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第166話 ーー仕える者ーー

「はぁ600歳!?こんな子供なのに」


 バクとトラが出会った場面。いきなりの事だったがとりあえず話をしようとカフェに入る。人が多いローディアだが、カフェの中は空いているものだ。


「ま、とにかくそゆこと。不老不死で既に600年も経ってた。僕も大切な人が先に死んだり、色々あるものでな〜。そこでだ、お前を従者にして僕が神になるまでそばに居てもらう」


 大まか、寂しいから人が欲しいと言った所だろうか。実際獣人は寿命が長いことの方が多い。この時のトラは大体200歳だろう。


「それなら友達で良いんじゃ?従者である必要性はまるで無いと思うのですが」


「うーんそこは安全面だな。この世界をまだあまり知らんようだから言っておくが、この世界は…」


 バクが何かを言おうとした直後、窓ガラスを割って何かが横切った。トラは何だと思い横切った先を見ると、そこには大きなコンクリートの塊が。


「こ、これは…」


「全く、こんな人が居る中暴れ回るとは。黙らせてくるから待ってて」


 バクはそう言うと神器を取り出して外へ行く。トラも何があったのか気になり壁に背をつけ見ている。暴れている2人の能力者へと歩いていき、気付いた時には…


「終わったぞ。それでは話を続けようか」


 トラの横に居て、暴れていた2人の首から血が吹き上がった。驚いたトラの様を見て笑うバクだが、そこには底しれぬ狂気が溢れている。ボコボコと剥がれるカフェの塗装。ガラスも割れて落ちて来ている。そんな中、2人は話す。


「今のは…一体」


「『能力』。神から授かり、神になる為の道具。僕に仕える以上、選ばれる必要はあるかもね」


 ゆっくりと息を呑んだトラには、恐怖よりも楽しみという気持ちがあったんだろう。少しだけ、微笑んでいた。

 場所を移し、あらかたこの世界の説明を受けた。完璧に理解したトラは、ひとまず神に憑かれないと始まらないと悟る。バクの家に住み込みで従者をやるトラだったが、神に憑かれるまでの間にバクに守ってもらうのも気が引けていたので自分の身体を鍛えることに。そうして時が過ぎ、5年後。

 風呂に入ろうと上着を脱ぎ、鏡を見たその時、


「ん?この模様は…主!」


 左肩に五芒星の模様が浮かび上がっている。これは正真正銘、神が憑いた証だ。バクに色々聞かれたが、そのどれにも当てはまらず少し残念がられた。


「うーむ、普通の神だな。四大神なら面白かったのにな〜」


「四人しか居ないんですから。俺を選ぶわけありませんよ。とにかく神の憑き人になれて良かったです。能力とかは後日分かるんですよね」


「そうだ。夢の中に神が出て来て説明してくれるぞ」


 トラは心から安心した。このまま神に選ばれなければどうなっていたか。ここからはひたすら順調だ。トラの能力も無事使えるようになり、神器も軽いものから慣れていった。今ほど力は無いと言えど、神器も複数あったから選べていた。

 トラがここに来てざっと100年。気分転換に2人で散歩に出掛けていると、見たことある黒毛に、赤い目が映る。その存在はトラが知っているものと違う。明らかに強くなっていた。そして、目が合ってしまった。


「主、ハコニワをお願いします。あの赤目の獣人を巻き込んで」


「ん?急にどうした?」


 トラはこっそりそう言ったが、バクは不審がってハコニワを展開しなかった。一瞬目を離した隙に、ケルトの拳はトラの顔まで届いている。何とか腕で守るが、ジンジンと骨の奥まで響く。バクはトラに近付くのと同時にハコニワを展開する。


「何者だ。僕の従者に手を出すとは」


「久しぶりだな!俺のこと、覚えてるだろ?」


 バクのことなんて見向きもしない。周りの景色が変わってることも、どうでも良いようにトラだけを見つめる。


「…何の用だ」


「言ったじゃねーか。いつかぶっ殺すって。今日がそのいつかになったってことだ」


 ケルトは嬉しそうに笑う。離している間に体勢を整えたトラは、神器を取り出し本気で戦う決意を固める。


「そう易々と殺されてたまるか。お前が俺を殺す前に、俺がお前を殺してやる」


「待て、何が起きてるか全く分かんないぞ?」


 状況を掴みきれてないバクが困惑したが、それに合わせることなく2人の戦いは始まる。ケルトの強さは想像を絶するもので、最初こそ良かったものの、トラは次第に押され始める。


「ガードされるせいで能力が発動出来ない…こいつ、速い」


「あん時から死ぬ気で修行して来たんだ。ちなみに、俺らが負けたあのペア。ぶっ殺しといたぜ」


「…!殺したのか?勝つだけで良いのに」


「あぁ。ムカついたからな。ぶっ殺してやったぜ」


 トラは怒る。人を殺しておいて笑ってられるケルトの精神に。この様子だと何人も殺してると分かった。何とか押し返そうと努力するが、すぐに押し返される。そこで、バクは間に入り込み、ケルトを押し飛ばす。


「敵ということで良いんだな?」


「はい…ですが!」


「言わなくて良い。僕が言ったら聞かないタイプだと知ってるだろう?」


 トラはバクが入り込むことをやめさせようとしたが言うことは聞いてくれない。ケルトもその状況に瞬時に適応し、バクとトラの両方を同時に相手した。

 いくら強いケルトでも、流石の2体1では敵わなかった。バクもトラも傷や土が付いて立っているのがやっとなくらいだ。


「負けたのか。俺は」


「そうだ。お前の負けだ」


 ケルトは全てを諦めたように空を見る。ハコニワで作られた偽物の空でも、美しい。


「それでも、俺は恨むぜ?」


「勝手にしろ」


 ハンマーを振り上げ、ケルトの頭目掛けて振り下ろそうとした瞬間、


「待て!!!!」


 バクの声が届き、トラは間一髪で止める。トラはそれに文句を垂らすが、バクは話を聞かずにケルトの元へ駆け寄る。


「お前、僕の従者にならないか?」


「「は?」」


 バクの発言に2人とも固まる。先に動き出したのはトラで、バクを狂ってる扱いしたが、考えを変える気はないようだ。


「どうだ?待遇も良いと思わんか?トラと家事も折半だから大変じゃない」


「本気で言ってるんですか!?こいつ、俺らのこと殺そうとしたんですよ!?」


「本気も本気だ。何回も言ってるだろう。それに知り合いなら殺し合いじゃなくて話し合いで解決しろ」


 この2人の言い合いで、ケルトは高らかに笑う。バカにしたような笑いではなく、心の底から面白くて笑っている。


「良いな、お前。気に入った。従者にでも何でもなってやるよ。そしてお前、いつか殺すことには変わらねーからな。覚悟しとけ」


 ボロボロだった身体がもう元に戻っている。この時からケルトの再生能力はあったのだ。


「ふむふむ。それで良い。強いやつが2人も居れば僕も安心できるからな〜」


 トラはまだ認めていない様子だったが、その内認めるようになる。そういえばと思い出し、バクは話し出す。


「トラ柄の方にも名前聞いてなかったな。何と言うんだ?」


「名前は…」


 2人とも黙り出し、何も言わない。昔の自分は捨てたとでも言いたそうだ。


「仕方ないから僕が付けてやろう。まずトラ柄は…」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ストーップ!」


 回想の途中なのにトラさんが阻む。良い所だったのに…。


「名前は聞かせなくて良いだろ!」


「まぁ…それもそうだな…」


「ん?何を焦っておる。変な名前は付けておらんかったぞ?」


 2人ともため息をつき、呆れるかのように頭を抱える。もう一度、大きくため息をついた後、トラさんが喋る。


「俺の最初の名前…コレクトマグナスだぞ」


「??????」


 意味が分からなかった。


「良い名前じゃないか。無口で高貴な名前をと思い考えたんだぞ」


「じゃあ俺のパンデ・モ・ニウムってのは何だったんですか?」


「あれは…危険だったからだ」


 多分そこじゃない…と思いながらもバクの名付けセンスに驚く。まさかあのバクにこんな弱点があったとは…


「せっかく良い名を付けてやったのに、こやつらはわがままでの〜」


「流石にその名前は無いと思うよ…。てかそこからどうやってトラさんとケルトさんになったの?」


「トラはまぁ…虎だろ?ケルトはケルベロスから取った」


 急に覚醒するじゃん。


「ほんっと驚いたぜ?お前がペグなんて名付けた時。ご主人様とは大違いだなって」


「な、我を侮辱するか!」


 いっぱい笑った後、僕は満足して日記を書いた。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「もう秋も終わりです」


 長いようで短いような。話数で言うととんでもなく長かった秋。それももう終わりを迎える。色々あった中で、特に印象深かったものをまとめようと思う。

 これからは寒い時期だな。人間は毛がないから大変そうだぜ。


          次回「ーー秋の終わりーー」

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