第158話 ーーIQテストーー
「イリウス、IQテストするぞ」
「…へ?」
突然のことに固まる。僕は部屋でお絵描きしていたのだが、部屋に入ってきては早々にIQテストをやると言われた。
「あいきゅー? 何ですかそれ」
「頭の良さを測るやつだ。良いからリビングに来い」
とりあえずケルトさんはこうなったら止まらない。僕は半強制的にIQテストをやらされることになった。リビングに着いて椅子に座ったが、特に何もない。ケルトさんも携帯をいじっている。
「えーっと…?」
「どうかしたんですか? まさかネットのIQテストやらせるつもりですか?」
「あ? そうだが?」
機械に疎いケルトさんのことだ。そうだと思った。
「それなら部屋でも出来るでしょう…それに、そう言うのは嘘のやつだってあるんですから、本当の正当が出る保証が無いんですよ」
「うぬぅ…」
「お主らどうしたのだ?」
ケルトさんが僕に正論を言われて凹む中、座っていたバクがこっちに来る。
「IQテストやりたいみたいだよ。バクは何か知ってる?」
「おーIQテストか。それならば…ちょっと待っておれ」
そう言うと自室に行ってしまった。
戻ってくると何枚かの紙を持ってきた。
「これだこれだ。10年前のやつだがの。世界的規模のしっかりしたやつだぞ」
「わー…結構ガチなやつだ…」
「それ良いじゃないですか! コピー機ありますからみんなでやりしょう! トラー!」
ケルトさんは嬉々として問題用紙をコピーしに行った。それと同時に呼ばれたトラさんが来る。みんなで椅子に座って開始だ。
(本当にやるんだ…まぁいっか。最初は…数学かな、簡単な問題ばっか)
IQテストはそこまで難しい問題は出ない。学力的な物より幅広く、柔軟な思考を図る物だから。暗記問題や長々と書く証明問題みたいなのは出ないわけだ。
ケルトさん達は案外苦戦している様子。一方僕とバクはスラスラと解いている。一応解答があるらしく、一問一問に点数が付くらしい。その点数によって本人のIQが決まるみたいだ。
(終わっちゃった…)
みんながカキカキしてる中、僕だけ終わってしまった。答えに手を伸ばそうとしたがバクがカンニングだと思いベシッと叩く。仕方ないから放置だ。解答用紙を向いて俯く。
30分後
「終わったー!」
ケルトさんが声を上げると同時に目を覚ます。みんなも同じ様子だったし丁度のタイミングで終わったのだろう。僕はやっと終わって救われた。
「イリウス、カンニングはいけないぞ」
「早く終わったから丸つけしようと思っただけ!」
「そうか〜? 一応丸つけは俺がするからな」
失礼しちゃうのです! と思いながらまた待つ。だが、そういえばと思って口を開く。
「バクも昔受けたんだよね? その時どうだったの?」
「我はIQ300ぐらいだったかの。10年前だからの〜」
300…相当高いんじゃ? 僕は自分のIQが心配になる。こういう時って他の人より低くなりたくないって緊張しちゃうよね。
「お、ご主人様のIQ出ましたよ。1000点中で640点で、IQ270ですね」
「下がってしまったか…10年前の記憶なんぞ頼りにならんの」
「ていうか答え覚えてるならズルじゃん」
冷静にツッコんだが270でも十分高い。というか高すぎる。いつも冷静なだけではないということか。
「あ、トラのIQ出たぜ! 530点で200だな」
「点数が低いのは心配しなくて良い。元々平均200点だ」
「結構細かく出るんだね。問題数が多いのは正確性を確かめるためか」
「200とは高いのか? 少なくともケルトには負けられんな」
相変わらずの負けず嫌い。果たしてどっちの方が高いのか。ケルトさんと僕のテストはトラさんが丸つけてくれる。
「ケルトのIQ出たぞ。500点で190だな」
「くっそー! トラに負けたー! 戦闘IQなら俺のが上なのにー!」
「聞いたことない単語出てきました…」
戦闘IQ、恐らく戦いにおいて、そして戦いの最中などの際のIQだろう。どうやって図るんだろう…
「次はイリウスよの。本命ぞ」
みんなが僕の回答用紙を眺めている。それが恥ずかしくてついつい止めようとしてしまう。だがトラさんの手は止まることなく進んでいく。次第にみんなの顔が青ざめていき、僕は不安になる。
「ちょ、ちょっと! みなさんどうしたんですか! 顔が青ざめてます! そんなに低いですか?」
僕が何と言おうと何も言わない。まだ丸つけが終わってないようだ。いつまでかかるんだか。
しばらくして、首を傾げ始めた。ケルトさんも「まさか〜」という感じだが何回計算し直しても同じになるらしい。
「えーっとだな。920点で…IQ600だ…」
「え?」
IQ600????? それってどのくらいだ?
「IQ600と言うと計算問題とか見ただけで分かるのではないか?」
「よし、イリウス。1509×3645は?」
「5500305です。4桁の段は覚えてるので言えますよ」
みんなの表情が固まる。暇だからって4桁の段覚えるのはやりすぎたかな。
「天才がおった…」
「えーっと…やっぱりお前天才か」
「予想はしていたが…ここまでとは…」
何かドン引かれてる! 僕は必死に挽回しようとするが意味をなさない。みんなの表情は僕を人じゃない目で見続けている。
「まぁ囲とか言うアホみたいな技使ってる時点で普通じゃないことは知っていたが…。ここまで高いものかの?」
「囲はアホじゃないよ! いくつものビームを操って敵を閉じ込める技!」
「そのいくつものビームを複雑な動きで、同時に、尚且つ正確に動かすことが普通じゃねーんだよ。トウメイとかもどういう原理だよ…」
よく考えると確かにそうだ。やる時は18個ぐらいのビームを同時に別の動きをさせる。やっぱりこれって普通じゃなかったのか。トウメイは自身の周りの光の屈折を何かこういじると出来る。特に頭は使わない。
「今度から作戦はイリウスに立ててもらうか」
「そうですね。こんなに頭が良いんなら何でも出来そうです」
「異論なーし」
「ちょ、ちょっと! 勘弁してくださいよー!」
最終的に経験不足ということでこの案は無くなった。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「久しぶり、みんな」
イリウスは連絡を取り、少年3人組と会う。能力はもちろんのこと、その成長具合に驚愕することになる。3人は元々間違った道を歩んでいたが、正しい道に戻れているのか。
イリウスも子供なのに弟子を作るとは。成長とは早いものよの。
次回「ーー成長ーー」