上、もう1人分の朝食が置きっぱなしだ。この時間に起きない人といえば…。


「おはよう、全員いるのか?」


「バクじゃん。何でこんな時間に?」


「我は寒い朝が苦手なのだ。本当はもっと寝てたいぐらいだったがの」


 バクがそう言って先に着くと、朝食を食べ始める。僕はその様を見てケルトさんに言う。


「何で僕にだけ厳しいんですか!バクだって朝弱いじゃないですか!」


「お前は俺の息子だぜ?規則正しい生活、バランスの整った食事、そして最強の力。これだけは抜けねーな」


「…僕がケルトさんの息子なら、兄であるバクもケルトさんの息子です」


「ウッ…」


 設定の穴を突かれて口が動かなくなったが、ケルトさんの意見ももっともだ。バクは不老不死だし気にしなくて良いかもだが僕は違う。とはいえ子供なんだからいっぱい寝かせてほしい。


「寒いんだったら俺の部屋来れば良いだろ。あっためてやるぜ」


「そんなあったまるんですか?」


「人…獣肌舐めんなよ。無駄に毛が生えてて冬でも暑い時あるんだ。お前みたいにひんやりしてる抱き枕があった方が俺も寝やすいかもな」


 バクとの対応差にムッとさせながらもその対策を飲むことに。そうしてやってきた夜。やはり夜も冷え込む。足も手をキンキンだ。


「そんじゃ寝るか。俺も明日は朝から筋トレするからな」


「じゃあ失礼します」


 そう言ってケルトさんの上に乗る。寝心地は案外悪くない。言ってた通り暖かい。人体的な温もりがここまで良いものだとは思わなかった。服越しでもモフモフが伝わってくるし、これはこれでありだ。そのまま布団を被って、モコモコ状態で眠りにつく…


 そうして次の日、ケルトさんは苦戦していた。今は朝5時。いつもケルトさんとトラさんが起きている時間だ。何に苦戦してるかと言うと、僕がしがみついているのだ。起こすのは申し訳ないし、かと言って二度寝するわけにはいかない。


(一瞬で移動すればって思ったけど、爪が剥がれる可能性あるし出来ねーな。ゆっくり退かすって言ったって掴まれてるから離れねーし。あーテレポート欲しい)


「ケルト、今日は2階の掃除を…何してるんだ?」


「手伝えるんなら手伝ってくれ。イリウスを起こしたくない」


「しがみついてるんなら服を脱げば良いだろ」


 そういやそうだったと器用に服を脱ぎながら脱出。そのままどこかへと行ってしまった。


          朝8時


「…何でスキューが居るんだ?」


「むにゃむにゃ…」


「俺の部屋で同じこと繰り返してるんじゃねー!」


 こうして僕の朝のルーティーンは消えてなくなった。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「お久しぶりです、落神様」


 イリウスには避けていたものがあった。この世界のルールの全ての元凶、落神。イリウスが能力者になった神社で酒を飲んでいる落神達に、何をしに行ったのか。

 人を殺すことで手に入るレベル…それを使ったのが知人とは、辛いの。


           次回「ーー聖地巡礼ーー」

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